コロナウイルスの影響下でも、世界のビジネスハブとして、最大限の対策を講じながらビジネスを後押ししているシンガポールですが、就労許可であるEPおよびS-Passの申請と発行については、通常通り運用されています。
国民の生産性と所得向上を国の施策として掲げ、シンガポールは外国人労働者の割合を引き下げる決定をしていました。2020年5月から予定されていた実行されるEPおよびS-Passの条件変更も予定通り実行される見込みです。
今回は簡単にEPおよびS-Pass取得の流れをおさらいしながら、この条件変更についてお伝えします。
申請から承認まで
基本的でも見逃されがちな事実ですが、EPおよびS-Passは、個人ではなくシンガポールでビジネスを行う企業が申請し発行する就労許可です。
企業がその事業を行うに当たって、必要な人材を明らかにし、シンガポール国外からしか調達できないという訴えから「外国人を働かせる」許可を得るものです。
EPおよびS-Passの申請も企業側がもつCorpPassのアカウントでしかログインできない「EP On Line」というポータルサイトで行われる点にもその原則が現れています。
申請は外国人従業員のパスポート写真と学歴証明書画像、「Form 8」と呼ばれる申請書類に書かれている個人情報で行われます。
情報を入力し、最後にS$105の申請料を支払えば申請完了、その後1~3週間で結果が通知されます。
承認であれば「IPA(In-Principal Approval)」と呼ばれる書類が発行され、不承認であれば追加書類の要求や却下の理由が告げられます。不承認の場合、要求される書類や説明文をアップロードして再申請すれば、その後1日~3週間で次の結果が通知されます。
申請時の注意点
注意すべき点としては、2018年からシンガポール現地の人材を優先させる政策として、JobsBankと呼ばれる採用ポータルで従業員の公募を行い、そこで見つからない人材に関してのみ外国人人材のための就労許可の申請が許されるようになったという点です。
採用を行った際の記録としてIDを入力する必要があり、これに紐づいてJobsBankのサイトの情報も精査されるため、いい加減な対応をすることは許されません。
また、事前にSAT(Self-Assessment Tools)と呼ばれるサイトで月額所得や学歴、専門知識がEPおよびS-Passの基準に達しているかどうかを調べることも求められます。
申請される月額給与を賄うための十分な資金が会社にあるか、ということも審査基準になるため、追加書類として銀行口座の取引残高が求められることもあり、少なくとも月額給与の12か月分は支払いができるような預金があることが望ましいです。
承認からカード受け取りまで
IPAが下りた後は、書類として添付されるDeclaration Formに会社側と本人のサインが求められる一方、外国人人材本人がシンガポールに入国し、住居を決めることが求めらます。
EPおよびS-Passの発行(Issuance)を行う際にも、具体的に入国カードの番号と賃貸契約済みの住所の形で情報を入力することが求められます。2019年から、オフィスの住所を居住地として入力することはできなくなり、会社または本人の名義で住居が確保されていることが必要になっています。
この点、シンガポールではEPやS-Passのカードを持っていなくても、IPAがあれば大部分の住居は個人の名前で賃貸借契約を締結することができ、政府の方針に従っていると言えます。
なお、EPおよびS-Passの発行料は、マルチの入国ビザが自動的について、S$255かかります。
発行が完了したら、アポイントをオンラインで取得してMOMの情報登録センターで顔写真と指紋の登録、簡単な本人確認が行われます。
その後5営業日でカードが届けられます。EPおよびS-Pass発行の際に入力した受取り住所で、受取人として登録した人が身分証を見せる必要がありますが、一日前に配達の通知があるなど、制度的には確立していると言えます。
制度の変更点
今回の変更は主に、EPおよびS-Passの承認に必要となる、外国人人材の給与水準にあります。
シンガポールが公認するレベルの大学を卒業し、22歳~25歳の若年層である場合の最低月額所得(現地の基本給以外に各種手当や日本側給与支給分、および会社負担の住宅費を含む)が、これまでS$3,600であったところ、S$3,900に引き上げられるということで、年齢が高くなるにつれて、また最終学歴のレベルが下降するにしたがって上昇する月額所得の水準は、軒並みS$300~S$500程度引き上げられるとされています。
日本人のシンガポール駐在員であれば、そもそも最高水準であるS$7,600以上の月額所得を支給する企業も少なくありませんが、EPおよびS-Passの最低水準で給与を支給する場合には、企業の側からすればそれだけで一人当たり年間負担がS$3,600近く増えることになるため、厳しい変更です。
また、従前にはS-Pass、Work Permitなど、外国人材徴収税Foreign Worker Levyの発生する人材にしか求められていなかった健康診断が、EP保持者にも求められるようになってきています。
基本的には厳格化の一途であり、今後も条件の緩和は期待できないため、期間には十分余裕を持って、十分条件を理解したうえでEPおよびS-Passの申請をすることが推奨されます。
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株式会社東京コンサルティングファーム シンガポール法人
近藤貴政
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