ビジネスハブとして世界からヒト・モノ・カネを集めて成長してきたシンガポール、海外からも優秀な人材を集めてビジネスをリードしてきましたが、2000年以降は方針が変更されてきました。
国内の仕事が外国人人材により奪われていることに不満を覚えるシンガポール人からの反発を受け、シンガポール政府が注力してきたのが人材育成です。
この方針に沿って立ち上げられたSkillsFuture Singaporeについて、今回は簡単にお伝えします。
SkillsFuture Singaporeってどんな組織?
国内の労働人口をつかさどるシンガポールの政府機関は、人的資源省MOM(Ministry of Manpower)ですが、国民を労働人口として送り出す機能はシンガポール教育相MOE(Ministry of Education)が担っています。
SkillsFuture Singapore(SSG)は、技能を備えた人材でシンガポールの未来を作り出すというコンセプト(SkillsFuture Movement)で、MOEの下に発足、主に成人を対象とした職業訓練を実施しています。
SkillsFuture Singaporeはそのミッションとして成人教育とシンガポールの将来を見据えた職業訓練を提供することで、国民の生涯教育と熟練技術を尊ぶ社会を醸成することを掲げています。
一方、MOMの下には労働力省WSG(Workforce Singapore)が設けられ、国内の労働需要に合わせあらゆる人に就労機会が得られ、例えば障害を持った人でも仕事が見つけられるよう、企業や個人に働きかけながら、国内の職業機械の充実に責任を持っています。
具体的には、企業と個人のマッチングサイト、MyCareersFuture(https://www.mycareersfuture.sg/)などが運用されています。
SkillsFuture SingaporeとWorkforce Singaporeは、その目的の近似もあって、ホームページも共同のサイトを設けるなど、補完し合いながら活動しています。
サイト:https://www.ssg-wsg.gov.sg/
どんなサービスを提供しているの?
SkillsFuture Singaporeが提供するサービスはそのほとんどがE-serviceです。
代表的なものとして、将来のシンガポールで労働力が必要になると思われる各分野での技能訓練が受講できるMySkillsFuture(https://www.myskillsfuture.sg/content/portal/en/index.html)や、企業の経営者に対して具体的なソリューションを提供するEnterprise Portal For Jobs & Skills(https://www.enterprisejobskills.sg/)などが運営されています。
ただし、企業に向けたサービスには、対象の従業員がシンガポール国籍/永住権保持者でなければならない他、その多くにシンガポール資本が30%以上入っていなければならないという条件(eligibility criteria)が入っているため、純粋な日系企業には利用できないものが多い点には注意が必要です。
需要のあるサービスが提供されている?
シンガポールをはじめとしたASEAN諸国で、最も深刻な問題となっていたのがマネージャーの不在です。起業家精神が旺盛で、マネジメントができるレベルの人材はこぞって起業してしまうため、そもそもマネージャー自体が見つけにくいという特性があります。
こうした点はSkillsFuture Singaporeも把握しており、新規採用のマネージャーを育成するプログラムP-Maxや、50歳以上の従業員をマネージャーとして教育するP-Max for Older Workersなどのプログラムが設けられています。
他にも、統計に基づいた観察で、中小企業(SME)が一般的に従業員をトレーニングに送り込むことが少ないこともわかっており、これに対して受講料を90%まで負担するEnhanced Training Support for SMEsというプログラムが用意されていることも、SkillsFuture Singaporeが需要を把握している例と言えます。
補助金も出る?
コロナウイルス(COVID-19)の影響で事業の継続が難しい企業については、通常働けない従業員の給与負担を抑える必要が出てくることから、シンガポール政府の予算で資金援助が出ることになっています。
具体的には、Absentee Payroll(無出勤給与配分)というプログラムがあり、職業訓練や講習に出る従業員の給与が、会社としては無出勤でありながらも契約基本給通り支給されるという条件の下で、同職業訓練や講習の時間分、最大90%まで基本給を負担してもらえるという制度です。
業種によっては対象の職業訓練や講習の参加費用も大部分補助を得ることができ、実質的には従業員を資金的な負担を抑えてスキルアップさせられる点、魅力があります。
他にも、PMETと呼ばれる管理職や技術職人材に対して、転籍を可能にする各種技能訓練を受けさせる代わりに給与負担、受講料負担をするProfessional Conversion Programme (PCP)、一般社員に対して昇進、昇格をさせるための職業訓練を提供し、それを受けさせる代わりに給与負担を行うThe Rank-and-File Place-and-Train Programmesなどが注目を集めています。
特に、今回深刻な打撃を受けているホテル業などは、従業員を再教育して会社全体が新たな事業に転換できるよう導く制度としてJob Redesign Place-and-Train Programmeが用意されており、シンガポール資本でなくとも利用することが推奨されています。
多くのプログラムが用意されているため、一つ一つ目を通していくことは時間がかかりますが、企業が生き残りをかけて費用削減するためにも、積極的に問い合わせを行うなどして、SkillsFuture Singaporeの内容を確認していくことが求められています。
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株式会社東京コンサルティングファーム シンガポール法人
近藤貴政
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