出張ベースでシンガポールに来ている人が営業活動をしているとしたら、それは不法就労に当たるのか
シンガポール支店の解説時に、本社から人を出して手伝いをさせることは、法的に問題があるのか
そんな質問をしばしば受けます。
結論から言えば、こうしたシンガポールでのビザなし勤務は、すべて法律違反です。
今回は、ビザなし勤務の扱いとその例外についてお伝えします。
シンガポールの就労ビザって?
アジアの多くの国では、一時滞在である観光ビザと商用ビザ、長期滞在である就学ビザや就労ビザ、といった具合に、入国の目的別に専用のビザが設けられ、各国の大使館や空港施設内で、申請して発行を受ける仕組みになっています。
国によっては、特に書類も求められず、空港で商用ビザが買えるようなところもあるため、実質上ビザなし勤務ができるというところもあります。
しかし、シンガポールでは就労のためのビザはWork Passと呼ばれ、長期でも短期でも関係なく、人的資源省MOMへの申請によって発行を受けることになります。
さらに、年齢や人数に関わらず一般的に利用できるものとしては、Work Passのなかでも専門職/管理職の地位に就く外国人に対して発行される、EPに限定されるといえます。
何日間滞在する場合に必要なの?
183日以上滞在したら税務上居住者として認識される、60日以上収入のある活動をしたら個人所得税を申告する義務が発生するなど、シンガポールの税務上の規則を元に、~日以内の活動ならビザなし勤務も可能であると誤解をされるケースがあるため注意が必要です。
シンガポールでは、たとえ一日でも国内で直接的な商業行為を行う場合、Work Passを取得する必要があり、一部例外を除いて、一切のビザなし勤務を認めません。
シンガポール子会社/親会社など、関連会社の業務を行うような場合でも、必ずEPなどを申請・取得してから入国する必要があります。
なお、こうしたWork Passは日数を自由に決めることができ、数日だけのために申請することも許されますが、通常の外国人駐在員用のEPと同じく、職位や月給を明示して申請し、3週間程度待ったうえで、許可証IPA発行を受け、顔写真・指紋等の登録を行ったうえで就労する必要がある点、注意が必要です。
シンガポール法人がなかったら?
シンガポールでビザなし勤務になりやすいもう一つのケースとして、外国企業がシンガポール国内の企業から委託される形で業務提供を行う場合があります。
通常、EPOLなどのオンラインサービスでビザの手続きができるのは、シンガポール国内で登録された事業者に限られ、外国企業ではオンライン申請はできません。
この場合、ビザなし勤務にならないためには、シンガポール国内の業務委託元企業が保証者(Sponsor)となって申請を補助し、紙面によるEP申請を行う必要があります。
上記と条件も異なり、審査に8週間ほどかかるため、注意が必要です。
どんなケースが例外なの?
シンガポールは、公式なイベントのサポート活動、外国の特殊技術を必要とするような特定の活動については、公式にビザなし勤務を認めています。
就労ビザ免除活動(Work Pass Exempt Activities)と呼ばれるこうした活動は、いわゆる観光ビザで入国した後、個人でMOMへ通知を行うことで、最大90日の滞在を許可されるものです。
以下の通り分類されています:
・仲裁活動(宗教・人種・政治的紛争を除く)
・展示会活動(ケータリング等、附属のサービスは除く)
・報道活動(政府機関が認定したものに限る)
・シンガポール国際商務裁判所(SICC)での司法責務
・カジノ周遊関連活動
・映画作成用撮影活動/ファッションショー
・芸能活動(政府機関が認定した公的イベント/公的施設で行う活動に限る)
・工場、産業施設、産業機器の検査、運営指導活動
・セミナー、会議(商業目的、宗教・人種・政治関連のものを除く)
・スポーツ関連活動(公式イベントに直接関連する選手、コーチ、レフェリー)
・団体旅行補助活動(宿泊、入国関連などに限り、ツアーガイド活動は含まない)
ビザなし勤務が見つかったら?
ファイン・カントリー(=罰金大国)といわれるシンガポール、外国人のビザなし勤務も厳しく取り締まられます。
ビザなし勤務が発覚した場合、一回目の違反であれば1年以内の懲役または罰金S$5,000~S$30,000とされていますが、二回目以降は懲役に加えてS$10,000~S$30,000の罰金が科せられることになります。
最低でもS$5,000の支払いは覚悟しなければならないということで、非常に厳しい罰則です。注意しましょう。
法律に関するお問い合わせはもちろん、労務や税務に関するお問い合わせも、お待ちしております。
以下のリンクから、お気軽にご相談ください。
株式会社東京コンサルティングファーム シンガポール法人
近藤貴政
kondo.takamasa@tokyoconsultinggroup.com
+65-6632-3589
※)記載しました内容は、作成時点で得られる情報をもとに、最新の注意を払って作成しておりますが、その内容の正確性及び安全性を保障するものではありません。該当情報に基づいて被ったいかなる損害についても、情報提供者及び当社(株式会社東京コンサルティングファーム並びにTokyo Consulting Firm Co., Pte. Ltd.)は一切の責任を負いません。ご了承ください。