
皆さん、こんにちは!
東京コンサルティンググループインドネシア拠点の飯島 淳です!
いつもブログをお読みいただきありがとうございます。
さて、今回は「【2026年4月22日施行】インドネシア中小企業向け最終税率0.5%が大改正 ― PP20/2026による法人適用除外と日系企業の実務対応」についてお話していこうと思います。
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【2026年4月22日施行】インドネシア中小企業向け最終税率0.5%が大改正 ― PP20/2026による法人適用除外と日系企業の実務対応
インドネシア政府は2026年4月22日、政令PP20/2026を公布・即日施行し、中小事業者向け最終税率0.5%(PPh Final UMKM)の適用対象を大幅に見直した。今後この特例を使えるのは個人事業主・個人会社(PT Perorangan)・協同組合のみで、PT・CV等の法人は新規適用ができなくなる。さらに同政令は、贈賄・贈答費用の損金不算入(第20A条)も新たに明文化しており、UMKM以外の全法人にも関係する。本記事では旧制度PP55/2022との違い、経過措置、現地法人および新設企業への影響を、進出日系企業の経営者・駐在員・経理・法務向けに整理する。
キーワード:インドネシア 法人税 / PPh Final UMKM / PP20/2026 / PP55/2022 / 0.5%最終税 / 中小企業税制 / PT Perorangan / 通常税率22% / 進出日系企業
対象読者:インドネシア進出済みの日系企業の経営者・駐在員・経理/財務・法務担当者
皆さん、こんにちは。東京コンサルティングファーム(TCF)インドネシア拠点の飯島です。本稿では、2026年4月に施行された政令PP20/2026について、中小事業者向け最終税率0.5%(PPh Final UMKM)の改正を中心に、進出日系企業の皆さまへの影響と、いま確認しておきたい実務対応を整理してお伝えします。あわせて、同じ政令で新設された「贈賄・贈答費用の損金不算入」など、UMKM以外の重要な改正点にも触れます。
目次
- 1 2. 日系企業への影響
- 1.1 ① 旧制度(0.5%)を利用中の日系現地法人
- 1.2 ② これから新設する日系企業
- 1.3 3. あわせて確認したいPP20/2026のその他の重要改正
- 1.4 ◆ 贈賄・贈答(接待)費用の損金不算入を明文化 ― 全法人に影響
- 1.5 ◆ 自由業(pekerjaan bebas)の0.5%除外リストを更新(第56条)
- 1.6 ◆ 売上基準は「経済的実質」で判定(第58条)
- 1.7 4. 今すぐ確認すべき実務対応ポイント
- 1.8 インドネシアの税制改正への対応はTCFへ
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- 1.10 経営者・幹部層の方におススメしたい【全ての経営者へ贈るTCGブログ】
1. 何が変わったのか ― PP55/2022からPP20/2026へ
インドネシアの中小事業者向け税制が、2026年4月の政令改正で大きな転換点を迎えた。これまで広範な事業者が利用できた「年商48億ルピア以下の事業者に売上の0.5%を課す最終課税(PPh Final UMKM)」が、適用対象を絞り込まれたのである。
新政令PP20/2026は2026年4月22日に公布され、同日付で施行された。旧政令PP55/2022を改正するもので、最大のポイントは0.5%最終税の対象が次の3区分に限定されたことにある。
- 個人事業主(Wajib Pajak Orang Pribadi)
- 1名で設立された個人会社(Perseroan Perorangan/PT Perorangan)
- 協同組合(Koperasi)
これにより、CV・Firma・通常のPT・BUMDes(村営企業)といった法人は、0.5%最終税を新規に利用できなくなった。一方で、個人事業主とPT Peroranganについては適用期間の上限(旧制度では個人で最長7年)が撤廃され、年商48億ルピア以下の要件を満たす限り期限なしで利用できるようになっている。協同組合は最長4年(既存登録分は2029年まで)と期限つきである。
◆ 新旧制度の比較
| 項目 | 旧制度(PP55/2022) | 新制度(PP20/2026) |
|---|---|---|
| 適用対象 | 個人・PT・CV・Firma・協同組合・BUMDes など広範 | 個人事業主・PT Perorangan・協同組合のみ |
| 法人(PT/CV)の扱い | PTは3年、CV・Firma・BUMDesは4年まで0.5%可 | 新規適用は不可。残存期間のみ経過措置で継続 |
| 適用期間(個人) | 登録から最長7年 | 期限なし(無期限) |
| 適用期間(協同組合) | 登録から4年 | 最長4年(既存登録分は2029年まで) |
| 税率 | 年商48億ルピア以下に0.5% | 同左(個人は年商5億ルピアまで0%) |
| 施行 | 2022年 | 2026年4月22日(即日施行) |
◆ 実務面での主な変更点
- 売上基準(年商48億ルピア)の判定範囲が拡大。事業所得・自由業所得・国外所得、最終/非最終課税の所得に加え、夫婦の所得も合算して判定する。
- 租税回避防止の強化。専門技能を持つ個人が自由業に類似する役務をPT Peroranganで提供する場合は対象外とし、累進課税逃れ(tax arbitrage)を封じた。
- 事業分割防止(anti-fragmentation)の考え方が導入され、意図的な売上分散による特例の濫用を抑制する。
2. 日系企業への影響
