メキシコにおける証券市場法について

経営

 

今回はメキシコにおける証券市場法についてお話します。

 

証券市場法(Leyde Mercadode Valores)は2005年制定の連邦法です。立法趣旨は、メキシコ証券市場の公平性・効率性・透明性の確保とその発展、および投資家の利益保護、システムリスクの抑制、そして健全な競争を促進することにあります(1条)。この立法趣旨の下、株式公開買付(TOB)義務、開示義務やインサイダー取引規制など、具体的な証券取引上の義務や規制を定めています。
証券市場法の特徴として、株式会社における株主間契約の有効性を明文化して認めた点が挙げられます。これにより、付属定款を変更することなく、有効な株主間契約を締結することが可能となりました。

 

■投資促進会社

証券市場法が施行される以前は、前述のとおり、株主間契約、議決権、譲渡等の定めの効力は限定的でした。そのため、プライベート・エクイティ投資家等が一般的に用いるロックアップ(株式発行者や大株主等と主幹事証券会社との間で結ぶ、一定期間にわたり原則として株式等の新規発行や売却を行わないことについての合意)、コール・プットオプション等の定めについても実効性を欠き、投資家の活動の妨げとなっていました。
証券市場法により、株式会社の新たな形態として、投資促進会社が定められました。投資促進会社は株式会社の特別な形態であり、少数株主の権利を強化し、柔軟な種類株式の発行を認める他、株主間契約の実効性を高めるために定められました。
上場企業を規制する証券市場法に定められた形態ではあるものの、非公開会社であるため、いずれの証券取引所にも登録する必要がなく、国家銀行証券委員会のコンプライアンス規程や監督に服することもありません。特にジョイントベンチャーや、上場予定会社の暫定的な形態として活用されています。
特に以下の点に関し、株主間契約の有効性が明文化されています(16条)。

[非競争契約]

株主間において、業種および地理的範囲に関して競業しないことを、3年以内の範囲で定めることが可能です。

[コール・プットオプション]

ドラッグアロング(大株主による株式譲渡時、その他株主にも同条件での売却を強制し、大株主によるイグジットを容易化する定め)、タグアロング(大株主による株式売却時、買い手に対し少数株主が同条件で売却する権利を定め、少数株主保護に資する定め)を含む、コール・プットオプションを定めることが可能です。

[新株予約権]

新株予約権とは、発行会社に対して行使することにより、当該株式会社の株式交付を受けることができる権利で、その譲渡や放棄等の処分につき合意することが可能です。これらの処分が第三者間で行われる場合も同様です。
関連規程と併せて、株主が払込や出資義務を履行しない場合に、持分比率を希釈する等の懲罰的規程を定めることが可能となります。

[議決権制限]

株主総会における議決権行使の方法につき合意することが可能です。たとえば、拒否権の定めや、役員選任時における優先議決権などが挙げられます。

[譲渡方法]

株式譲渡を公開買付に限定すること等についても合意が可能です。

 

■情報開示義務

証券市場法の下では、以下のような上場企業株式取得の場合は、国家銀行証券委員会および一般に公開する必要があります。

・直接的、間接的にかかわらず、買い手の株式持分が5%以上変動する場合、その決定の翌営業日までに、メキシコ証券取引所を通じて一般に情報を公開しなければならない(証券市場法110条)。
・直接的、間接的にかかわらず、ターゲット企業の普通株式の10~30%を取得する買い手は、取得の翌営業日までに、メキシコ証券取引所を通じて一般に情報を公開しなければならない
(109条)。
・直接的、間接的にかかわらず、買い手がターゲット企業の株式を10%以上保有し、かつ取締役会のメンバーである場合、当該ターゲット企業株式の購入に当たり、その旨を国家銀行証券委員会に報告しなければならない(111条)。

 

■公開買付義務

公開買付義務とは、一定条件下において公開買付が強制される制度のことをいいます。直接および間接的にかかわらず、買い手が、ターゲット企業の普通株式の30%以上を取得する場合は、公開買付をしなければなりません(証券市場法98条)。
ターゲット企業が証券取引所の上場維持要件を満たしていない場合や、上場維持要件に厳格にコミットしていない場合、その他証券市場法の違反を続けている場合も、株式取得は公開買付による必要があります(56条、108条)。

 

■買収対価

公開買付の買収対価としては、現金、株式、またはその複合が一般的です。証券市場法では、すべての株主に対して(株式の種類にかかわらず)、買収対価は同じものでなければならないと規定されています(98条)。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。

なお、本記事は2019年9月時点の内容となっております。最新情報やより詳細な情報は弊社サービスのWiki Investmentをご利用頂きたいと思います。Wiki Investmentへの登録は、下記のリンクからお願い致します。

 

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