こんにちは、中国・上海の三輪常敬です。
労働人事争議仲裁案件処理規則は2017年2月から3月にかけて実施された意見募集を経て、2009年の施行以降初めての改正が行われました。改正された労働人事争議仲裁案件処理規則は2017年7月1日から施行されております。
労働人事争議仲裁案件処理規則の主な変更点は下記のとおりです。
① 労働争議仲裁の管轄地を一層の明確化
1) 実務において雇用企業の所在地と登録登記地が異なる状況があるため、本規則では、「雇用企業の主たる事務所の所在地を雇用企業の所在地として仲裁管轄を行うことができる」ことを追加しています。
2) 複数の方法により管轄地を選択できるという管轄規則を明確にしています。つまり、当事者双方がそれぞれ労働契約履行地と雇用企業所在地の仲裁委員会に対し仲裁を申し立てた場合は、労働契約履行地の仲裁委員会が管轄し、労働契約履行地が複数である場合は、最初に仲裁申立を受理した仲裁委員会が管轄することになります。また、労働契約履行地が不明確である場合は、雇用企業所在地の仲裁委員会が管轄することになります。
②人民法院の仲裁管轄異議申立に対する管轄の取消
当事者が管轄に対して異議を申し立てた場合は、仲裁委員会が審査を行うことになります。異議申立が成り立つ場合は、事件は移送されますが、異議申立が成り立たない場合には、書面による異議申立棄却決定が下されます。
③立証期間延長の申請に関する規定の追加
当事者は仲裁委員会に対し立証期間の延長を申請することができます。
④「同一事件について再び審理しない」という規定の追加
仲裁委員会が法に従い不受理通知書を下した場合や、事件が仲裁、訴訟中にある場合、又は調停書、裁決書及び判決書の法的効力が生じた場合に、申請者が同一の事実、理由及び仲裁請求に基づいて再び仲裁を申立っても、受理されないことになります。
⑤事件審理を中止する事由の追加
主に双方主体の民事権利能力が正常に行使できない場合、不可抗力による場合、その他の案件の審理結果を根拠とする場合が挙げられております。
⑥簡易取扱手続の追加。
簡易取扱を適用する情状及び簡易取扱を適用しない情状、簡易取扱手続に関連するルールなどを明確になりました。
労働人事争議仲裁案件処理規則の改正は、労働契約法改正への布石を見ることもでき、今後の動向を注視する必要があります。