こんにちは、フィリピン駐在員の田辺です。
14年ほど前になりますが、私は日本製の大型バイクに乗って、2ヶ月ほど日本国内を旅したことがあります。北は北海道の最北端である宗谷岬、南は鹿児島の最南端である佐多岬まで。自転車やバイクが好きで旅も好きだったことから、風来坊気取りで旅をしておりました。得たものは日本の自然豊かできれいな風景と、知り合う人々の優しさだったでしょうか。基本は野宿の旅だったので心身ともに非常に疲れましたが、今となってはいい思い出となっております。
今週は、フィリピンにおける2輪車(バイク)の販売について、お話させて頂きたいと思います。
2輪車が好きな私からすると、フィリピンの気候は非常にうらやましいものがあります。1年中ほぼ暖かく、6月から10月までの雨季はありますが、暖かい季節の雨なので、カッパを着込めば1年中バイクの季節ということができます。バイクは基本的にダイレクトに風を受けるため、解放感はあるものの非常に涼しい(寒い)乗り物だからです。
また、朝と夕方の渋滞が激しいマカティですが、バイクであれば車の渋滞をそれほど気にする必要はなく、渋滞を横目に、車の脇をすり抜けて運転することができます。ヘルメットをかぶることで髪の毛が潰れることを気にしなければ、バイクは非常に優れた乗り物です。
事実、フィリピンと同じように南国の他のASEAN周辺国では、バイクの販売台数が非常に多くなっております。これは経済の発展に伴い、国民の所得がバイクを購入できるレベルを超えてきているからです。フィリピンも例に漏れず地道に発展してきており、バイクがよく売れ出してもおかしくないレベルの所得になってきています。
ところが、フィリピンでは他のASEAN周辺国と比べてバイクの販売台数が増えておりません。これは何故でしょうか。
理由はいくつか考えられますが、まず一番大きな理由は庶民の足であるジプニーやトライシクル、都市部においてはバスが非常に発達していることです。私も通勤で電車やジプニーを利用しておりますが、非常に安価で便数も多くて便利です。次に考えられるのは、自転車を含めて2輪車という文化が育っていないことかと思います。自転車に乗っている人を見かけることは本当に少なく、たまに見かけても日本では庶民の強い味方である「ママチャリ」ではなく、高価な「スポーツサイクル」です。
自転車は危ないという認識なのか、フィリピンでは自転車に乗っている庶民が極端に少なく、ジプニーかトライシクルか歩くか、というのが移動時の選択肢のようです。もう1つ理由として考えられるのは、高所得者の層と低所得者の層の差が拡大し、中間の所得者層が割合的に伸びていないということも挙げられるかもしれません。上記理由により、フィリピンでは今のところ爆発的には2輪車が売れていないのが現状です。
とはいえ、2012年の販売台数で、新車の2輪車(バイク)は100万台ほど売れております。また、近年は人口も毎年150万人ずつ増加しており、今後消費拡大が予想される富士山型の人口ピラミッドを形成しております。フィリピンは市場としても非常に魅力的かと思います。
どこかの企業が安価で質の高い自転車販売を開始すれば、個人的には非常に売れると思います。私も買いたいくらいです。しかし、フィリピンには小売業に関する厳しい投資規制があることと、販売開始の当初は、自転車用のインフラが整っていないことによる交通の混乱や、根強く存在する貧困による盗難という問題は発生するかもしれません。
フィリピンが今後安定的に発展するためには、裾野産業の発展が不可欠だと聞きますが、裾野産業の発展のために有望なのは自動車や2輪車といった産業かと個人的には思います。まずは道を整備して自転車を普及させ、自転車に慣れてより快適さを求める人はバイクに乗り、経済的に裕福になってくれば自動車に乗る。そんな発展をしていければいいのかと思います。
浅はかな私が考えるほど問題は単純ではないのだと思いますが、フィリピンで仕事をさせて頂いている身として、私も最大限フィリピン及び日本に貢献していきたいと思っております。
今週も、どうぞ宜しくお願い致します。
以上