こんにちは、中国・上海の田中勇です。
前回は、親会社からの融資手続きについてお話しました。今回は増資手続きについてお話します。近年、増資を検討する企業が多く見受けられます。理由としては、親子ローンにおける規制が厳しくなっていることが主な原因です。(親子ローンの規定については、前回のブログをご参照願います)
しかしながら、増資においても親子ローン手続き以上に注意すべきことが多くあります。
増資の手続きについて、注意すべきことは①手続き手順、②総投資額の計算方法、③処理期間です。
まずは、①手続き手順ですが、増資のプロセスは以下の通りです。
2. 商務委員会の承認
3. 外貨管理局の認可
4. 資本金払込
5. 融資報告書の発行
6. 営業許可証の変更
7. 各種登記変更手続き
増資手続きは、会社設立とほぼ同一の手続きが必要になります。
1. においては、親会社等の株主の承認を得て、董事会の決議を行います。合弁企業の場合、董事会においては、満場一致の決議が必要です。(合資企業法実施条例第33条・合作企業法実施細則第29条)
2. においては、工商行政管理局での登記変更及び仮営業許可証を得ます。増資前後それぞれの定款・合弁契約書、FS(フィージビリティスダディ)等の書類提出が求められます。
3. においては、外債枠の変更をします。詳細は下記にてご説明します。
4. においては、分割で払い込む場合は、一旦増資額の20%以上を払い込み、残りの80%は2年以内に振り込む必要があります。
5. においては、注冊会計師(中国の公認会計士)に出資金を払い込んだことを証明する融資報告書を発行してもらいます。
6. においては、工商行政管理局にて正規の営業許可書を得ます。融資報告書等の提出が求められます。
7. においては、取引銀行・税務局などしかるべき機関で再度登記の変更手続きをします。
次に、②総投資額の計算方法ですが、増資により増加する総投資総額は、登録資本の増加額を基準として計算します。増加後の登録資本額が基準ではないことに注意を要します。例えば、当初、総投資額3,000万USD・登録資本1,500万USDで設立した企業が、400万USDの増資した場合は、最大総投資額の増加額は、800万USDです。
計算式:400万USD÷50%(投資総額に対する登録資本金の最低比率の規定より)
したがって、この企業の最大総投資額は3,800万USD(当初3,000+増資分800)となります。
最後に、③処理期間ですが、すべてが順調に処理できれば、約3か月でできます。2. が約1か月、3. が1営業日、4. ・5. が約2週間、6. が約1週間、7. が約1か月かかります。しかしながら、中国の増資処理については、トラブルが多いため、実際は3か月以上かかります。理由としては、融資と異なり申請・認可機関が多く、それぞれの担当官とのトラブルが発生しやすいからです。特に投資の場合は、中国当局の外資企業誘致ノルマに関わってきますので、担当官の都合で処理が延長されることもあります。さらに、合弁等で持ち分比率が変わる場合、増資資本の資本構成をどのようにするかなどで審査機関の理解が得られず処理が止まるという事例が多発しております。いずれにせよ、増資においては余裕を持ったプラン作成が肝要です。
※これらの手続きは上海における手続きを前提にお話しております。場所によって異なる場合がありますので、ご注意願います。
以上です。
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