東京コンサルティングファーム、シンガポール駐在員の岩城です。
ちょっと長期連載をしてみようかなと考えています。国際ビジネスを行う上で切っても切り離せないのが国際税務の問題です。近年で言えばパナマ文書によるタックスヘイブン対策税制が取りざたされましたが、過去の弊社ブログ記事でタックスヘイブンについては幾度となく扱ってきました。
あまり詳しく解説ができていないなというのが、移転価格税制です。
今回からシンガポールの移転価格税制について詳細に解説していきたいと思います。
本稿では、シンガポールの税務当局のIRASより発行されているIRAS e-TAX Guide Transfer Pricing Guidelines(Forth edition)に沿って解説していきます。このガイドラインは109ページに及ぶ詳細なものとなっています。私もこの記事を書いている時点ではほとんど読みこめていないものとなりますが、皆さんと一緒に勉強していければと思います。
シンガポールにおける移転価格の背景として、その取り組みはOECD加盟国に比べて遅かったことが事実としてあります。なぜシンガポールは進んで移転価格の取り組みをしてこなかったのか。
当然そこには理由があります。
移転価格は国際税務における課題の一つです。課題があるということは理想があります。国際税務の理想というのはほとんどが、
『各国における課税権の確保』
ということに尽きます。
理想−現実=課題と考えると、移転価格税制は課題を解決するための制度であることから、現在各国において課税権が確保できていない可能性ないしは現実があるのだと分析できます。
本題に戻りますが、ではなぜ、シンガポールは移転価格の取り組みを積極的に行ってこなかったのか。つまり課題を感じていなかったからです。
シンガポールの法人税率は17%であり、軽税率国として認識されています。企業が考えることは、軽課税国でビジネスの売上を計上し、税金を少しでも抑えたいという国際税務戦略となります。つまり、シンガポールは現状のタックスメリットを存分に活かし、税務面における国際競争力を高め、課税権の確保を体現している数少ない国となっています。
しかし近年、国際的に移転価格の整備機運が高まり、シンガポールだけが乗り遅れ、孤立することはできません。そのため、シンガポールも各国に対する「建前」として、移転価格税制の整備を行うようになったというのが現実的にはあるのではないでしょうか。
以上がシンガポールにおける移転価格税制の背景となります。次回より、ガイドラインをじっくりと見ていきましょう。
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