シンガポールの配当ルールを確認!

税務

国際的なビジネスハブとして、ヒト・モノ・カネを集めるシンガポールは、アジアでは香港と並び、低税率国として知られています。

更に、自国の経済や税収を維持しながら、シンガポールに進出するメリットが感じさせられるよう、各国との租税条約をはじめとする税制度は、日本とは異なる点が多くあります。

今回はその中から、シンガポールが地域統括会社を置くにふさわしい場所として選ばれる理由の一つとして挙げられる税制度、配当のルールについてお伝えします。

配当って日本と変わらないの?基本の確認!

配当(Dividend)は、会社が株主に対して支払う金品などを指します。

この定義は日本もシンガポールも変わらず、企業活動による収益は契約に従った給与の支払いなどにより会社の構成員に分配され、国に法人所得税として納められる金額を差し引いた後、残った利益については以下の3つから選択することになっています:

  1. 株主に配当として支払う
  2. 新たな事業などに再投資する
  3. 利益剰余金として留保する

シンガポールのちょっと不思議なルール

次に、シンガポール法人からの配当について、日本との違いを見ていきます。

シンガポール会社法第403条の規定では、「配当は利益からのみ株主への支払いが許される」とされているのですが、この規定は日本の「配当の金額は剰余金の額に限る」という規定と異なり、前期まで赤字で繰越欠損金があっても、当期が黒字で利益が出ているなら、翌年には配当が可能になるということを意味しています。

これは、それぞれの会社の株式が、最終的には株主により投機的な売買がなされることを念頭に置いた、柔軟な法律だと言えるでしょう。

また、シンガポールでは繰越欠損金が半永久的に繰り越せるという点も、日本と配当のルールが異なる基盤になっています。

配当は課税されないって本当?

シンガポールではワン・ティア制度(事業の利益には一度しか課税のタイミングがないこと)の税制が採用されており、既に法人所得税が課せられた後に支払われる配当金には、原則として一切課税はされません。

シンガポール国内であれば、株主が個人であれ法人であれ、配当する側にもされる側にも、一切課税されないというのは本当です。

また、シンガポール法人からの配当を海外の株主が受け取る場合も、シンガポール国内では一切源泉徴収されません。

シンガポール法人の株主が日本にいる場合、個人では20%強の税率で課税され、法人ではその5%が益金に算入されることになります。

日本からの配当受け取りは?

次に、シンガポール法人が株主として、子会社からの配当を受け取る場合について考えます。

まず、子会社が日本にある場合です。

一般に、日本法人からの配当を海外の株主が受け取るときには、その時点で20.42%(※1)の源泉徴収税がかかります。

日本法人の株主がシンガポールの居住者法人である場合には、シンガポールと日本の間の租税条約により、源泉徴収税の税率が5%(日本法人の株式を25%以上保有している場合)または15%(左記以外の場合)に抑えられます。

源泉徴収税分が引かれたのち、シンガポール側では一切配当への課税はありません。

税率が低すぎると引っかかる?

シンガポール法人の子会社が日本以外の国にある場合、当然ながら配当に対する課税方法は国によりさまざまに異なります。

一方、受け取り側のシンガポールでは、原則として課税しないのが国の方針なのですが、以下の3つの条件をすべて満たせない場合には、シンガポールでも益金に算入する必要が出てくるため要注意です:

  1. 子会社の国/地域の法人所得税率が15%以上である
  2. 子会社の国/地域で法人所得税の課税が実行されている
  3. シンガポール国内で非課税になれば、シンガポール法人に有利である

特に、子会社の国/地域の税率が低い場合には、注意が必要です。

以上、見てくると、やはりシンガポール法人から配当を受ける方が、日本法人や他の国の法人から配当を受け取るよりも断然お得であることが分かります。

利益の上がる企業を集めようという、国の方針に沿った税制と言えるでしょう。

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2019-10-23

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