なぜ社員は安易な価格設定をしてしまうのか?

「値決めは経営」という稲盛和夫氏の言葉にあるように、価格設定が経営の重要課題であることは間違いありません。

しかし、この価格設定の裁量を営業部門の社員に与えて「なんでこんな値付けをしたのか?」と思われた事のある経営者の方は多いのではないでしょうか。

 

この「なんでこんな?」という言葉の裏側には、「なんでもっとよく考えて値付けをしないのか?」という経営者と社員の間の“思考ギャップ”に対するストレスが込められているかと思います。

このギャップの大きな要因として、経営者と社員の見ている“時間軸”のズレがあります。

 

社員側としては、当然受注という成果を得たい、という思いと「損をしてはいけない」という二つの狭間で、結果的に「(損が出ない範囲で)値引きもやむなし」という意思決定をすることが多々あります。

 

“今(現在)の損得” で考えると、このような意思決定も行われて然りです。
目の前の成果を得るために、戦術的に勝ちを目指す、と。

その結果の多くが、経営者側から見た “安易な値引き”という形で現れます。

 

一方で、経営者は “将来(未来)の損得” で物事を考え、特に “機会損失” という言葉には異常なほどに敏感な人種と言えます。

安易な値引きは、将来の会社の利益を逸する行為だと経営者は理解していても、なかなか社員側はそれを理解、将来を想像することが出来ません。

 

この“将来の損得”は、頭の中で想像することでしか見えてきません。
そして、この想像をするためには“知識”が必要となります。

では、何の知識が必要でしょうか。

 

お客様は、当社の商品・サービスを「必要かどうか?」と、そして「必要ならいくらが妥当か」という判断を常に行っています。
この二つの判断には“経営上”という前提があります。

だからこそ、相手のビジネス、経営を理解することが結果的に当社のビジネスにも良い影響が出る、という点で“値決めは経営”という事に繋がるのだと思います。

 


増田 鉄矢

東京コンサルティンググループ グループCOO
株式会社東京コンサルティングファーム 代表取締役社長
東京税理士法人 代表社員

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