国際会計基準であるIFRS、シンガポールの会計基準、SFRSでも同じように踏襲されますが、年々新しい概念によって基準が変化していっています。
今回は、2018年1月1日から適用になった契約資産の概念についておさらいしていきましょう。
どんな概念?
契約資産(Contract Assets)とは、IFRS15によって表示が義務付けられる資産の一部で、以下のように定義されます:
- 企業が顧客に移転した財またはサービスと交換に受け取る対価に対する企業の権利。当該権利が、企業の将来の履行など、時の経過以外の条件を持つ場合は、債権ではなく、契約資産に該当する。
簡単に言えば、契約上義務を履行すれば支払ってもらえる金額については、厳密には確定していないため債権とは言えず、それでも資産として認識することは必要なため、この概念で処理することになった、ということです。
いつ使われる?
シンガポールでは、通常この契約資産の概念は建設業で用いられます。
工事が長期間に及ぶ建設業では、工事完成基準/工事進行基準(percentage-of-completion method)によって収益を計上することになりますが、この収益認識の際に貸借対照表(BS)上に書かれるのが、通常の売掛金(Account Receivables)ではなく、契約債権ということになります。
逆に工事を発注している側は支払うべき金額を契約負債(Contract Liabilities)として認識します。
仕訳の仕方は?
確認のために上記の仕訳を例示すると、まずは見積もりがベースになります。
1.見積書
工事収益総額: S$2,000,000
見積工事原価: S$1,000,000
ここで重要なのが、工事の契約義務の履行について、工事原価の発生を基準に進捗度を測ることができるということです。
2.原価
外注費計上額:S$800,000
例えば、下請け工事業者から上記金額が請求され、今年度に計上されたとすれば、見積工事原価の80%に当たりますので、同じく工事収益総額の80%に当たる、以下の金額が契約資産/工事収益として認識されることになります。
3.契約資産
Dr: 契約資産: S$1,600,000
Cr: 工事収益 S$1,600,000
契約資産にしないと?
シンガポールであれば法定監査が行われますので、会計認識の際、売上金額をBS上単純に債権として認識しているような場合は、ここで修正されることになります。
また、当該修正のためには工事完成基準のために必要になる完了証明書(Completion Certificate)の提出が必要になります。
債権・債務として認識されているのであれば、取引先にConfirmation Lettersを送って認識する金額を確認しあう作業も生じてしまいますが、相手方が同じ金額を契約資産・契約負債として認識している場合には、債権・債務の確認も不整合を起こしてしまうため、要注意です。
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