メキシコ駐在員給与の負担 ~問題あり?問題なし?~

税務

メキシコ駐在員の片瀬でございます。今回もよろしくお願いいたします。

最近はようやくビザ取得に要する時間も落ち着いてきて、当初のように6カ月間必要となるようなこともなくなりました。私は7カ月程(1月~7月)かかりましたが・・・

【旅行ビザと税務規定】
メキシコでは旅行ビザで180日間滞在することが可能です。旅行ビザは再入国によって再発行されるために、旅行ビザで年間360日間メキシコに滞在することも可能です。ただ、税務の規定は違います。税務の規定では年間360日メキシコにいた場合にはメキシコの居住者としてメキシコで課税をしなければいけない義務が発生しますので注意が必要です。

  • 旅行ビザの規定では1回の滞在が180日
  • 税務の規定では年間の滞在が183日

まずはこの住み分けを確認する必要があります。

【租税条約と各国規定】
そして税務の規定を見る前に租税条約を確認します。よく国際間取引について、最初に各国規定を見る方がおりますが、まずは租税条約から確認をするようにしてください。租税条約は各国規定の上位概念にあたり基本的には有利規定が記載されていますので。
ただし、プリザベーションクローズという、各国規定の方が租税条約に比して有利な場合には当該各国規定を適用することができるというルールがあるために、租税条約を確認するだけではなく各国規定もしっかりと確認する必要があります。

【日墨租税条約】
租税条約の居住性の判定については、日墨租税条約の15条に短期滞在者免税の規定があります。

<内容>
一方の締約国の居住者が他方の締約国内において行う勤務について取得する報酬については、次のいずれにも該当する場合には当該一方の締約国においてのみ租税を課すことができる。

  • 報酬の受領者が継続するいかなる12箇月の期間においても合計183日を超えない期間当該他方の締約国内に滞在すること。
  • 報酬が当該一方の締約国の居住者である雇用者又はこれに代わる者から支払われるものであること。
  • 報酬が雇用者の当該他方の締約国内に有する恒久的施設又は固定的施設によって負担されるものでないこと。

<要約>
日本の居住者がメキシコで行った業務に関して給料を受け取った場合、次の全部に該当する場合には日本においてのみ税金を課すことができる。

  • メキシコに年間183日超滞在しない事
  • 日本側が給料を支払うこと
  • 日本側が給料を負担すること

そしてこれに該当しない場合に限り、日本とメキシコの国内規定が適用されるのです。

【事例】
では次の様な場合はどう取り扱われるでしょうか。
メキシコ法人の社員であり、メキシコの居住者であるが日本法人で一部給料を負担している場合。
この様な場合、本来であれば当該社員はメキシコ国内でメキシコ法人のために業務を行っているので、基本的にはメキシコ法人が給料を負担しなければなりません。本来メキシコ法人が負担しなければならない給料を日本法人が支払っているのであれば、日本の課税当局から子会社支援である、寄付金であると言われても仕方がありません。
では、日本法人が一部給料を支払っている場合の客観的な根拠づけはどの様に行うのか?

下記をご覧ください。
(出向者に対する給与の較差 )
9-2-47 出向元法人が出向先法人との給与条件の較差を するため出向者に対して支給した給与の額(出向先法人を経て支給した金額を含む。)は、当該出向元法人の損金の額に算入する。(昭55年直法2-8「三十二」、平10年課法2-7「十」、平19年課法2-3「二十二」、平23年課法2-17「十八」により改正)

(注) 出向元法人が出向者に対して支給する次の金額は、いずれも給与条件の較差を するために支給したものとする。

  1. 出向先法人が経営不振等で出向者に賞与を支給することができないため出向元法人が当該出向者に対して支給する賞与の額
  2. 出向先法人が海外にあるため出向元法人が支給するいわゆる留守宅手当の額

これは国税のHPの抜粋ですが負担部分はこの中のどれかに該当する様にしなければなりません。そして、根拠づけを行った段階でそれを証明する出向契約書や各種覚書を作成し、根拠資料として保存するのです。

上記の金額を超えて支給する場合には、出向負担金として出向先法人(メキシコ)から出向元法人(日本)へと支給します。この場合の出向負担金については出向先法人(メキシコ)のその出向者へ対する給与として取り扱われます。ただ、この場合においても出向契約書の作成等は必要となります。

ただし、進出当初は子会社での負担は辛いのが実情かと思います。そのためにも格差負担金の範囲内で日本の負担を考えましょう。

【結論】
給与の負担を考えた場合に重要となるのは、

  • 居住性
  • 支給形態

間違いなくこの2点となります。この2点さえ押さえておけば寄付金課税の怖さはありません。負担金以外においても資料がなければ寄付金(100%否認)とされる可能性が高いので、専門家と相談して根拠資料を作成してもらえればと思います。
資料があれば寄付金課税(100%否認)から移転価格課税(適正価格との差額を否認)とすることも可能ですので。リスクはできる限り減らしましょう!!!

【セミナー案内】
それでは次にセミナーのご案内です。
<12月16日(月)に私が日本で行うセミナーについて>

【詳細】
日時   : 2013年12月16日(月) 19:00~21:00(18:30開場)
会場   : 〒160-0022 東京都新宿区新宿2-5-3 AMビル7F
受講料  : 無料 (定員:30名)
申込方法: TEL/03-5369-2930 FAX/03-5369-2931 E-mail/f-info@kuno-cpa.co.jp

※今回は良い資料ができましたので、少しでも多くの方にご覧頂きたいと考えています。そのために当日会場に来られない方のためにも無料で資料を送付致しますので、ご興味がある方は上記のEmailアドレス(f-info@kuno-cpa.co.jp)にご連絡頂ければと思います。
注:お問い合わせの際はお手数ですが、貴社名およびご担当者様のお名前を記載頂ければ幸いです。
※2時間のセミナーでスライドが80枚程度になりましたので、重要な部分のみをかいつまんでの説明になると思います。規定は読めばわかるので、実務上の留意点を細かく説明する予定です。
※対象は今後メキシコに設立しようとしているお客様、現在設立中のお客様に、是非聞いて頂きたいと思っています。
※今回は設立にある程度特化したセミナーになってしまいますが、設立後、一定期間経過したお客様には、現在別に2014年の税制改正をまとめた資料を作成しています。もし、2014年税制改正資料が必要であれば上記メールアドレスにご連絡を頂ければと思います。完成後(12月末予定)にメールにて当該資料をお送りさせて頂きます。日本語での資料は現在全く出回っていないために必見です!!!(このブログでしか告知していません。お誘いあわせの上、ご予約頂ければ幸いです。)

<セミナーサマリー>
一部19:00~
1.進出に伴うリスク
2.進出に伴うインセンティブ
3.進出の具体的スケジュール
4.VISA取得の具体的スケジュール

二部20:00~
1.メキシコにおける税制度の解説
・主な税金の種類
・個人所得税
・法人所得税
・付加価値税
2.事例検証
・3者間貿易
・租税条約上の技術役務の提供
・マネーロンダリング関連法
・PE認定の実務

多くの皆様のご参加をお待ちしております。

【今日の1枚】
イラプアトのバスターミナルの写真です。D.F.からバスで4時間ちょっと。3列シートで車内がWIFI環境にあるためかなり快適です。

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