仕事の質

その他

こんにちは、メキシコ駐在員の片瀬です。

仕事の質はその人の役職によって変わります。そしてその役職は基本的には3つのパートに分けることができるのです。1. トップマネジメント、2. ミドルマネジメント、3. スタッフ、そしてこの3つのパートがそれぞれ正常な役割を担っているからこそ、組織は健全に動くのです。ただ、海外では駐在員1人がスタッフからトップマネジメントの役割全てを引き受けなければならないのですが、多くの方はこの当たり前のことができないのです。完成された組織であればスタッフ時代に専門性を磨き、ミドルマネジメント時代にマネジメント能力を身につけ、トップマネジメントにおいて組織を作り拡大する。さらに分かりやすく3者の役割を分けると、1. 専門性、2. マネジメントに分類することができるのです。当社は独立しても成功する人材を育成していますが、独立しても成功する人材とはどのようなものでしょうか? これについて、多くの方は、マネジメント能力がある人材が独立して成功する人材と位置付けていますが、これは正直なところ不正解であると私は思っています。

どういう事か?
まず独立することを想像してみてください。独立する段階で一番大切になることは何ですか? それはお金を稼いで生きていくということです。ではどうすればお金を稼げるのか? それは商品を売ることです。では何を売りますか? ここが非常に大切で、商品とするものはあくまでも「専門性」以外にはないのです。マネジメントも専門性に変えてしまえば商品になりますが、マネジメントそれ自体はお金を生み出すものではないのです。ここが本当に難しく多くの経営者が陥ってしまう罠なのです。

海外に駐在していると、他社の駐在員とマネジメントの重要性について話し合うことが多いです。そして、その会話の中でマネジメントが重要であり、業務が上手くまわらないのはマネジメントが上手くいってないからだという認識を持つようになります。その様に刷り込まれていきます。ただ、製造業と我々会計事務所ではその商品が大きく違います。製造業は日本の技術(つまり自分たちが過去に経験してきた技術)を商品としますが、我々会計事務所は所在地国の技術を商品としなくてはならないのです。日本の技術を商品とする場合、専門性(過去の経験)は既に担保されているのですが、所在地国の技術を商品とする場合には、その専門性は一つも担保されておりません。専門性がなければ、独立や海外で成功することは非常に難しいのが現実です。専門性を持つこと、一つにこれが基本だと私は考えています。

ただし、専門性が無くても成功する場合があります。それは専門性を他者に移譲する場合です。専門性を切り出して外注にだす場合のことを考えてみることにします。この場合は、専門性を切り離して考えられるために、専門性が無くてもビジネスは成り立ちます。ただし、当社にチェック機能は存在しないために成果物に存在するリスクをどう取り扱うかが課題となります。ただでさえ外注を使い割高な料金設定にならざるを得ないのに、リスクまで料金に組み込んでしまったら、まず受注ができません(競合他社がいなければ別ですが)。つまり外注を使う場合には、専門性ではなく、価格設定とサービス提供範囲、リスクの管理等に関し最善を導ける交渉力・営業力が必要となるのです。また、お客さんの要望を正確にとらえ、それを形にして外注先に正確に伝えられる語学力(ビジネスレベル)と構成力(これは現地国における専門性はいざ知らず、最低でも日本での専門的な経験が無ければお客さんの要望を形にすることができません。)も併せて必要となります。この場合の基本は営業力と語学力となり、これも基本の1つだと考えていす。専門性を切り離すと言いましたが、言ってしまえば営業力も語学力も我々が持つべき専門性の一形態に他なりません。

ビジネスの形態によって必要となる専門性は変わりますが、どの様な会社でも専門性が無くビジネスが成功することは絶対にありません。これを認識し、自分のビジネスに必要な専門性が何なのかを考えないのであれば残念ながら海外で成功する訳はありません。これらの基本(専門性)は本当に大切です。「自分はどの様な専門家になるか」と決めることがビジネスの基本であり、最初にやるべき事だと私は考えます。専門性を、自分の核を作ってしまえばそう簡単には人は折れません。まずは自分の足で立つこと、海外でこれができなければすぐに撤退を余儀なくされます。

私自身、日本人は勤勉だとは思いますが、その勤勉さが良い方向に向かっているとは全く思っていません。確かにスキルアップの為に時間を割く方は多いですが、これが、どうしても時間の浪費に思えて仕方ありません。これはおそらく、その日本人のスキルアップが何の為に行われているかが、私自身には全く見えてこないためだと思います。やはり日本人は満たされすぎてしまったのでしょう。日本人は生きる為に仕事をしなくなり、車や洋服等のステータスの為にも仕事をしなくなりました。果たしてこれは良いことなのでしょうか?

