Thailand Business Blog

【タイ国際税務】海外ベンダーへの支払いで発生する
P.N.D.54(WHT)とPP.36(代理納付VAT)の税務実務

2026.10.14 税務
皆さん、こんにちは!
東京コンサルティングファーム タイ拠点の石田です。

タイ現地法人を運営する中で、日本の親会社や第三国のベンダーに対して以下のような支払いを行うケースは日常的に発生します。

  • 日本本社のサーバー利用料やITサポート費用を支払った
  • 海外のクラウドサービス(SaaS)やソフトウェアライセンス料を決済した
  • 日本の親会社へ経営指導料や技術指導料(Royalty)を海外送金した

海外企業からの請求書(Invoice)にはタイの消費税(VAT)や源泉税の記載がないため、そのままインボイス通りの金額を送金して処理を終えてしまうケースが後を絶ちません。

しかし、タイ歳入局(Revenue Department)の税務調査において、「海外送金時の源泉税(P.N.D.54)の未納」および「代理納付VAT(PP.36)の申告漏れ」は真っ先にチェックされる典型的な否認ポイントです。

本記事では、海外ベンダーや親会社へサービス対価を支払う際に必要となる2つの税務申告について分かりやすく解説します。

タイ歳入法典第70条では、一定の条件のもと、タイ国外の法人に対して支払う所得について、支払者であるタイ法人に源泉徴収税の納付義務が定められています。

対象となる所得には、ロイヤルティや利息などが含まれます。ただし、海外事業者への支払いがすべて一律15%の源泉徴収税の対象になるわけではありません。

実際の税率や課税関係は、支払いの法的・経済的な性質、タイ国内源泉所得への該当性、適用される租税条約などを踏まえて判断する必要があります。

該当する場合、タイ法人は原則としてP.N.D.54を通じて源泉徴収税を申告・納付します。

支払先が日本法人である場合、日タイ租税条約の適用により、タイでの課税が免除または軽減される可能性があります。主な検討事項は以下のとおりです。

  • 一般的なサービス料(コンサルティング・業務支援等):一般的なサービス対価については、契約内容やサービスの実態に応じて、租税条約上の事業利得に該当するかなどを検討します。日本法人がタイ国内に恒久的施設(Permanent Establishment:PE)を有しておらず、租税条約上の要件を満たす場合には、タイでの課税が免除される可能性があります。ただし、サービスの名称だけで判断することはできません。技術支援や人員派遣などの実態によっては、別の条項の検討が必要となる場合があります。
  • ロイヤリティ・技術指導料:ソフトウェアのライセンス料や技術情報の使用料などは、契約内容や権利の利用形態に応じて、租税条約上のロイヤルティに該当するかを確認する必要があります。ロイヤルティに該当する場合、日タイ租税条約第12条に定める要件や税率を確認します。適用税率は所得の種類などによって異なるため、一律に10%または5%と判断せず、個別の確認が必要です。

租税条約を適用して源泉税を免税(0%)または軽減して申告する場合、歳入局から日本親会社・ベンダーの「居住者証明書(Certificate of Residence)」や「契約書(Service Agreement)」の提示を求められます。証拠書類が不十分な場合、原則通りの15%で追徴課税(+加算税・延滞税)を受けるリスクがあります。

タイ歳入法典第83/6条により、タイ国外の事業者が提供したサービスをタイ国内で消費・利用する場合、タイ現地法人側が海外事業者に代わって7%のVATを自己申告・納付する義務が生じます(申告書:PP.36)。

いわゆる「リバースチャージ(Reverse Charge)方式」と呼ばれる仕組みです。

「海外の相手に支払っているのに、なぜタイで7%のVATを追加で払わなければならないのか?」と疑問に思われるかもしれませんが、正しい手続きを踏めば実質的な税負担はゼロ(中立)になります。

  • 1. PP.36の申告・納付(翌月7日/e-Filing 15日まで):海外送金金額(またはGross-up金額)の7%をPP.36にて歳入局へ納付します。
  • 2. 領収書(Tax Receipt)の取得:歳入局にPP.36を納付すると、歳入局から公式な領収書(Receipt)が発行されます。
  • 3. PP.30での仕入税額控除(Input VAT):取得した領収書に基づき、翌月以降の月次VAT申告書(PP.30)において、納付した7%分を「仕入VAT(Input VAT)」として自社の売上VATから控除(または還付請求)できます。

PP.36の申告自体を忘れていた場合、後からの仕入税額控除(Input VAT)が認められなくなるばかりか、未納分に対して月1.5%の延滞税(Surcharge)や罰金が課されるため、必ず毎月の経理フローに組み込む必要があります。

申告書の種類課税対象標準税率書面提出期限e-Filing提出期限
P.N.D.54国外法人へのサービス料・ロイヤリティ等15%(租税条約で減免あり)翌月7日翌月15日
PP.36国外サービスの使用(リバースチャージ)7%翌月7日翌月15日

Q1. 海外ベンダーから「手取り額(Net金額)」を指定された場合はどう計算しますか?

Gross-up(逆算)計算が必要です。海外ベンダーから「100ドルをそのまま受け取りたい(源泉税はタイ側で負担してほしい)」と要求された場合、契約に基づき15%の源泉税分を上乗せ(Gross-up)して計算し、税務申告を行う必要があります。会社が負担した源泉税部分は、タイ側で損金不算入(Non-deductible Expense)となるリスクがあるため、契約時の文言調整が極めて重要です。

Q2. クレジットカードで海外のSaaS利用料を決済した場合もPP.36が必要ですか?

はい、決済手段に関わらずPP.36の申告義務が発生します。銀行送金ではなく、コーポレートカード等で海外のWebサービス(ITツール、広告費、ソフトウェア等)を決済した場合であっても、タイ国内で消費されるサービスであればPP.36による7% VATの代理納付が必要です。小口決済であっても月次で集計して申告漏れを防ぎましょう。

タイ現地法人における海外送金・海外決済は、単なる送金手続きだけで終えさせず、「P.N.D.54(15% WHT・租税条約の確認)」および「PP.36(7% 代理納付VAT・翌月Input VAT控除)」の2つの税務処理が正しく行われているかをセットで確認する運用が不可欠です。

「過去の海外送金でP.N.D.54やPP.36の申告漏れがないか不安」「日本親会社との経営指導料契約で租税条約を正しく適用したい」という企業様は、ぜひ東京コンサルティングファーム(タイ拠点)までお気軽にご相談ください。

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