こんにちは、中国・上海の田中勇です。先日に引き続き、クロスボーダーM&Aに関わる税務処理についてお話します。
直接中国に関連しないと考えられる組織変更であっても、中国側で課税処理が行われることがあるため、慎重に対応する必要があります。例えば、下記図のような組織再編を行う際に税務処理はどのようになるか、という問い合わせを受けることがあります。
組織変更前においては、日本本社が日本に子会社2社を持っており(A社、B社)、その子会社A社・B社がそれぞれ中国子会社を持っています。変更処理としては、A社とB社を合併し、日本子会社A社を存続会社とすることを意味しております。
この場合、日本側と中国側でそれぞれに分けて考えて処理する必要があります。まず、日本側においては、的確組織再編規定が適用されるため、課税を繰り延べることができます。一方、中国側では、日本子会社B社(消滅会社)の売却益に対して企業所得税10%が課税されます。
ただし、以下の要件を満たす場合は、課税回避が可能です。(企業の再編業務にかかる企業所得税管理弁法)
①非居住者企業(B社)が、持分100%を直接保有する他の非居住者企業(A社)に対し、その所有する居住者企業の持ち分を譲渡すること
②組織変更前の非居住者企業と変更後の非居住者企業の譲渡所得源泉税の税負担に変更がないこと
③譲渡側の非居住者企業(B社)が、主管税務機関に対し3年以内に保有する譲受側の非居住者企業の持ち分を譲渡しない旨を書面で承諾していること
なお、実務上は上記の条件をすべて満たすことが、困難なケースが多く、処理手続き上でペンディング状態が長きます。そのため、最終的に課税処理を選択する企業がほとんどです。
以上