『孫子』という書物があります。中国の春秋戦国時代に書かれたもので、主に軍事に関する内容が記されています。
この『孫子』は、今から2000年以上も前に書かれたにも関わらず、世界中に愛読者がいます。
内容を読むと、あまり具体的な話は書いておらず、ほとんどが一般論に終始しています。
例えば、「百戦百勝は善の善なる者に非ず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり。(百戦百勝は最上ではない。戦わずして勝つのが最上だ)」
「敵の来らざるを恃むことなく、吾が以って待つことあるを恃むなり(敵が来ないことをあてにするのではなく、いつ来ても準備が出来ていることをあてにすべき)」
なぜ『孫子』が2000年以上経った今でも世界中の人々に読まれ続けているかと言えば、それはむしろ、「一般論だから」でしょう。
そして、それは単なる一般論ではなく、深い人間洞察に裏打ちされた普遍的な「原理・原則(principle)」を説いているからに他なりません。
私たちは本から「知識」を得ようと躍起になり過ぎているように思えます。
しかし、ギリギリの状況で判断に迷ったとき、決断を下さなければならないとき、そういう時ほど知識ではなく、原理・原則こそが解決の筋道を与えてくれます。
古典を読む理由はそこにあって、長い時代の淘汰から生き残った原理・原則を学ぶことに他なりません。
専門書は確かに重要ですが、時には自己のエッセンスとなるような読書を心がけていきたいものです。