シンガポールで製造業?実情をご紹介!

投資環境・経済

世界のビジネスハブとしてアジアで存在感を誇るシンガポールですが、実は製造業にも強い国だということをご存じでしょうか。

歴史を繙いて見れば、シンガポールはそもそも、工業製品の輸入から製造工場の誘致に切り替えて国内の雇用を増やす、産業開発戦略を採ってきた製造業中心の国でした。

今でもGDP(国内総生産)の20%~25%を占めるシンガポールの製造業について、今回は簡単に実情をお伝えします。

ずっと製造業は盛んだった?

シンガポールの産業の歴史は、大きく輸入代替期、輸出志向期、産業構造高度化期、知識集約型産業期に分けられます。

まずは1960年代前半に輸入から工場の誘致に政策を切り替え、その後は1970年後半まで海外への輸出政策を推進しました。

これには、マレーシアから切り離され、新たな市場を開拓する必要が生じたことが大きな引き金となっています。

産業としては、輸入代替期に造船と石油精製が大きく伸び、その後は外国投資の誘致に成功して、電機・電子部品といった労働集約型産業が展開しました。

その後、周辺国の台頭により技術集約型の投資促進政策へ舵を切る必要に迫られ、1979年から金融・IT・ソフトウェア開発などの分野で国際的なビジネスハブとなるための産業構造高度化期を迎えます。

国内の教育も充実され、シンガポールではコンピューターやディスクドライブといった製品の製造工場が開設されました。

その後、産業の多様化に伴い、エレクトロニクスやITといった付加価値の高い産業の発展に焦点が移ります。1990年以降の知識集約型産業期では、研究開発に集中的に資金が集められ、有能な人材が集まるビジネス拠点が次々と設けられるようになりました。

シンガポールは建国以来その歴史上、常に製造業に経済をけん引させてきたと言えるでしょう。

政策でも担保される製造業

シンガポール政府はその政策として、GDPの20%~25%を製造業によって創出することを決めています。

これは、情報・通信産業が収益の大きな割合を占めるようになった知識集約型産業期においても変わらず、ジュロン工業団地などに代表される徹底的に合理化された製造体制を維持しています。

シンガポールの製造業が持続的に強い理由の一つが、レベルの高いエンジニアの存在です。

インド、バングラデシュ、中国などから高学歴のエンジニアを呼び込みますが、所得を引き上げ、民族的な差別を容認しない政策を採ってきたことで、高い治安を維持しています。

同様に出稼ぎ労働者も低賃金外国人労働者として保護を与えながら、労働力を確保しています。

こうした計画的な産業構造の確立、維持により強くなったシンガポールの製造業は、外国人労働者比率の低減が推進される中でも、一定の比率で保たれることが期待できます。

代表的な製造業とライセンス事情

シンガポールの製造業を支える産業で盛んなのは、エレクトロニクス、化学産業、バイオテクノロジー、精密機器などです。

特に化学品については周辺環境への影響や化学兵器製造への転用の可能性があることから、以下のライセンスの取得が義務付けられます:

1.Hazardous Substances Licence(危険物等化学品製造ライセンス)

…国家環境庁(NEA)管轄

2.CWC Licence(化学兵器禁止条約特定化学品ライセンス)

…シンガポール税関(Singapore Customs)管轄

また、以下の品目の製造には経済開発庁(EDB)のライセンスが必要です:

  1. ビール
  2. タバコ
  3. 延伸鋼製品
  4. ガム
  5. マッチ
  6. 光学ディスク(CD、DVD等)

最後に、食品の製造にはシンガポール食品庁(SFA)の以下のライセンスが必要です:

  1. Food Processing Establishment(食品製造業)
  2. Slaughter-house(屠畜場)

裏を返せば、それ以外にはライセンスは必要がないということでもあります。

適切に必要なライセンスを把握しつつ、ハイレベルな製造をシンガポールで始めてみる価値は、高いかもしれません。

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