社長様、拠点長様、管理者様向けに、経営に役立つ財務分析について5回のシリーズでお届けいたします。
・第一回 財務分析とは/貸借対照表・損益計算書の構造 1 2 3 4 5
・第二回 キャッシュフロー計算書/利益とキャッシュの違い 6
・第三回 会計と税務/資金繰りと財務/潜在リスク
・第四回 ROA会計/収益性・効率性分析/プロセス改善
・第五回 未来会計/事業計画/利益分配
少しでも貴社経営のご参考になれば幸いでございます。
第二回 キャッシュフロー計算書/利益とキャッシュの違い
黒字倒産にならないために
【事例】利益とキャッシュの違い
事例1)売上が上がっているのにお金がない!
この数カ月、売上が前年比1.5倍と安心していたところ、売掛金の回収がスムーズにいかず、通常よりも仕入額が高かったため、業者への支払が滞ってしまった。
<掛取引>
利益とキャッシュがずれる要因の一つが、掛取引です。
今月売上の入金が2ヶ月後、支払いは翌月。これだけでも利益と現金はずれていきます。
全てが即金で現金のやりとりであれば、キャッシュと利益はずれない・・・と思うかもしれませんが、
この他にも、利益とキャッシュがずれていく大きな要因があります。
事例2)新しい工場と設備の導入で税金が払えなくなる!?
売上アップのため、多額の工場と設備投資を行ったところ、キャッシュの支払は多額であるのに、利益が出てしまい、税金が払えないため、新規借入をするはめになった。
<資産購入、設備投資>
資金繰りが悪化する要因の中でも、インパクトが大きいのが設備投資です。
売上を見込んで設備投資したけれども、思ったように利益が上がらなかった・・・というだけではなく、
影響は何年にもわたり効果を生み出すので、会計上、高額の設備はすべてを費用に計上できません。
実際に払った額のだいたい4分の1、5分の1の費用しか計上できないので、その分、利益が出てしまうことがあります。
事例3)商品が売れ残るほど利益が上がる!
今期、さほど商品が売れていないのに利益が多く出てしまい、資金繰りが悪化した。
<製造原価と在庫>
実際のキャシュと利益が大きくかけ離れてしまう要因のもう一つが、製造原価と在庫の関係です。仕入れた材料や、賃金、外注費などはすべて取引先に支払われますが、期末に残った在庫や、製造途中の商品などは、まだ売れていないので、費用ではなく資産として把握されます。
そこで、在庫や仕掛品の量が多い場合、費用にならないため、利益が増加します。それによって法人税額が決定しますので、思った以上に税金がかかってしまう例もあります。
製造原価の計算は、間違いが多く、また利益調整に大きく関わるため、税務調査でも重点的に査察が入り、指摘も多い部分です。
事例4)税務調査で多額の費用を否認されてしまった。
<会計と税務の処理の違い>
最後の要因として、会計と税務のルールの違いがあります。
会計は、期間の損益を表すものですが、税務は、実際の売上と出費のみを費用として認めます。
例えば、引当金の計上は、会社の恣意性が含まれるため、どの企業にとっても公平な税額計算をする上では、損金に含めることができません。
税務上、費用として認められない、「損金不算入項目」について理解をしておきましょう。