
こんにちは。
TCF(Thailand)の高橋です。
今回はタイの税務に関して第9回目です。
第9回はタイの個人所得税に関してみていきましょう。
②個人所得税
個人所得税の納税義務者は、タイ国内源泉所得において、居住者及び非居住者共に課税され、タイ国外源泉所得はタイ国内に持ち込んだ場合に居住者は課税し、非居住者は非課税となります。
※居住者とは、タイ国内に一時的または数度にわたり滞在し、滞在期間が課税年度内に合計180日に達する人物を指します。
また、個人所得税は、1月1日から12月31日までの暦年の課税所得に対し課税されます。
タイ国内源泉所得というのは、所得の受取地は関係ありませんので、タイ国内で勤務している者の給与を日本で支払ったからといって、国外源泉所得になるわけではありません。
一方、「非居住者」となった場合には、タイ国内源泉所得に対してのみ、タイにおいて課税されることになります。
180日以内の期間でタイへ出張する場合
Q:日本法人A社の従業員であるB氏は、タイへ3か月間出張することになりました。この間のB氏に対する給与は日本法人A社から支払われることになりますが、この場合、B氏の個人所得税をタイで申告する必要があるのでしょうか?
A:本ケースの場合、B氏は、タイに出張している期間は当然タイで就労することになりますので、仮に給与を日本法人A社から受け取ったとしても、これはタイ国内源泉所得となります。したがって、所得税法上の決まりに従えば、タイの所得税が課税されるはずです。
しかし、実際にはこのケースでは、B氏の所得に対してタイの所得税は課税されません。
なぜかというと日タイ租税条約に短期滞在者免税という制度が定められているためです。以下の3つの要件を満たす場合には、タイ国内源泉所得であってもタイでの所得税課税が免除されることになります。
①タイでの滞在期間が暦年ベースで合計180日を超えないこと
②報酬支払者である雇用主が日本の居住者であること
③日本で支払われる報酬等がタイ企業によって負担されないこと
本ケースでは、出張期間が3カ月であるため、①の要件を満たします。またB氏の給与は日本法人A社から支払われていますので②の要件も満たし、その後当該給与についてタイ法人に負担された、ということもないため③の要件も満たします。よって、B氏はタイの所得税を申告する必要はありません。
注意点としては、日本法人A社の子会社がタイにある場合などで、B氏に対する給与をA社からB氏に支払ったが、当該給与分をタイの子会社が費用負担する場合には③の要件を満たさなくなってしまうため、短期滞在者免税の適用を受けることができません。この場合には、タイにおける所得税の申告が必要になってしまうので、単に滞在期間が180日以内だからではない、という点に留意が必要です。
また、この短期滞在者免税の規定については、通常の雇用契約に基づく従業員にのみ適用される規定で、法人の取締役など委任契約に基づく者に対しては適用されないため、注意が必要です。
Q:一時的な業務対応のため、1年ほど日本人の出向者の増員を考えています。給与はタイと日本で支給する予定ですが、人件費補填を補うために、日本に人件費負担金を支払う予定です。金額設定などで問題になることはないでしょうか。
A:出向者については、長期であっても短期であっても、原則的には勤務する場所、今回のケースであればタイで全額支給することになります。ただし、実際には日本側で一部の給与や賞与の負担をしていることが多くあります。日本側では、給与較差補填金にかかる金額負担であれば損金として認められます。あまり多く日本で負担しすぎると、日本で寄付金扱いを受ける可能性がるため注意が必要です。
一方、タイとしてはタイで勤務している出向者の人件費負担にかかる支払いとなりますので、適切に契約を締結しておくことで損金扱いになります。ただし、人件費負担の支払いにかかる契約をしていながら一定期間免除をする場合には留意が必要です。本来タイ法人が支払うべき債務の免除となりますので、雑収入として計上し、税額が増える可能性があります。これは親子ローンでの支払利息の免除でも同様のことがいえますので、注意頂ければと思います。
次月も引き続き個人所得税に関しての重要ポイントに関して記載していきます。
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