労務も含めたビジネス環境を整えることに尽力してきたシンガポール、これまではどちらかというと経営者に寄り添った制度を作ってきていますが、国民の生活を豊かにするという目標に向け、徐々に従業員を保護する方針を明確にしてきています。
そんな中、シンガポールでも急増しているのが労務に関するコンプライアンス違反の指摘、訴訟事項です。
特に解雇された後に従業員がコンプライアンス違反を告発する事項が増え、シンガポールの各種政府機関もこれに応えて対策を求めるようになってきています。
これに対し、企業側が打てる対策が、HR Auditという社内コンプライアンスチェックの実行です。
今回はこのHR Auditの内容と実体についてお伝えします。
目次
HR Auditの定義とは?
まず、シンガポールに限定せず、一般的な定義からお伝えします。
HR Auditは会社法で求められる法定監査、Statutory Auditとは無関係で、会計に関するものではありません。
むしろ、会社が自主的に行うコンプライアンスチェックの意味では、いわゆる内部監査(Internal Audit/Compliance Audit)の一種であり、以下のいずれかにより実行されます:
- 外部の専門家
- 社内の担当部署
- 政府当局の担当部署
HR Auditのチェック対象とは?
通常、人事関連で企業のコンプライアンスが問題になるのは、以下のような項目です:
- 採用プロセス
- 採用面接
- 雇用契約書
- 就業規則
- 罰則規定
- 解雇時通知期間
- 職務内容通知書
- 従業員複利
- 外国人勤務管理
- 就業時間および賃金
- 個人情報
- 記録保管体制
- 給与・昇給
- 従業員評価
- 職業組連
- マネージャー育成
- 知的財産
シンガポールでのHR Auditの現状は?
シンガポール国内では、HR Auditは原則社内で自主的に行うものとされています。
大企業を中心に、雇用環境や社内規則が告発されたところが1000社以上あり、S$100,000近く罰金や賠償金を払わされるケースもある中、内部監査の一環として需要が高まりを見せています。
このために、こうした内部監査的な作業ができる人材が求められますが、一般的には個人で経験のあるHRの専門家を雇用するか、外部の専門業者に委託するかのいずれかを取ります。
コンプライアンスチェックという意味では、毎年これを実行し、レポートをもって労務当局MOMの視察に備えたり、社内規則の整備をすることが推奨されています。
どんな専門家がいるの?
世界的に活躍する内部監査団体The Institute of Internal Auditors(IIA)のシンガポール支局が主な権威として専門家を認定しています。
学位があり、内部監査の経験が少なくとも1年以上あれば入会することができ、最新のコンプライアンス事項に触れながら、業務の質を高めることができます。
ただし、実際には外部HRコンサルタントを起用し、コンプライアンス上のアドバイスを受けて、定期的に社内の人事慣行を見直すような取り組みが一般的です。
シンガポール子会社の運営だけにそれほど大きく費用がかけられないというところでは、日本本社のコンプライアンス事項に沿って体制を整えることも一般的ですが、文化的にも大きく異なるところのあるシンガポールでは、現地の専門家に依頼してHR Auditの体制を整えておくことが無難な選択と言えます。
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株式会社東京コンサルティングファーム シンガポール法人
近藤貴政
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