国内ではシンガポールドルですべてが完結させられる独立国家のシンガポールですが、現地法人の機能通貨(Functional Currency)が必ずシンガポールドルであるとは限りません。
それもそのはず、一歩国外に出れば、どの国でもほとんどシンガポールドルは使われておらず、国外との取引が発生する法人であれば、米ドルや日本円を機能通貨にすることが当然の選択肢となります。
今回は、シンガポールにおける機能通貨について、概要をまとめてお伝えします。
機能通貨って何だっけ?基本からおさらい!
シンガポールは企業の売買も当然に行われる国家であり、その手続きをスムーズにするためにも、会計のルールは厳密に定められています。
この会計ルールはIFRSと呼ばれ、機能通貨についても「企業が営業活動を行う主たる経済環境に関連する通貨」と定義付けを行っています。
機能通貨が必ずしも現地法人所在国/地域の通貨である必要はなく、むしろ、以下のような要件に該当する通貨を機能通貨に指定する必要があると考えられています。
・請求・回収に用いられ、製品やサービスの価格に影響を及ぼす通貨(対顧客、対仕入先など)
・製品やサードスの価格が国/地域に依存している場合はその国/地域の法定通貨
・資金調達において使用され、通常保有される通貨
いつ、どれを換算するの?
機能通貨が問題になるのは、当該機能通貨以外の通貨で価値が表示される資産について、機能通貨における価値を表示する必要があるためです。
その際は、当然ながら、為替レートに基づいて換算が行われます。
基本的には、月次でも四半期でも、決算が行われるたびに換算が行われる必要があり、貨幣性の項目はすべて換算の対象となります。
これは、例えば銀行口座を複数の口座で保有している場合、また売掛金等が機能通貨以外で存在している場合に換算を行う必要があるということです。
一方、非貨幣性の項目として、機能通貨以外の通貨で購入した固定資産などは、購入時のレートで表示されていれば、その後は為替レートが変わっても金額を変更する必要はありません。
機能通貨の変更は自由にできる?
基本的には、上記の機能通貨の要件に従って機能通貨を決め、その通貨で会計帳簿を作成する必要があるため、自由に変更するということはできませんが、国際通貨を使用する国外取引が増える等、要件に該当する通貨が変化すれば、当然に機能通貨を変更する必要が出てきます。
シンガポールでは、上記の要件さえ満たしていれば、おおむね自由に機能通貨を変更することができます。
ただし、この変更が適用される日の会計処理として、当該変更日のレートですべての勘定につき新たな機能通貨での金額を算出する必要があるため注意が必要です。
機能通貨=表示通貨ではないの?
機能通貨と似た概念に表示通貨があり、こちらは「財務諸表を表示する通貨」と定義付けされますが、IFRSでは任意の通貨を表示通貨とすることができるとされています。
特に、グループ会社内での機能通貨が統一されていない場合には、連結決算の際に一つの表示通貨に統一される必要があります。
この場合、使用する通貨レートは原則として決算期末のレートですが、増資や配当などの資本取引については取引が行われた日のレートを使用することとされています。
シンガポールであれば、シンガポール金融管理局(MAS)の公表するレートを使うのが安全でしょう。
リンク:https://secure.mas.gov.sg/msb/ExchangeRates.aspx
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