バングラデシュにおける労働組合の実情

労務

2013年、犠牲者1,100人以上を出した産業事故、ラナ・プラザの倒壊事故を受けて、バングラデシュでの労働環境に世界中から焦点が集まった。

バングラデシュは国際労働機関の1948・49年の条約に批准し、団体交渉、自由な労働組合参加ができるとされているが、一方で、バングラデシュの労働法では規定が杜撰なものであると指摘されていることがよくある。

 事故後、国際労働機関(ILO)はカナダ、オランダ、英国の任意資金協力を受けて、バングラデシュ政府と共に既製服産業の労働条件改善を目指すべく3年半の事業計画を実施している。労働賃金の引上げをはじめとする労働環境の改善等、実際に取り組みが実現しているものもある。

しかし、現場で働く労働者の声を反映させる組織、労働組合に関してはまだまだ課題が多いと考えられる。欧州委員会が発表している2015年のレポートによると、工場労働者の場合、最低、工員の30%が結集いなければならないという条件、労働組合の代表者を選任することに対する制限、組合員の登録キャンセルができる曖昧な権威の存在等、論理的に説明することが難しいような慣習も残っている。

 政府機関は2013年から組合の申請について半分以下しか承認していないというデータもあり、2015年においては、61の組合登録を承認し148の申請を退けているとのデータもある。これは単純計算すると、約71%の申請が退けられていることになる。

上記のデータを正当化するために、当局はプロセスを複雑化し、正規雇用者しか組合員のリーダーにはなれないという規定を設け、その際に雇用契約書の提出を求め、承認できない理由を探したりすることもある。

同国の規定では、組合はその組合員に対し、Membership Certificateの発行も求め、所持・証明できない組合員に対しては、登録のキャンセルをするケースもあるという。たとえ、組合を形成したとしてもこうしたメンテナンスも必要なことから、現状、労働組合の結成は非常に難しいと考えられる。

他国や、国際組織からの呼びかけ・支援によって、労働者に対する制度が少しずつ改善されていく一方、まだまだ労働者個人は、権利を主張し社会に呼び掛けていけるという立場において社会的に弱い位置にいるようである。

 

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