前回、インドネシアにおける労務リスクを回避する方法の一つとして雇用契約書の作成に触れた。南国気質とか、インドネシアから想起される、もっちりしたイメージからはあまり想像がつかないかもしれないが、インドネシアは言ってみれば契約社会である。
実際に、雇用契約という局面のみならず、あらゆる局面で ”Agreement” の作成が求められる。人事労務担当者だけでなく、法務担当者も特に、業務提携、商取引等のあらゆる局面において、MOUが求められることを一つ心得ておくべきだろう。
さて、インドネシアの雇用契約書には何を記載しておくべきだろうか。2003年第13号労働法第54条によると以下の項目を盛り込むべきと記載されている。
①会社名、所在地、業種
②労働者の氏名、性別、年齢、住所
③労働者の役職名または職務
④就業場所
⑤賃金額ならびに支給方法
⑥就業条件
⑦契約開始時期ならびに契約期間
⑧契約作成場所および期日
⑨両者のサイン
日本の労務担当者からすれば、割とスタンダードと言えるだろう。⑧くらいが日本の労務慣習上と違うところであろうか。
作成方法としては、インドネシア語と英語の両方を作成して両者の整合性を確認しておくことが重要である。両者に相違が有る場合は、インドネシア語の契約書の記載の方が正しいものと判断されるためである。
また、有期雇用契約を締結する場合は、インドネシア語での雇用契約の作成が必要である(同法第57条)。このインドネシア語での作成がない場合、仮に英語で有期雇用契約書を作成していても、期間の定めのない雇用契約とみなされるので注意が必要である。
いずれにしても、その会社の特有の事情も考慮して、雇用契約書のレビューを弁護士に頼むことも一つ重要であると言えるだろう。