2019年4月1日、雇用法の改正が企業を騒がせた同じ日に、もう一つのリフォームが行われていました。金融機関や保険会社が倒産した時の対応として、預金額や保険払い戻し金額うち、一定額が払い戻される仕組みです。
今回は、将来的にシンガポールへ移住することを考える方、またそんな従業員を見つけたい方のために、リフォームの詳細をお伝えします。
銀行の預金額はほどほどに?
シンガポールの銀行といえば、DBS、UOB、OCBCと、名だたるメガバンクがしのぎを削るイメージがありますが、2つ以上の銀行で普通預金の口座を持つ意味があるのかとは、よく聞かれる質問です。
これに回答するには、DIスキームを説明する必要があります。
DIスキーム(Deposit Insurance Scheme)とは、今回のリフォームで引き上げられた上限まで、シンガポールで金融機関が破綻しても、当該スキームのファンドからお金が払われるという仕組みで、銀行の預金残高が保証されるようにデザインされています。
その上限は、過去S$50,000だったところから、S$75,000(およそ600万円)まで引き上げられました。
つまり、個人が一つの金融機関に預金しておく金額としてはS$75,000までが安心だということです。それ以上の金額は別の金融機関にしてしまえば、そちらはそちらで同じ上限金額まで保証されるため、どれだけ金融機関が倒産するリスクがあっても安心です。
高額の預金があれば高額の利息が得られるという考えからすれば、一つの銀行の預金残高をS$75,000まで絞ることが必ずしも賢明とは言いがたいですが、上記の質問に回答するなら、少なくとも二つ以上の金融機関で口座を開いて預金を分散させておけば安全ということで、答えはイエスと言えるでしょう。
保険金はタイプもいろいろがおすすめ!
次に、より効果的な資金管理方法として、保険会社にお金を入れておくことが考えられます。
特に生命保険など、いざ自分がシンガポールで人生に幕を閉じたときのお金の流れは、サラリーマンにとって大きな関心事となります。
この保険会社が倒産した時には、PPFスキーム(Policy Owners’ Protection Fund Scheme)という対応がなされます。
以下、少し細かく見ていきましょう:
そもそも仕組みは?MASが見ています!
保険会社が倒産した場合、シンガポール金融庁MAS(Monetary Authority of Singapore)が介入します。
一番初めに検討されるのは、別の保険期間、金融機関による買収です。これができれば、基本的には保険会社が社名を変えたり合併するのと変わらず、保障は継続することになります。
それができない場合は、しばらくの間、保証を受け持つ政府機関であるSDIC(Singapore Deposit Insurance Corporation)により、保険会社の運営が行われます。
その間もMASが状況を精査し、最善と思われる方法でその後の運営を左右します。
金額が保険会社自体では保証できなくなったとき、PPFスキームの基金が援助をすることになっています。
フリーランスの時代!会社の団体保険がないからこそ?
視点を被保険者に戻してリフォームの説明を続けます。
PPFスキームが発動される場合の保証は、以下のように規定されています。
1.生命保険
シンガポールの生命保険には、確定払戻総額(Guaranteed Sum Assured)と、確定譲渡価格(Guaranteed Surrender Value)があります。
それぞれプランを組んで、保険金を支払うわけですが、万が一保険会社が倒産した時には、PPFスキームにより、それぞれ確定払戻総額にはS$500,000の、確定譲渡価格にはS$100,000の限度額でもって、保証がされることになっています。
2.一般保険
一般保険の対象は多岐にわたりますが、シンガポールでも当然、住居や車が最も重要な資産とされます。
例えば自動車保険のスキームでは、万が一保険会社が倒産したとしても、最大でS$50,000まで払い戻し金額が保証されるとされています。
一方、不動産の保険にかかるスキームでは、その金額はS$300,000です。
シンガポールは現在、世界で進行するGig Economyの動きを受けて、様々な法整備を進めているところです。
一般保険の保証額に上限ができることは、高級住宅や高級車の損傷による莫大な払い戻しのリスクを下げ、保険料を手ごろな価格に抑える効果もあると考えられています。
これにより、会社に属して保険でカバーされることのできない個人が、自己の所有物を用いて職務を遂行する場合に、有効な保証となる保険会社の利用が可能になると期待されています。
以上、今回はシンガポールの保険事情についてお伝えしました。
国が小さいだけに、世の中の動きに合わせて、政府が金融機関・保険会社と利用者との関係まで考えて、スピーディーに法律を更新していってくれるシンガポールは、やはり将来的にも安心感の高い国だといえるでしょう。
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