シンガポールの残業対応!代休に隠れた難点とは?

労務

シンガポール雇用法、第4部では、既定の時間より残業した従業員には一定の割増時給計算で残業代が支払われなければならない、と定められています。

この雇用法第4部は身体的労働者や一定水準の月給以下の従業員のみに適用される形で働く人の健康を守る規定ですが、これにカバーされない従業員はどのように取り扱われるべきか、という大きな課題を残しています。

 

今回は、多くのシンガポール企業の悩みのタネになりがちな残業と、その対応としての代休についてお伝えします。

 

代休はシンガポールにもあるの?

書き入れ時、という言葉があるくらい、仕事というのは常に安定して降ってくるものではありません。時節や景気、社内事情の波を受けて、一時的に残業が強いられることはよくあることです。

そんな時、残業代を出すことなく、残業した分休みを取ってもらうのが、代休という考え方です。

英国の影響を受けたシンガポールにも、同じような概念としてOff-In-Lieu(オフ・イン・リユー)という慣習が存在します。

上述のように、雇用法第4部の対象となる、月給S$2,600以下の従業員や月給S$4,500以下の身体的労働者には、残業代を支払うことがルールとなっているため、代休を取らせることもできません。

一方、管理職を始め、上記の給与閾値を超える従業員には、そもそも残業を補う必要すらないというのがシンガポールの法律ですが、実際には多くの企業で、残業した時の取り決めが設けられています。

 

代休のルールは?

多くの場合、雇用契約書や就業規則などで、残業した場合は8時間につき1日の代休を与える、などと取り決めを設け、従業員の署名をもって同意したものと見做します。

実際シンガポールでは管理職も含め、多くの従業員が残業代の支給よりも、代休の取得を希望します。十分給与をもらっていると感じている人も多いのでしょうが、それよりも健康的なワークライフバランスを保ちたい、という欲求があるようです。

残業の他、休日出勤、祝日勤務等の場合に、1日分の勤務時間につき1日の代休を与える、という形でルールを設定することができます。

 

代休の難点は?

この代休、多くの企業が上のように、社内規定で「代休を与える」ということのみを定めてしまっているのですが、ここには一つ落とし穴があります。

それは、この代休がいつまでに取得できるのか、という点です。

シンガポールの法律で決められる年次休暇(Annual Leave)には、最低翌年末までは取得できるようにする必要がある旨記載されています。

一方、代休に関してはシンガポール雇用法には何ら記載がありません。

結果、代休が無制限に累積していったり、突然まとめて取得され、思いもよらない形で長期休暇を取得されたり、というケースが散見されます。

実は、代休は残業した時点から取得の権利が発生し、しかも残業しただけ不定期に増加するなど、管理が非常に難しいのです。

 

どんなふうに対処すればいい?

代休の管理は、給与計算ソフトなどで残業時間を計算するだけでなく、この代休をいつ取得したか、という記録をつけていくことが重要になります。

また、就業規則や雇用契約書の中で、代休はいついつまでに取得する、という規則を設けてしまうのも一つのやり方です。

通常、1か月以内に取得すること、としておけば、多くの従業員は何とか休める日を見つけて消化してしまう傾向があります。

または、同様に有給休暇となる年次休暇と同一視して、最初から「年休を一日付与する」などとする会社もあります。こうしておけば、期限付きの年次休暇をカウントする作業に、残業や休日出勤をした従業員の日数を足していって、誰の目にも明らかな形で管理することができます。

 

残業、そもそもの原因は?

ところで、代休の対応が大変なのはそもそも残業や休日出勤があるからです。業種によっては休日出勤がやむを得ない場合もあるでしょうが、残業は本来ゼロであるべき労働です。

シンガポールでも、多くの場合、残業の根本的原因は生産性にあります。

必要もないのに職場に長居したり、集中して片付けるべき仕事をダラダラと長引かせたりする風潮が、一定数の企業で見られます。

そうした企業では、企業文化として生産性を高めようとする習慣が根付いていない傾向が強く、ただ単に代休で残業を管理するだけでなく、実は人事問題の総合的解決が求められているのかもしれません。

 

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