進出日系企業の大半は、もともとPT PMA(外資法人)として通常税率22%を選択している。PT形式は旧制度でも0.5%を設立から3年しか使えず、多くの企業が当初から22%課税を前提としてきたため、今回の改正による直接の打撃は限定的である。ただし、次の2類型では実務対応が必要になる。
① 旧制度(0.5%)を利用中の日系現地法人
- これまで0.5%を使ってきた中小規模のPT・CV(小規模子会社、内資系の関連会社など)は、残存期間が終了すると所得税法第17条の通常税率22%へ移行する。
- 移行後は売上ベースの簡便計算から、簿記による課税所得計算へ切り替わるため、記帳・決算の事務負担と実効税率の双方が上昇する可能性がある。
- 経過措置あり。適用期間が2024年に終了する事業者は2026年まで、2025年に終了する事業者は2026年まで0.5%の利用を継続できる。自社の利用開始時期から逆算し、いつ通常課税へ移行するかを早期に確認したい。
- 移行後は、課税所得のうち48億ルピアまでの部分に税率を50%軽減する小規模法人軽減(実質11%相当)の活用余地を検討する。
② これから新設する日系企業
- 新設するPT・PT PMA・CVは、設立当初から0.5%最終税を選択できない。最初から通常税率22%(または小規模法人軽減)を前提に、資金計画と記帳体制を設計する必要がある。
- 「設立直後は0.5%で身軽にスタートし、軌道に乗ってから通常課税へ」という従来の想定は使えなくなった。初年度から会計・税務体制を整える前提でのスタートが求められる。
- PT PMA(外資法人)はもともと0.5%の主要対象ではなかったため、外資新設への実質的な変更は小さい。例えば、『現地スタッフ名義で内資PTを設立し、初期コストを抑えて0.5%の恩恵を受ける』という従来の進出スキームは事実上封じられたため、戦略の抜本的な見直しが必要になります 。
3. あわせて確認したいPP20/2026のその他の重要改正
PP20/2026はUMKM特例の見直しだけでなく、すべての法人に関わる改正も含んでいる。日系企業として特に押さえておきたいのが、新設された第20A条による「贈賄・贈答費用の損金不算入」の明文化である。
◆ 贈賄・贈答(接待)費用の損金不算入を明文化 ― 全法人に影響
- 新設の第20A条により、贈賄(suap)・贈答(gratifikasi)その他名目や形式を問わない供与のうち、汚職・贈賄犯罪に関係するものは、所得を得る・回収する・維持するための費用として損金算入できないことが明確化された。
- 国内の公務員への供与だけでなく、外国公務員への供与も明示的に損金不算入の対象とされた。
- これはインドネシアのOECD加盟プロセスに沿った税務ガバナンス強化の一環であり、UMKMか通常課税かを問わず、すべての納税者・企業に適用される。
- 日系企業としては、接待交際費・贈答費の経費処理を見直し、本社のコンプライアンス(贈収賄防止)規程との整合をこの機会に確認したい。
◆ 自由業(pekerjaan bebas)の0.5%除外リストを更新(第56条)
弁護士・医師などの専門家、芸術家、スポーツ選手、講師、オンラインのコンテンツ制作者(インフルエンサー)、保険代理人といった自由業からの所得は、引き続き0.5%最終税の対象外とされた。専門サービスを個人名義で行う場合は通常の累進課税が前提となる。
◆ 売上基準は「経済的実質」で判定(第58条)
年商48億ルピアの判定は、形式的な事業体の区分ではなく経済的実質(substansi ekonomi)に基づいて行う旨が定められた。前述の所得合算や事業分割防止と相まって、形式的な事業分散による特例の濫用を防ぐ設計となっている。
4. 今すぐ確認すべき実務対応ポイント
- 自社が現在0.5%最終税を利用しているか、利用している場合は適用期間の残存年数を確認する。
- 通常税率(22%)移行後のキャッシュフローと実効税率をシミュレーションする。
- 簿記・月次決算・年次決算の体制(クラウド会計の導入を含む)を整備する。
- 小規模法人軽減税率(課税所得48億ルピアまで50%軽減)の適用可否を確認する。
- 新設を予定している場合は、初年度から通常課税を前提とした予算設計と税務体制を組む。
- 接待交際費・贈答費の経費処理を点検し、本社の贈収賄防止規程との整合を確認する(第20A条への対応)。
インドネシアの税制改正への対応はTCFへ
PT Tokyo Consulting(TCF)は、2011年にインドネシアで創業した日系専門コンサルティングファームです。会計・税務・給与計算・監査・人事労務・法務・会社設立支援までワンストップで対応し、頻繁に改正されるインドネシアの税法・労働法に精通したスタッフが、進出日系企業の皆さまの実務を支援します。
今回のPPh Final UMKM改正に伴う「通常課税への移行スケジュールの確認」「実効税率のシミュレーション」「記帳・決算体制の整備」「新設時の税務設計」など、個別のご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。
【免責事項】本記事は2026年6月時点で公開されている情報をもとに作成した一般的な解説であり、法的・税務上の助言を構成するものではありません。実際の適用判断や個別事案については、必ず専門家へご相談ください。
【出典】インドネシア政令 PP20/2026(PP55/2022 改正、第20A・56・57・58条ほか)、財務省/国税総局(DGT)公表資料、インドネシア税務コンサルタント協会(IKPI)、DDTC News、Ortax、MUC Consulting、PwC Indonesia 税務ポケットブック、JETRO 等の解説資料。
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飯島 淳
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