こんにちは、中国・上海の三輪常敬です。
Q,
中国の商業賄賂について教えてください。
A,
中国で事業活動を行う上で注意すべき規制として「商業賄賂」が挙げられます。日本においては、公務員との間で問題になりますが、中国では、公務員との間ではない、ビジネス上で授受される金銭や物品、サービスも、基本的に禁止されています。
「商業賄賂」は、次の2つの法律により規制されています。
・反不正競争法(第8条)
・刑法(第 163 条、第 164 条)
まず、反不正当競争法第 8 条では、「事業者は、財産又はその他の手段を用いて賄賂行為を行うことにより商品を販売又は購入してはならない。」と規定しています。これに対する行政処罰としては、違法行為停止命令、1 万元以上 20 万元以下の過料、違法所得の没収、営業許可証の取消などがあります。
具体的には下記の行為があげられます。(「商業賄賂行為の禁止に関する暫定規定」)
① |
帳簿に記載していないリベート(代金の一部返還) |
② |
契約に基づいて帳簿に記載していない値引き(代金差引き、返金) |
③ |
帳簿に記載していないコミッション(仲介手数料) |
④ |
現金、物品の贈与(少額の礼品を除く) |
①~③は、帳簿に適切に記載されていない点が要件となっています。つまり、通常の商取引のリベートであっても、他の名目で帳簿に記載されている等の場合、会計上のミスではなく商業賄賂として処罰される可能性があります。
次に、刑法では、第 163 条が収賄行為、第 164 条が贈賄行為を規定しています。
商業賄賂に関する法的責任は下記のとおりです。
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賄賂金額が「比較的大きい」場合 |
賄賂金額が「巨額」である場合 |
収賄罪 |
5年以下の懲役又は拘留 |
5年以上の有期懲役及び財産没収 |
贈賄罪 |
3年以下の懲役又は拘留 |
3年以上10年以下の懲役及び罰金 |
なお、民間企業間の賄賂行為について、刑事事件として立件・追訴できる金額基準は、下記表の通りです。(賄賂の累計額)
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立件基準 |
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収賄罪 |
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5000元以上 |
贈賄罪 |
個人による場合 |
1万元以上 |
組織による場合 |
20万元以上 |
多くの日系企業では、現状は、商業賄賂に対する理解が不十分であったり、体制が未整備であったりしているように見受けられます。商業賄賂のリスクが高まっている中で、更なる体制の強化が必要と思われます。