こんにちは、中国・上海の田中勇です。
本日は現地法人における組織体制について、お話しします。
経営戦略の構成要素は「領域」「資源展開」「競争優位」「シナジー」で構成されます。さらに、そのうちの「資源展開」は「人」「もの」「金」に分けられます。(最近では、「情報」も重要な項目として扱われております)中国では、この「人」の使い方がうまくいかずに、経営戦略が思うように進まないことが多いです。なぜ、うまく進まないのか。そして、うまく進めるにはどのような組織体制にすればよいのか、をお伝えします。
実際、ほとんどの企業で中国人がすぐやめてしまうので困っているという話を聞きます。さらに、やめることを引き留めても、賃金値上げを要求してくる。賃上げを受け入れてもある程度時間がたつとまたやめたいと言ってくるそうです。これらの不都合は日系企業の現地化が遅れていることが主な原因です。つまり、中国人をトップに据え、人事権や財務権などのある程度の権限を中国人に任せることが重要なのです。そうすることで、「自分も頑張れば、トップになれる」といったような認識が中国人に芽生え、会社全体の士気が高まるのです。例えば、中国事業でうまくいっているイトーヨーカ堂、コマツ、SBIでは、中国現地法人のトップを現地スタッフに任せております。では、なぜ、多くの日系企業は現地化が遅れているのでしょうか。
現地化が遅れている原因は主に3つあります。1つ目は、組織体制が未完成であることです。しっかりした内部統制ができていないため、牽制機能が弱くなってしまい、中国人スタッフに任せられないのです。2つ目は、中国人社員自身の企業文化の理解が低いことです。いくら優秀でも自社の文化理解が低い社員には、任せられないという問題があります。3つ目は、人材の教育には時間がかかるということです。優秀な営業人財を育てるにしても、3年は必要だと考えられます。時間をかけてでも教育する必要があるのにも関わらず、人事については短期志向の企業が多くあるのです。
以上のことから、中国事業において、まずは組織運用方針を固め、組織体制をしっかり構築することが重要です。さらに、具体的に言えば、中国人スタッフに与える権限を明確にし、日本の本社への勤務を一定期間強制的に設定すること等です。また、駐在員の役割についても明確にする必要があります。最前線で動く一社員としてではなく、中国人の価値観の尊重・業務監督・本社の意向の伝道に集中徹底することなどが重要になると思います。あくまで、中国マーケットについては中国人が詳しく、最も効果的・効率的に動けるからです。現地スタッフに主体的に動いてもらい、それらの活動を駐在員含む日本側が管理監督するのが理想的な組織体制と言えます。
以上です。