今となっては世間の一般常識となったテレワークだが、これによって生まれた弊害も多くある。
その1つに”管理の目が行き届かない”という問題が挙げられる。
当然、PCのカメラ越しに監視するなんてことは不可能なので物理的な距離が生まれたことで、目が行き届かなくなるのは必然の結果である。
そのために例えば定期的に(1時間おきなど)上司へと業務報告をすることで管理機能を働かせている企業も少なからずある。
しかし、これらはあくまでも一例であり、本質ではない。
”テレワークの普及”が生んだものは物理的な距離でも、新しい業務管理方法でもない。
「コミュニケーションの在り方の変化」を生んだのだ。
対面ではなく画面越しのコミュニケーション、距離が離れていても適切に言語と感情を伝えるためのツールが多く作られた。
そんな「コミュニケーションの在り方の変化」が起きた時代における”コミュニケーションの留意事項”は一体何か。
▼相互認知の醸成
現代のコミュニケーションにおいて留意すべきことは3つある。
自分が何を伝え、相手が何を伝えようとしているか、汲み取るべきこと、ともいえるかも知れない。
- 行動 - 助け合い、報告、連絡
- 感情 - 信頼、ロイヤリティ
- 認知 - お互いの考えや想いの理解
組織で働く上で発生する、これらの留意事項のなかで最も気を付けるべきは③認知である。
これは「Aさんはこれを進めているから、私はこれを進めよう」といった、相手の考えや意図、想いを相互に”認知”することだ。
これまで物理的に、相手の表情や動きを視認していたために”認知”できていたものが、物理的な距離の発生に伴い、”認知”できなくなってしまった。
「相互に”認知”できなくなってしまったこと」
これこそが現代の新しいコミュニケーションにおいてリーダーが最も留意すべき事項である。
では、ネット上の会話でこういった部分まで意識的に汲み取れるようにするために、組織のリーダーは何をする必要があるか、どう働きかける必要があるか。
▼求められるリーダー像
組織のリーダーの性質は大きく区分すると2つである。
(1) 業務の遂行に関わるリーダー
⇒戦略や戦術の立案、実行管理
(2) 人間関係を円滑にする行動をとるリーダー
⇒人財をまとめ上げ、人間関係への目配りやケア
現代において圧倒的に少なく、且つ、求められるのは間違いなく(2)のリーダー像である。
当然、(1)のリーダーが不要という訳ではない。
しかし、(1)の能力を兼ね備えたリーダーが数多く存在するなかで
どれだけのリーダーが、組織の感情を理解し、働きかけ、信頼関係の構築を促すための環境整備をしているだろうか。
私は、どちらかといえば共感能力や感情知性が高く、「上から引っ張り上げる」というよりかは「下から押し上げる」というアプローチが専ら得意である。
そのせいもあってか、人間関係を繋げることを得意としており、相手の感情に対して的確な言葉とリアクションをすることには自信がある。
これは、今後こういったリーダーシップが必要になるから学んでいこう、とも
今僕たちが学んでいるリーダーシップが不要になるから勉強するのを辞めよう、とか
そういった話ではない。
役割意識の話である。
少なくとも現代のコミュニケーションというテーマにおいては
(2)のリーダーの需要が高まることは間違いなく、しかも、この能力はどの組織においても必要となるリーダーシップだから自分の今の組織での役割と照らし合わせながら、”どのように”その役割を果たしていくのかを考えてみてほしい。
ちなみに僕が相手の感情を察知して自分の言葉をぶつけるとき、そこには当然のこと感情を乗せるし、その感情をどのように表現するか、についてはとかく注意を払うことにしている。
▼”洗練された感情”をぶつける
思ったままに感情を相手にぶつけるのは、有り体に言えば「幼稚」でしかない。
僕たち大人が、組織の中で適切にコミュニケーションを図りたいのであれば言葉に乗せる感情を絞り、余計なものはそぎ落とし、洗練しなければならない。
僕の場合、基本は”喜”の感情の1チャンネルに絞ることを心掛けている。
ちなみに、当社の代表は基本的に”怒”と”楽”の2チャンネルでしか感情表現をしない。
これは別に、それ以外の感情を殺しているわけでもなければ、これらの感情以外使えないというわけでもない。
(当然、人間の感情は数え切れないほどあるので。)
”感情を洗練する”というのは自分のパーソナリティ(キャラクター)と掛け合わせたときに最も伝達力を最大化してくれる感情を言葉に乗せることだ。
そのために不必要な感情は表現せず、当然のこと、”感情のままに”なんてことは有り得ない。
人が人を「信頼できる」と判断する要素の一つはその人に”一貫性”があるか、である。
”感情を洗練する”ということもある意味では自分という人間の一貫性を保ち、信頼される人間になるために必要であり
これが出来ないで、(2)のリーダー像を実現することは不可能に近いと考えている。