経営は4つの視点で考えることが重要であり、その具体的な視点として、【財務の視点】、【顧客の視点】、【プロセスの視点】、【組織の視点】を順次説明していきます。前回までで、【財務の視点】の説明をしましたので、【顧客の視点】に移っていきたいと思います。
【顧客の視点】
- 社長は外を見ろ!
- 利益感度分析
- PPMとアンゾフマトリックス
- 海外進出か国内差別化か。
前回までに、下記のA.~E.であれば、どこに力を入れれば、最も敏感に(効率的に)経常利益が増加するだろうか、という命題から、その敏感な順(つまり感度が高い順)と、その簡単な順の説明をしました。
A.経費を削減しろ!
B.材料費を削れ!
C.販売量を増やせ!
D.商品・製品・サービス単価を上げて売れ!
E.残業代をカットしろ!ボーナスの支給はなし!人件費を削るために、解雇せよ!
最も敏感に経常利益を増すことができる順を示しておくと、
D.→C.→B.→A.E.となります。A.E.は両者を固定費という枠でとらえています。
そして、最も実施することが簡単な順を示しておくと、逆になります。
A.E.→B.→C.→D.となります。
前回までで、A.E.とBは説明しました。次はC.とD.を説明していきたいと思います。
このC.とD.に関しては、今までの費用を低減させるというところではなく、どうやって収益、つまりは売上を伸ばすことによって、利益にどのような感度をもって、影響するかの話になります。
まず売上を一言でとらえるのではなく、これも分解してみましょう。よく言われることは、「単価×数量(販売量)=売上」です。まさにD.とC.の話になります。ここに企業の営業戦略や販売戦略の話につながってくる部分となります。それはつまり、より広い視野で見ていくと、顧客創造や顧客のウォンツを探ることにもつながり、当社が何のために存在するのか、または、当社の目的が何であるかの追求にもつながります。つまりは、それは基本理念や経営理念の実現にもつながってくる部分になるのです。
少し、話が大きくなり過ぎましたので、戻しますと、なぜこのD.とC.が最も難度が高いか。それは、顧客に対してだからです。社内決裁で完了する固定費でもなく、当社の立場が優位にあるサプライヤーとの交渉でもない。現顧客に対してであり、また新たなまだ見ぬ潜在顧客に対しての販売交渉となるのです。これが簡単にできれば、トップラインがデザインできるようになり、利益に窮することは低くなります。これがなかなか難しいから、どの企業も悩むわけなのです。
まず、C.の販売量を増やそうと思えば、現顧客への特定商品の取引需要増加による追加販売もありますし、新たな商品・製品、サービスの追加販売ということも考えられるでしょう。
既存顧客の深堀、そして新規開拓といった言葉で表されますが、どの業種においても、やはり新規顧客の獲得というのが、より難しいのではないでしょうか。
D.については、既存顧客に現状の取引量を維持したまま、商品・製品、そしてサービス単価を上げるということになります。つまりは値上げです。これもまた、現状の提供価値以上のものを顧客に提供しているということがない限りは、交渉すら難しいでしょう。
これらの理由から、売上を上げるために販売量や取引量の増加と、単価の上昇は最も難易度が高いという結論になります。しかし、難しいが故に利益感度は高くなります。この理論的背景に関しては、また次回に回すとして、今回は最も難しいとされるD.の単価を上げるためにはどのようにすればよいかを最後に論じたいと思います。
これは、経営理念の実現にもかかわる話になってきます。そもそも基本理念で当社の存在意義や目的を明示し、経営理念や経営方針の策定、そしてそれが競合との差別化につながる部分が顕著にあると思います。
そして、ここにて「経営の体系図」の論拠が必要となってきます。
イ.基本理念・経営理念:その企業の存在意義と目的。
↓
ロ.ビジョン:上記の理念から落とし込み、ある時点でのこうありたいという姿。
↓
ハ.定性目標:こうありたいという姿になるためには社会や顧客に対して、どのような価値を提供するか。
↓
二.定量目標(予算):定性目標の価値を数量的なものに落とし込む。つまりはn年後の予算となる。短期の視点であれば、nは1~3、中長期の視点であれば、nは5~10となる。
↓
ホ.戦略・戦術:予算が決まれば、それを達成するための戦略や方向性が決まり、より個別具体的に戦略を落とし込んでいくと、戦術となる。
↓
ヘ.業務計画(アクションプラン):戦術までがあらわになると、部や課、もっと言うと社員それぞれの具体的な行動計画、つまりはアクションプランが決まる。
↓
ト.実行:アクションプランを日々の業務に落とし込む。
↓
チ.成果:明示され、合意された戦術やアクションプランを信じて行動することにより、社員の成果がより高まっていく。
となる。
この基本理念や経営理念とは、その企業の差別化の根底となり、それは例えば、「納期遵守」、「アフターサービスは他社よりも充実」、「値段の安さは業界一」、「製品の質は他社より高い」などの強みがあるはずで、それがあって、社員のアクションプランまで落とし込まれて、顧客満足度はより高まる。これが値上げのロジックとして必要とされるわけなのです。
しかし、これが簡単にできるわけはなく、企業努力が大いに現れるところなのです。
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株式会社東京コンサルティングファーム
橋口 敦史
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