2億4000万以上の人口と天然資源を抱え、国際協力銀行の「製造業にとって中期的に投資有望な地域」アンケート調査においても常にトップ10入り、常に「潜在的な」市場として注目をされ続けてきたインドネシアは、2009年の日本からの投資件数124件から、2010年には394件と大幅更新、震災直後の円高とタイが洪水に見舞われた2011年は、468件と過去最高を更新、2012年もその勢いは衰えず、405件、2013年の1Qまでで168件と引き続きインドネシアへの多くの投資、注目が集まっており(BKPM資料より)、「潜在的な」市場からチャイナプラス1の筆頭、有力な「投資候補」として認知をされてきた感がある。
写真1 急速に発展するジャカルタ(平屋建ての一部に高層ビルがそびえる)
果たして、今後もここ数年の勢いそのままに、インドネシアは新興国から、一気に成長軌道を駆け抜けていくのであろうか。BKPMの長官バスリ氏によれば、「2013年の1Qは前年比30%増の9.6億USDであったが、残念ながらこれは長くは続かない。2013年4Qは前年比10%から20%の増加にとどまる見通しである。背景には外国からの初期投資の減少および、世界的な景気の回復基調」とし、状況を静観する声が多数を占める。
バスリ氏は続けて「インドネシアへの投資を今後も集めていくためには、ネガティブリストの改定や、シンプルな行政を含んだ、より先進的な改善が必要」と指摘をしている。
上記のように、インドネシアの投資を阻害する原因に、非効率で不透明な行政、投資を阻害する法律や規制、投資を下支えするための、道路、輸送網が脆弱と、ハード、ソフト面でのインフラがタイ、シンガポールと比べると圧倒的に見劣りすると言わざるを得ない。
例えば、外国企業の注目が急速に集まった2011年の12月には、最低資本金が改定され、従前は100.000USDだった最低本金規制が300.000USDに引き上げられ特にサービス業の進出が厳しくなった。そのほか、内国産業を保護目的とした輸入ライセンスの改定が繰り返され、投資ムードに水を差すような場当たり的な政策が目立つこととなった。
ハードインフラ整備も遅々として進んでいないのが現状である。日増しにひどくなる渋滞は、雨が降ると一時間で車で100メートも前進できないほどのものだが、ハードインフラの整備のためにMRTの計画や道路拡張計画も土地収用などの問題も絡んでなかなか進んでいない。先日も、ジャカルタの主要高架道路建設を巡り、不正が発覚しおよそ95%進んだ工事がとん挫している状況でもある。
1月に起きたジャカルタ市内の洪水は記憶に新しい。ジャカルタ市内中心部がビル1階まで浸水する洪水に見舞われ、中心部の日系企業が被害を被る結果となった。
写真2 1月の洪水の様子
新興国であるからこそ、今後有望であるとともに、リスクを抱えるのも事実である。特にインドネシアにおいては上記のインフラ面の整備は、投資誘致のためのアキレス腱ともなりかねない。ジャカルタは昨年、知事が変わり、ジョコウィ新知事も公共交通機関の拡充を柱とするインフラ整備を政策の最重要課題と位置づけ、2014年の大統領選もインフラ整備が一つの争点となっている。今後もインドネシアにとって上記の課題の克服がさらなる発展への大きな争点となってくると思われる。
インドネシア現地法人代表
社会保険労務士 加藤大和