こんにちは、中国・上海の田中勇です。本日も中国Q&Aについてお話します。
Q.
「発票がなければ、会計税務の処理はできない」と会計担当から言われています。いわゆる発票主義での財務諸表ではなく、経営に使える財務諸表(発生主義で作られた財務諸表)を見たいのですが、何とかなりませんか。
A.
まず、会計と税務上を明確に分けて、会計税務処理を認識する必要があります。税務上は発票がなければ、処理(損金・益金計上)を行うことはできません。一方、会計上は、発票がなくとも、取引発生時に取引を認識することが可能です。
費用について言えば、例えば11月に100元(税込117元)の商品を仕入れ代金支払を行ったが、発票入手が12月になったとします。その場合、仕訳は下記の通りです。
11月:商品仕入れ、代金支払い。発票未入手。(仮払金等の仮勘定で増値税を認識します。)
商品 100 / 現預金 117
仮払金-増値税 17
12月:発票入手(仮勘定を未払税金勘定に戻します。)
未払税金-増値税 17 / 仮払金-増値税 17
なお、11月においては、日本式の請求書(通常日本で発行するような請求書)を証憑として、処理するのが一般的です。12月において、増値税の仕入控除認証を行えば、翌月以降の増値税申告上で仕入控除を行うことが可能になります。
一方、売上について言えば、例えば11月に100元(税込117元)の売上が発生したが発票発行せず、翌月の12月に売上発票を発行したとします。その場合、仕訳は下記の通りです。
11月:発票発行なしの売上発生(売上と未払税金‐増値税については、「発票無」という勘定を使います。)
売掛金 100 /売上‐発票無 100
未払税金‐増値税‐発票無 17
12月:発票発行(通常の売上勘定と未払税金勘定に戻します。)
売上‐発票無 100 /売上 100
未払税金‐増値税‐発票無 17 /未払税金‐増値税 17
11月に通常通りの売上計上仕訳の逆仕訳にして、数値をマイナスにさせる方法もあります。財務諸表に与える影響は通常の売上計上と同じですが、発票済売上と区分けすることができます。その後は、翌月12月に11月の逆仕訳を切り、通常通りの売上計上仕訳を切ります。
会計税務制度上は発生主義で処理するように要求されているのにかかわらず(会計法25条、企業所得税法実施条例9条等)、上記仕訳を理解し実践している会計担当者は多くありません。結果として、多くの会社で発票主義の会計処理が行われているのが現状です。背景としては、発票のない費用は損金できないという中国独特の処理、煩雑な処理を嫌がる会計担当者が多いこと等が考えられます。発票主義で作られた財務諸表は、経営者にとって非常に分かりにくく、経営の意思決定を助ける資料とは言えません。適時に正しい意思決定を行うには、発生主義によって作られた財務諸表が必要です。
以上です。
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