ミンガラーバー、
ミャンマー・ヤンゴン事務所の鶴見令奈(つるみ れな)です。
2016年10月7日、米国は対ミャンマー経済制裁を解除しました。
ミャンマー経済と外資企業の活動に大きく制限していた米国制裁(ビルマ・プログラム)は効力を失いました。
日本勢を含む外資企業にとって提携先の選択肢が広がる一方、人材獲得などの競争は厳しさを増すと見られています。
主な解除項目は以下の3点です。
1.制裁リストからの削除
旧軍事政権に協力的だったミャンマー企業がリストから削除されることになり、エーヤワディ銀行やミャワディ銀行などの大手民間銀行を含む111の法人・個人が制裁リスト(SDNリスト)から削除されました。
全世界共通の麻薬取引と北朝鮮制裁プログラムに関連する組織や人物への制裁は今後も残されます。SDNリストに残留するのは、米国の麻薬取引中心人物指定法(The Foreign Narcotics Kingpin Designation Act)に関連する制裁が10組織21名、北朝鮮関連が2名です。
2.ミャンマー産翡翠やルビーの米国宛禁輸解除
2012年の制裁緩和で、米国は翡翠とルビー以外の輸入を解禁していました。
翡翠とルビーはミャンマーの主産品であり、軍事政権や麻薬に関わる莫大な利権が絡んでいると言われています。
3.OFACの規制による、全ての銀行及び金融分野に対するミャンマー取引制限の解除
OFAC規制により、日本からミャンマーに米ドル決済する場合なども、基本的に米国の銀行を経由するため、決済資金が米国で凍結されてしまうという支障が生じていました。
今回の解除は、2016年9月14日、アウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相とホワイトハウスで会談後に行われたオバマ大統領の発表を受けたものです。
9月の発表では、GSP(発展途上国向け特恵関税:Generalized System of Preferences)復活の方針も言及されていました。10月7日発表の大統領令には含まれていませんが、GSPも近く復活される見込みです。GSPが適用されれば、ミャンマーは約5000品目を無税で米国に輸出できるようになります。
■ビルマ・プログラム
米国によるミャンマーへの経済制裁(ビルマ・プログラム)は1997年から19年間続きました。
スー・チー氏への自宅軟禁を含む軍事政権の人権侵害を批判し、米国は1997年にミャンマーに対する新規投資を禁止しました。これは既に進出した企業の営業を規制するものではなかったものの、欧米では消費者による不買運動が高まり、多くの欧米企業が撤退しました。
2003年、3度目のスー・チー氏拘束を受け、米国は対ミャンマー制裁法を新たに制定しました。この法律はミャンマー製品の輸入全面禁止、ミャンマーへのドル送金禁止、軍事政権高官のビザ発給中止や資産凍結などを定め、同国から米国への輸出の8割を占めていた縫製品産業等にとって打撃となりました。米国に続いて、EU、豪州、カナダも制裁を決定しています。
2011年の民政移管を受けて、2012年、米国は自国企業のミャンマー投資を解禁し、翡翠とルビー以外の輸入を解禁しました。一方、軍や旧軍政に近い個人や企業との商取引の禁止や、宝石類の輸入禁止などは「軍への圧力」として残しました。
また、2013年、当時のテイン・セイン大統領が全ての政治犯を恩赦したと発表したことを受け、EUが武器禁輸措置を除く制裁を解除しました。
Tokyo Consulting Firm Co., Ltd (ミャンマー)
鶴見 令奈
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