経営は4つの視点で考えることが重要であり、その具体的な視点として、【財務の視点】、【顧客の視点】、【プロセスの視点】、【組織の視点】を順次説明していきます。前回までで、【財務の視点】の説明をしましたので、今週からは【顧客の視点】に移っていきたいと思います。
【顧客の視点】
- 社長は外を見ろ!
- 利益感度分析
- PPMとアンゾフマトリックス
- 海外進出か国内差別化か。
前回までは、下記のA.~E.であれば、どこに力を入れれば、最も敏感に(効率的に)経常利益が増加するだろうか、という命題から、その敏感な順(つまり感度が高い順)と、その簡単な順の説明をしました。
A.経費を削減しろ!
B.材料費を削れ!
C.販売量を増やせ!
D.商品・製品・サービス単価を上げて売れ!
E.残業代をカットしろ!ボーナスの支給はなし!人件費を削るために、解雇せよ!
最も敏感に経常利益を増すことができる順を示しておくと、
D.→C.→B.→A.E.となります。A.E.は両者を固定費という枠でとらえています。
そして、最も実施することが簡単な順を示しておくと、逆になります。
A.E.→B.→C.→D.となります。
さて、ここからはその理由の説明になります。まずは最も実施することが簡単な順のほうから、なぜそうなるのかを説明していきましょう。
A.E.は経費と人件費で構成されていますが、いわゆる固定費(固定費と変動費について、固変分解という分析をするときに用いる手法がありますので、またそれらのみの回を用意します。) というものです。
経費も大きく分けて、2種類ほどありますが、将来の売上の向上に対してや、費用の低減に対する戦略的な固定費(広告宣伝費、研究開発費、教育・研修費など)と、企業を運営するにあたって、どうしても発生してしまう業務的な固定費(PC経費、家賃、減価償却費など)があげられます。
ここにテコ入れするのがなぜ最も簡単かというと、一言でいえば、社内(社長や経営層)の意思決定のみに依存するからです。例えば、人件費を抑えるために、人を解雇する。実際は労働組合や労働法などにより、たいそうな理由がないと難しいかもしれませんが、少なくとも雇止めによって、人件費は抑圧できます。また、ボーナスの支給をしない。これも規定としてあれば、難しいかもしれませんが、業績に準じて、ボーナスカットはできないことはないです。残業代に関しても、業績が極端に悪化している企業では、同じようなことが言えるでしょう。
戦略固定費や業務固定費についてもそうです。社内の意思決定で決まります。どちらかというと、未来の長期的な目線に立たなければ、戦略固定費の方がカットするのは簡単です。将来の売上の向上や費用の低減のためにかかるコストを短期的な目線のみで考えれば、現顧客のみの取引でよいので新規顧客獲得のためのマーケティング費用や広告宣伝費は使わない、社員の成長にフォーカスすることなく、現状維持で良いから、社員の教育研修の機会も必要ない、競合に出し抜かれるかもしれないが、研究開発費も今の商品・製品で勝負するから要らない、と決定づけることは簡単なのです。
あらゆる社内決裁事項であるこの固定削減を行うのが、ビッグ・バスという手法です。業績の悪い会社の経営者が変わるとき、新たに信任された経営者が手を付けやすいのがここになります。しかし、簡単であるが故に、よっぽど傲慢・贅沢経営をしていないかぎり、そんなに大きな効果はないことが多いです。
次にB.の材料費を削るということがまだ簡単な施策となります。材料費はメーカーであれば必須で、最も大きな割合を占める重要な要素の一つでしょう。そして、この材料費は固変分解でいうところの変動費にあたります。また、メーカーでなくても、できあいのモノを仕入れて、そのまま販売する商社や卸機能を担う企業であれば、この費用は変動費となり、その割合は非常に大きな割合を占めます。この材料費や商品仕入の金額を下げたいのであれば、サプライヤーとの交渉が必要になるわけです。固定費の時とは違い、社内(社長や経営層)の決裁だけで十分だとはなりません。お付き合いしている会社がいて、その会社の了承を得なければなりません。しかしながら、社外の人を巻き込むことになるとしても、当社が仕入れている立場であるのだから、サプライヤーからすると当社は「顧客」にあたるわけで、関係性が良好であると、当社側の値引き要望に嫌々ながらも応じてくれるかもしれません。要は、サプライヤーの選定権は当社側にあり、交渉するにはしやすい、ということなのです。
次のC.とD.に関しては、他の論点もかぶってきますので、また来週にもっていければと思います。
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橋口 敦史
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