なぜ”改善”による成果が出づらいのか

”改善”という言葉を聞いて思いつくのは”トヨタ”ですが、

モノづくりの製造業以外でも”価値を生み出す“という観点から

学ぶべきところが大いにあると思います。

 

与える価値を大きくするために、一人一人の能力向上、

つまりは”技(知識・技術)”を高めていくというのは大前提ですが、

同時に”心(人間力)”も高めていかなければいけません。

 

技の部分については、技術革新により最先端機械が開発され

単純作業は人から機械へと自動化が進んでいます。

 

この技術というのも、メーカーであれば”製造技術”と”生産技術”の

二つがあり、例を挙げれば、”ハサミ”と”使い方”の関係になります。

・製造技術 ⇒ ハサミを使いどのように上手く(ムリ・ムラ・ムダなく)切るか

・生産技術 ⇒ 用途に合わせ、どのようなハサミがいいか(ハサミ自体の開発も含む)

 

ここでポイントになるのは、この二つには”順番”があるという事。

いくら生産技術が向上しても、そもそも製造技術が無ければ

意味が無くなってしまう、と。

 

では、”技術開発”というのは一体何のために行うものなのでしょうか?

 

企業活動として行うのであれば、必ず目的は”外”にあります。

「与えたものが得たもの」と考えれば、技術開発の目的は

外のお客様への提供価値を高めるための”手段”になります。

 

そして、同じ意味合いの価値を高めるという点で”改善”があります。

 

一言で”改善”と言っても、これにも色々と種類がありますが・・・

まずは、①作業改善。これは具体的な作業自体を変えていく、という事。

 

そして、作業改善を行っていくうちに、「この機械よりも別のものの方が

生産性、品質があがる」みたいな形で、②設備改善 に繋がってきます。

 

良く現場から出るのが「設備が悪い。最新のものに変えれば出来る」

という意見ですが、この前提として

作業改善 ⇒ 設備改善  という順番のルールがあります。

 

トヨタ流に言えば、「改善とは、現有の設備でもっとよいやり方を考える事」

とされており、今すぐやれること、工夫をこらすという”作業改善”を

やったうえでないと、仮に新しい設備を入れても上手く使っていくことが

できないだろう、と。

 

製造業ではなく”サービス業”で例えるなら、”設備=生産手段=人”となります。

 

どんなに人の能力を上げても、現場での作業レベルが高くなければ

アウトプットも上がっていきません。

いくら勉強をして知識を得ても、作業の効率自体が悪ければ、スピードも

クオリティも良くなっていきません。

蛇口をひねっても、蓋がされて水の量が制限されているような状態です。

 

この二つをやると、仕事の生産性、クオリティも上がるのですが・・・

 

ここまでは実は”個人レベル”の話であって、本当に作業のスピードと

クオリティを上げるのであれば、もう一段階上の改善が必要で、

これが ③工程改善 になります。

 

特にプロジェクト的な業務であれば、組織の中で複数の人、部署が

絡んでくるため、一つ一つの仕事、一人一人の能力が高まったとして

最高のスピード、クオリティにはならないのです。

 

スーパースターを集めたチームが、必ず優勝し続けるかと言えば

そうでないように、部分最適の総和が全体最適になるかというと、

そうでもありません。

 

「自分が勉強して能力を高め、自分の仕事の手順を変えれば、

全体のスピードが速くなり、クオリティも上がる。」

 

いうなれば、この”職人的思考”というものが、実は組織的な改善を

一番阻害する要素なのではないでしょうか。

 

ほとんどの組織で、社員側がこの勘違いをしてしまうことで、

・自分の能力高めればスピードもクオリティもあがる

⇒ 知識や技術が属人化する

⇒ 組織によるメリットが生まれづらくなる

⇒ 他人を巻き込めず、組織が大きくなっていかない

 

そう考えると、「改善が進まない」という会社のボトルネックは

実はこの個々人の”思い込み”が原因なのかもしれません。


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