メキシコにおける就業規則の必要性

東京コンサルティングファーム
メキシコダイレクター
片瀬 陽平

皆さまこんにちは。東京コンサルティングファームの片瀬です。

いつも当ブログを見て頂きまして誠にありがとうございます。

 

本日はメキシコにおける就業規則の必要性についてお話をさせて頂ければと思います。一昨年から続くメキシコの進出ラッシュは現在もとどまる事を知らずに続いています。段階的にいえば、会社の設立が完了するのと同時期ぐらいに就業規則の作成を始められる会社様が多いように思います。

メキシコは労働者保護の観点が強く、就業規則に従って雇用を行っていたとしても、労働者から訴えられてしまい、仕方がなくお金を支払っているというケースが多く見受けられます。

メキシコでは、弁護士は成功報酬で雇うことができます。特に、この様な労働関係の裁判は労働者が勝つことが多いために弁護士にも扱いやすい案件、つまり弁護士を容易に利用できる案件になります(成功報酬型ですが、もちろん弁護士は仕事を選びます。負ければお金が入ってきませんので。)。そのため労働関係の裁判について、労働者が裁判を起こすのが非常に簡単なのがメキシコと言えると思います。特に日本企業は多くの企業が裁判を行う時間的な余裕が無いため(代表者への出頭命令等が多い)に、裁判をせずに相手の提示する示談金を支払うケースが多くなっています。

そのために本人の意思を入社前に確認をする必要があり、就業規則を前提として、それに納得したから入社するという流れにしなければなりません。それでも運悪く裁判になってしまうことはあるかもしれませんが、日系企業はPTUを始め、給与、賞与としっかりと金を払う会社が多いので、頻繁に裁判が起きているとはあまり聞きません。

裁判になったとしても、就業規則に納得して入社したということが明らかであれば、その結果は明らかに違うものになり、裁判を有利に進める事も可能になるかと思います。

 

それではメキシコの就業規則のポイントを記載していきましょう。

 

【就業規則のポイント】

①試用期間について

試用期間についてメキシコでは180日までと労働法によって定められています。ただし、多くのメキシコ企業が30日を試用期間として定めています。何故でしょうか。

日本人の私からすると180日までと法律で定められているのであれば、180日に設定することが一番有利であるものと考えてしまいますが、メキシコではそうではありません。180日試用期間と定めてしまうと180日間は雇ってもらえる(180日間は絶対に給料がもらえる)と考えるのがメキシコになります。企業も給料を払わなければならない期間が180日間になるとして、多くの企業が30日間の試用期間を採用しています。

会社によっては、30日間の試用期間が終了した段階で、改めて30日間の試用の契約を結び、合計90日を試用期間としている会社等もあります。

そのために180日をそのまま試用期間として利用することはメキシコにおいては危険であると認識して頂ければと思います。

 

②SickLeaveについて

メキシコには Sick Leave Lowsはありません。そのためにSick Leaveを定めるとしてもそれは、社内規定の位置づけになるかと存じます。多くのメキシコの会社がSick Leaveを導入していますが、これは導入した方が良い項目ではありますが、義務ではありません。

Sick Leaveではなく、IMSS(いわゆる社会保険庁)による傷病手当の規定がメキシコには存在しています。具体的には、Ley de seguro social (社会保険法)において傷病手当が定められています(Ley de seguro social 96条~98条あたり) 。内容は、「傷病手当については、傷病の発生から1年間(医者の証明が必要)の間、給料の60%をIMSSから受け取ることができる」というものとなります。

 

③有給休暇について

入社の年の翌年から6日間の有給休暇が付与されます。その後は、1年ごとに2日間増えていきます。

有休に余りがある場合には、有休ボーナスとして残日数×25%の給料を支払います。この際に、年次有給休暇の更新基準日をしっかりと決めるべきです。

 

④給与の支払回数について

基本的には好きに決めることができますが、メキシコの商慣行としては、

・マネージャー職:1回/月

・スタッフ:2回/月

・工場勤務者:4回/月

という形態が多いように思われます。工場勤務者に月1回や月2回の給与では、文句が噴出することも考えられるので注意する必要があります。支払い日について就業規則によって明確にする必要があります。

 

⑤賃金控除

源泉税・社会保険料を控除した残額を支払う。ただし、日本に比べメキシコの方が、税金等の控除額が多くなる可能性があるので、しっかりとグロスアップ計算を行い給与の手取り額を日本での支給の場合と併せる必要があります。

 

⑥給与や賞与について

メキシコでは基本的に、従業員は他の従業員の給与額や賞与額を知っています。彼らは自分がいくらもらっているのかを人に話す(どれだけ注意しても人に話していると思ってください。)為に日本と同じように就業規則を作ってしまうと問題になることがあります。

例えば、

就業規則の賞与の支払い規定において、「賞与は6月と12月に1度ずつ支給する。ただし、業績の悪化等により支給が無い場合がある。」としたとしましょう。日本人から見ると普通の何もおかしくは無い一文ですが、メキシコ人は違います。払う前提で規定ができていると、賞与を必ず払ってもらえるものという認識をします。賞与払いでカードのローンはするし、車だって買っちゃいます。なぜなら賞与で払えるから。

そしてもし賞与がないとなった場合には、・・・これは、想像にたやすいと思います。

「賞与は会社の業績等により、ある場合がある」と言う様な文言にしてください。「基本は賞与の支払いないけれども、ただ、みんなが頑張れば賞与を払う可能性があるよ。」と言って頑張らせるのです。昇給についても同じで、昇給が無い場合があるという書き方ではなく、昇給がある場合があると言う様な書き方にした方が無難です。

ポジティブな理由で人や会社を評価して、そのためにあなたにお金を払うんだとしっかりと認識してもらう必要があります。ただしポジティブな理由で昇給したとしても、何であいつは昇給して俺は昇給しないんだ、と思うのがメキシコ人なのですが。。。

 

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それでは、【今週の1枚】

 

ソチミルコという観光地の写真です。メキシコは昔、湖の上に国を作ったというのは有名な話しですが、ソチミルコは当時の面影を残した水路です。Trajinera(トラヒネラ)というボートがたくさん浮かんでいます。このボートの上でビールを飲みながらタコスなんかを食べることができます。

 

それにしても、何故メキシコ人は湖の上に国を作ったのか、実際に現地の人に聞いてみました。

 

初代国王はどこに国を作るべきか、どこに国を作れば反映するかを1人の占い師に託したそうです。その占い師は初代国王にこの様に伝えました「蛇を加えた鷲を見つけた場所に国を建てなさい」と。初代国王は全国を回り、蛇を加えた鷲を探し続けました。探し続けてようやく見つけたその場所はなんと、広大な湖の上だったそうです。こうしてアステカの首都テノチティトラン(現:メキシコシティ)は創設されたのです。

写真の水路はその700年前に栄えたアステカ帝国の名残であり、時の流れを感じることができます。土日は非常に人が多く、船が往来できないほどにごちゃごちゃしていますが、船の上の売店や、演奏隊、花屋などがあり、見ごたえは十分です。反対に平日は閑散としていて静かな雰囲気を味わえます。もちろんお勧めは土日です。メキシコっぽさを味わうことができますので。

 

 

 

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