執筆者:袖山 大輝(東京コンサルティングファーム メキシコ拠点)
東京コンサルティンググループメキシコ拠点の袖山です。メキシコに駐在し、日系製造業の税務と通関の実務を日々支援しています。
10月13日の朝、自動車関連の部品の関税がゼロになる可能性というニュースが入りました。
免除の対象は、保税蔵置の認可を持つ完成車メーカーが、自動車の組立に使う部品を特別な関税番号9803.00.01で輸入する場合に限られます。部品メーカーの輸入がすべて無税になるわけではありません(出所:連邦官報(DOF)2026年10月13日「輸出入一般税法の関税率表を改正する政令」)。
本記事では、政令の本文を基に、免除の条件と範囲を整理したうえで、日系企業にとっての影響と今後確認すべき点を解説します。
1. 関税番号9803.00.01の輸入関税が10%から免除に変わりました
【TIGIEとは】 TIGIE(Tarifa de la Ley de los Impuestos Generales de Importación y de Exportación、輸出入一般税法の関税率表)とは、メキシコに輸出入される物品ごとの関税番号と税率を定めた表を指します。
2026年10月13日の官報に掲載された大統領令により、TIGIEの関税番号9803.00.01「自動車組立用の部品」の輸入関税が、これまでの10%から免除に改められました(出所:DOF 2026年10月13日、同政令の前文と本文)。
政令は掲載の翌日に施行されるため、免除は2026年10月14日から5年間適用されます(出所:同政令の経過規定)。輸出関税の欄も免除と表示されていますが、実務上の意味が大きいのは輸入関税の免除です。
【関税番号9803.00.01とは】 関税番号9803.00.01とは、TIGIEの第98類(特別な取引のための関税番号)に置かれた、自動車の組立に使う部品をまとめて分類するための番号を指します。部品ごとの本来の関税番号とは別に、条件を満たす場合に限って使える特別な番号です。
2. 免除を受けられるのは保税蔵置の認可を持つ完成車メーカーです
政令は、この関税番号を使える企業を、次の2つの条件を満たす完成車メーカーに限定しています(出所:DOF 2026年10月13日、同政令の本文)。
- 関税法(Ley Aduanera)に基づき、車両の組立・製造のための保税蔵置の認可を受けていること
- 経済省(Secretaría de Economía)が定める指針に従うこと
【保税蔵置(depósito fiscal)とは】 保税蔵置とは、輸入した物品を税関の管理下に置き、関税などの納付を先送りできる制度を指します。完成車メーカー向けの保税蔵置は、関税法第121条第IV号に基づき、メキシコ関税庁(ANAM)が認可しています(出所:ANAM「完成車メーカー向け保税蔵置の認可と延長」)。
この2つの条件から、部品メーカーが自社で部品を輸入する場合や、保税蔵置の認可を持たない企業が輸入する場合は、今回の免除の対象外と考えられます。
また、経済省の指針は、10月13日時点ではまだ公表されていません。対象となる部品の範囲や手続きの細部は、指針の公表を待って確認する必要があります。
3. 政府のねらいは新しい組立ラインの誘致です
政令の前文は、今回の措置の目的を次のように説明しています(出所:DOF 2026年10月13日、同政令の前文)。
- 政府の産業振興計画「Plan México」の一環として、新しい車両の生産ラインと企業の移転を呼び込みます。
- 10%の関税が、小型車の組立、特に部品を段階的に現地化していく組立方式を始める際の妨げになり得ると判断しています。
- 免除によって立ち上げ費用と運営費用を下げ、雇用創出、技術移転、国内の部品調達網の強化につなげます。
【Plan Méxicoとは】 Plan México(プラン・メヒコ)とは、メキシコ政府が進める産業振興計画で、国内での生産と部品の現地調達を増やし、輸入品を国産品に置き換えることを目指すものを指します。
前文の内容からは、すでに大規模な一貫生産を行っている既存の完成車メーカーよりも、まず組立から始めて段階的に現地生産を増やす新規の進出企業を主に想定していると読み取れます。
4. 日系企業への影響は立場によって異なります
政令は特定の国の企業を対象にしていませんが、日系企業への影響は、事業の立場によって次のように分かれると考えられます。
完成車メーカーの場合
保税蔵置の認可をすでに持っている場合は、経済省の指針が公表された段階で、今回の関税番号を使う方が有利かどうかを検討する価値があります。ただし、すでに他の優遇制度で低い税率を適用している場合は、手続きの負担を含めて比較する必要があります。
部品メーカー(サプライヤー)の場合
自社の輸入には直接の影響はないと考えられます。一方で、政令の目的が国内での部品調達の強化にあることから、新たに進出する組立メーカーが現地で部品の調達先を探す可能性があります。新しい取引先の開拓につながる一方、国内市場での車両の競争が強まる可能性もあると推測されます。
物流・倉庫会社の場合
保税蔵置を使った部品の輸入が増えれば、通関や保税倉庫の管理の需要が高まる可能性があります。
いずれの立場でも、経済省の指針の内容によって影響の大きさが変わるため、公表後に改めて確認することをおすすめします。
よくある質問
Q1. 自動車部品の輸入関税はすべてゼロになりましたか。
なっていません。免除されるのは、保税蔵置の認可を持つ完成車メーカーが、組立用の部品を関税番号9803.00.01で輸入する場合に限られます。部品ごとの本来の関税番号の税率は変わっていません(出所:DOF 2026年10月13日、同政令の本文)。
Q2. 免除はいつからいつまでですか。
2026年10月14日から5年間です。政令は掲載の翌日に施行され、施行日から5年間有効とされています(出所:同政令の経過規定)。
Q3. 部品メーカーが自社で輸入する場合も対象になりますか。
原則として対象外と考えられます。政令は、利用できる企業を、車両の組立・製造のための保税蔵置の認可を持つ完成車メーカーに限定しているためです(出所:同政令の本文)。
Q4. 免除を受けるために何をすればよいですか。
関税法第121条第IV号に基づく保税蔵置の認可をANAMから受けたうえで、経済省が定める指針に従う必要があります。指針は10月13日時点で未公表のため、公表され次第、手続きを確認することをおすすめします(出所:同政令の本文、ANAM公式ページ)。
まとめ
冒頭の「うちの輸入も対象になりますか」というご質問にお答えします。保税蔵置の認可を持つ完成車メーカーであれば対象になり得ますが、それ以外の企業の輸入は原則として対象外です。ただし、新しい組立ラインの誘致という政策のねらいを踏まえると、部品メーカーや物流会社にとっても、取引先の広がりと競争環境の変化の両面で影響が出る可能性があります。
今後は、経済省の指針で対象となる部品の範囲と手続きが示される見込みです。指針が公表された際は、改めて本ブログで解説します。
関税番号の確認、保税蔵置の認可、輸入コストの試算について、ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
株式会社東京コンサルティングファーム メキシコ拠点 袖山