良い売上アップと悪い売上アップの違いとは?

こんにちは
東京コンサルティングファームの大橋 聖也です。

​2016年よりフィリピンに赴任し、ASEAN拠点を中心に日系企業の海外ビジネスの支援をさせて頂いてます。

 

【1分でわかる海外子会社マネジメントのイロハ】

No.8<良い売上アップと悪い売上アップの違いとは?>

 

近年の海外子会社の役割は、機能型のコストダウンから地産地消型の収益アップへと変化しています。

それ故、現地の海外拠点長やナショナルマネージャーが経営者思考を持って、理念・ビジョンの実現に向けて、財務・マーケティング・生産性・組織作りを戦略的に考え、実践することが求められます。

 

では、海外子会社の成長を図る指標とは、何でしょうか。
それは、売上が伸びているかです。

実は、売上の増加には、良い売上アップと悪い売上アップの2種類あることをご存知でしょうか。

 

この違いは、利益が増えているかどうかです。

多くの企業が組織成長を目指すあまり、「売上が増えれば、利益も増える」という錯覚から売上至上主義に陥り、増収減益(=悪い売上アップ)という結果を招いています。

 

ヤマダ電機でさえも、2013年に売上高100億近く増収する一方で、営業利益のマイナスを経験しています。

この現象は特に、海外子会社において、売上アップに注力するあまり、利益率が低い又は低くなっている海外拠点が目立ちます。

  • 「悪い売上アップ」とは、売上が伸びて利益が増えないことです。
  • 「良い売上アップ」とは、売上も利益も上げられることです。

では、なぜ悪い売上アップを引き起こしてしまうのか。

それは、外的要因と内的要因の2つあります。
外的要因は、日本企業が成長した時代背景・外部環境の変化、つまり人口動態・IT化・グローバル化によるものです。

モノを作れば売れるという高度経済成長は終わり、少子高齢化・人口減少に伴い、国内での販売需要は下がり、IT化・グローバル化が人・モノ・金・情報の移動をボーダレスな世界を促進し、機械に取って代わる、
かつ異業種からの参入が容易となるなど、商品・サービスの価格競争が急激に激しく進んでいます。

内的要因は、営業マンや工場長だけでなく経営陣の「品質が高ければ売れる、安くすれば売れる」という思い込みです。

この問題の本質は、販売戦略の欠如と自社の商品・サービスに自信がないことが原因です。

この状態の中で海外子会社が手を打つべき解決方法の3つのうち、今回はその一つをご紹介します。
(次回は、「あるべき価格設定方法」と「生産性を4倍にするメソッド」について触れていきます。)

一つ目は、「経営数字を見方・活かし方」を知ることです。

 

➀CVP分岐の罠

経営数字を考えるとき、損益分岐点(CVP)分析を使って、どれくらい売上を上げれば、利益が稼げるという損益分岐点売上高をシミュレーションしている企業が多いでしょう。

しかし、実際のところ、想定した売上高を達成しても、利益が出ないケースがほとんどではないでしょうか。

 

これが、損益分岐点分析の罠です。

 

損益分岐点分析は、「販売単価が一定」であることを大前提としているからです。
一方で、ビジネスの現場では、標準単価はあっても、値引き対応したりとその通り売れるとは限らないのです。

この大前提を理解した上で、販売戦略・価格戦略の視点から損益分岐点のシミュレーションをする必要があります。

 

②値下げの限度額を理解する

経営数字を知らないと、どれだけ努力しても、どれだけ売上を伸ばしても、儲け(=利益)が増えません。

頑張りが儲けに繋がるには、値下げの下限値を知っておくことが重要です。
利益を出すには、商品・サービスにおける1個当たりの粗利額の積み重ねです。

 

であれば、値下げの限度額は、1個当たりの変動費を基準に考える必要があります。
どれだけ一生懸命に販売しても、販売価格が変動費を下回っては利益は出ません。

自社の商品・サービスの1個当たり変動費・粗利額を把握し、販売単価だけでなく値引きの限度額を決定する必要があります。

 

③良い値下げの条件

値下げ自体が悪いわけではありません。
値下げによって、売上・利益共に増える、良い値下げもあります。

その例として、マクドナルドが1994年に実施した100円バーガーです。

当時、210円だったハンバーガーを100円にまで値下げしたことで、その結果、売上アップだけでなく、利益は5倍近くまで増やすことが出来ました。

この成功は、当時の経済情勢の影響もあるとは言え、戦略的な値下げと言えます。
なぜなら、マクドナルドでは、値下げをしても利益が出る2つ条件を満たしていたからです。

一つが、変動費が低い商品・サービスであること
もう一つが、値下げによって販売量が増え、1個当たりの固定費が下がること

自社商品の1個当たりコストや利益を把握し、経済情勢を考慮し、価格弾力性を狙った半額以下の価格設定をすることで、値下げ戦略によって良い売上アップへ繋げています。

これまでのようなコストダウン重視の現場から付加価値重視のマネジメントへの転換が求められています。

 

「悪い売上アップ」という事態を避け、努力が儲けに繋がるよう、海外子会社マネジメントを任せられる現地の責任者は、日々の販売戦略や営業活動をする上で、経営数字を理解し、活かすことが必須となります。

 

経営数字の見方・活かし方から人材育成まで、海外子会社マネジメントにお困りの方は、お気軽にご相談・ご連絡お待ちしております。

今週もどうぞよろしくお願い致します。

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