日本の非居住者の日本株式譲渡益について Q&A

こんにちは、中国・上海の田中勇です。本日も中国Q&Aについてお話します。

 

Q.日本の非居住者(中国居住者)が日本企業の株式を売却し、譲渡益が発生しました。この譲渡益はどのように所得税が課税されますか。なお、ストックオプションで購入した株式ではなく、売却時には中国にいました。

 

A.今回の場合、原則として日本側では課税されず、中国側で課税されません。まず、日本側において、非居住者については、国内源泉所得のみ課税されると規定されています(所得税法5条)。また、資産譲渡による所得については、不動産譲渡所得及び所得税法施行令第291条第1項第1号から第6号までに掲げるもののみ課税されると定めています(所得税法164条1)。

 

【非居住者の日本国内源泉所得として課税される株式譲渡所得】

①同一銘柄の内国法人の株式等(新株予約権及び新株予約権の割当てを受ける権利等も含む)の買集めをし、その所有者である地位を利用して、当該株式等をその内国法人若しくはその特殊関係者に対し、又はこれらの者若しくはその依頼する者のあつせんにより譲渡をすることによる所得

②内国法人の特殊関係株主等である非居住者が行うその内国法人の株式等の譲渡による所得

③不動産関連法人の株式の譲渡による所得

④非居住者が国内に滞在する間に行う国内にある資産の譲渡による所得

⑤国内ゴルフ場株式等の譲渡による所得

⑥国内にあるゴルフ場等の施設の利用に関連する権利の譲渡による所得

⑦税制適格ストックオプション(租税特別措置法第29条の2)の権利行使により取得した特定株式等の譲渡による所得

 

※所得税法施行令第291条第1項第1号~第6号より。

 

今回、上記の項目に該当しなければ、日本側では課税処理されません。

 

一方、中国側では、中国居住者は、取得したすべての所得は、所得源泉地を問わず中国個人所得税の対象になるため、課税処理されます(中国個人所得税法第1条)。税率は原則として20%です。

 

なお、日中租税条約上は、条約締結国の居住者(中国居住者)が他方の条約締結国(日本)において譲渡益が発生するものに対しては他方の条約締結国(日本)において課税することができるとしております(日中租税条約 13 条)。ところが、プリザベーション・クローズ(租税条約の規定よりも国内法の規定の方が有利なときは国内法の適用を選択が可能になる)の原則が適用できると考えられるため、引き続き日本側では課税されないと考えられます。

 

 

 

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