メキシコに来てみると、皆生きる為、家族を守る為、社会的ステータスの為に常に上を目指しています。常に金を稼ごうとしています(金を稼ぐ極端な例を言いますと、「勝手に車のフロントガラスを拭いて、拭いたのだから金をくれ」や「レストランに勝手に入ってきて強引に雑貨を売り始める」そんな具合です。皆生きる為に必死になっています)。ラテンの特徴として不真面目で怠惰で努力嫌いではありますが、常に上を目指しています。はっきり言って日本人の方が自己のスキルアップの為に使う時間は格段に多いですし、格段に真面目ですが、それでも今後発展する国はどちらかと聞かれると私はメキシコと答えてしまいます。日本が戦後世界第2位の経済大国に上りつめた事は、当時の日本には今の発展途上国において感じられる熱気と日本人特有の勤勉さを併せ持っていた為、つまり目的と手段がしっかりと絡み合っていた為でしょう。勤勉であることはあくまでも手段であり、手段には効率性の追求ということにしか議論の余地がありません。

独立する、また、海外で成功するためには、自社が会社運営のどこのフェーズにいて、何をするべきなのかを認識する必要があります。設立初期については、業務マネジメント(ミドルマネジメントの一機能)と専門性だけを持っていれば良く、トップマネジメントの知識はほとんどいりません。売上があがると同時に自分の下に人を雇います。1人、2人、3人と。ただこの時点でも業務マネジメントと専門性だけで問題ありません。この時点で必要な事は、自信の知識(専門性)の深堀りです、この時点では組織を作る事を考える必要はありません。自分の知識の専門性が高ければ高い程に売上があがり、売上高に応じて勝手に組織はできていくのですから。ではどの時点でトップマネジメントの能力が必要になるのでしょうか。それは、業務が自分の手から離れた瞬間・自分自身で直接管理することができなくなった瞬間からです。この状況となった段階で更に組織をでかくするためには、トップマネジメントは全ての業務を自分の手から離す為にはどうすれば良いかを考えなくてはなりません。この時おそらく多くの場合には売上は減ることとなるでしょう。上記で経営者が陥る罠と言ったのは、この売上が減少する事象を甘受し、組織を作る事だけに取り組める社長は多くは無いと思ったためです。売上が減少する事を甘んじて受け入れる、自分の命を他人に預けて戦場に出るような感覚に襲われる事でしょう(ただ実際に売上を減少させるような凡庸な社長ではいけませんが、あくまでもそのような感覚です)。上に立つ程忙しくなる社長はミドルマネジメントをしており、上に立つ程暇になる社長はトップマネジメントをしています。トップマネジメントの仕事は意思決定、5秒で判断できる仕事ばかりです。仕事の全てが5秒で片付けば、一日仕事したとしても10分です。まぁ言ってしまえば暇ですね。その為に多くのトップマネジメントはこの暇な時間を人との交流に使っているのです。

弊社の社員の週報で印象に残ったものがありました。その内容は40歳以降の他者との交わりについてであり、「実力が拮抗してくる40歳以降は仕事以外の場で本音を探るようになった。」ととある方から聞いたそうです。これが凄く心に響き、いろいろと考えるきっかけとなりました。そこで、まず本音とは何かを考える為に、「真意(本音と意義)」に関して先週週報を提出し、そして今週は実力が拮抗してくる40歳以降に関して週報を利用して考えました。私は、40歳以上は実力が拮抗してくるのではなく、一般的な会社では40歳を契機に仕事の質が変わるのだと考えています。40歳を超えて管理職になれば、意思決定を行うことが仕事になります。これは専門性を競っていた20代~30代からマネジメントを競う40代以降への突入であります。ただし前述の通り、マネジメントはそれ自体がお金を生み出すものではりませんので、他者との比較可能性が専門性に比較し著しく劣ります。そのために他者との差が一目には分からなくなり、この「とある方」は実力が拮抗してくるという表現を使ったのだと私は考えています。

管理職となり、意思決定を行うようになった。がむしゃらに「追求」していた時代から、適切な「決定」をおこなう時代となった。では、意思決定(適切な「決定」)を仕事とする上で一番必要な要素とは、何だと思いますか?

そう。それは「情報」です。

だから仕事の仕方までも変わるのですね。

情報は40歳以上だから必要なのではなく、意思決定を行う者のために必要なのです。そのため、社長は年齢に関係なく情報を集めるのだと思います。多くの情報の下の意思決定が、組織を作っていくのです。社長は多くの情報を集め、適切に意思決定を行い、組織をよりよい方向に導いていかなければなりません。そう、決して組織が途中で止まらないように。

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