皆さん、こんにちは。東京コンサルティングファーム タイ拠点の坂田です!最近タイでは大雨や洪水の影響が続いており、企業にとって洪水は従業員の出勤や物流だけの問題ではありません。工場が浸水すれば、生産設備や原材料が損傷し、操業停止につながる可能性もあります。特にBOI(タイ投資委員会)の投資奨励を受けて輸入した機械や原材料については、BOI上の手続きも確認する必要があります。
本記事の結論:タイBOI企業が受けられる洪水支援の要点
洪水被害を受けたBOI奨励企業は、一定の条件を満たす場合、被災した機械の代替として輸入する機械について輸入関税の免除を受けられるほか、被災した機械・原材料を税負担なくBOI上の口座から除却できる措置を利用できます。
今回新しい支援制度が創設されたわけではなく、BOIが2024年に公表したAnnouncement No.15/2567に基づく既存の洪水支援措置を、2026年の洪水被害を受けて改めて案内したものです。
2026年9月29日にタイBOIが再周知した洪水支援措置の概要
BOIは2026年9月29日、各地で発生している洪水の影響を受けたBOI奨励企業に対し、既存の洪水支援措置を利用できることを改めて案内しました。
制度の根拠となるのは、2024年11月1日付の「Announcement of the Board of Investment No.15/2567:Relief Measure for Promoted Investment Projects Affected by Floods」です。
主な支援内容は次の3点です。
- 洪水で損傷した機械の代替機械に対する輸入関税免除
- 損傷した機械・原材料のBOI上の除却
- 追加・代替機械に応じた生産能力の増加
どのBOI企業でも洪水支援措置を利用できる?
洪水被害を受けたという事実だけで自動的に支援措置の対象となるわけではなく、BOIが定める条件を満たす必要があります。
- 対象は2024年以降の洪水によって被害を受けたBOI奨励事業
- 事業所が政府当局によって正式に「災害区域」または「洪水被害に関する緊急災害支援区域」として指定された地域に所在していること
企業側で「工場が洪水被害を受けた」と判断するだけではなく、事業所所在地が公的な災害区域等に含まれているかを確認する必要があります。
洪水で壊れた機械を輸入し直す場合、関税はどうなる?
一定の条件を満たす代替機械については、輸入関税の免除を受けることができます。
対象は新品だけではありません。中古機械についても対象となる場合がありますが、製造年から輸入年まで10年以内という条件が設けられています。
また、代替機械の価額については、一定の条件のもとで法人所得税免除額を計算する際の投資額として算入できる仕組みも設けられています。
機械の損害はどのように証明する?
BOIへ申請する際には、洪水によって機械が損傷したことを示す客観的な資料を準備する必要があります。実務上は、洪水後すぐに廃棄・撤去するのではなく、以下を整理しておくことが重要です。
- 被災した機械の写真
- 機械番号やAsset Number
- 輸入時のBOI関連資料
- 保険会社による損害査定
- 修理可能か、交換が必要かを示す資料
- 購入・輸入に関する資料
洪水で壊れたBOI機械はそのまま廃棄できる?
BOI恩典を受けて輸入した機械については、通常の固定資産と同じ感覚で処分するのではなく、BOI上の除却手続きを確認する必要があります。
今回の洪水支援措置では、洪水によって損傷した機械について、BOI上の機械口座から除却することが認められています。一定の条件を満たしてBOIの手続きを行うことで、損傷した機械を除却する際に輸入関税の負担を生じさせずに処理できます。
洪水で使用不能となった場合には、会計上の固定資産処理とBOI上の機械口座の処理を分けて確認する必要があります。
洪水で損傷した原材料はどうなる?
洪水で損傷したBOI恩典対象の原材料についても、一定の手続きによりBOI上の除却が認められます。
BOI企業では、Section 36などの恩典を利用して、輸出製品の製造に使用する原材料等を輸入関税免除で輸入しているケースがあります。こうした原材料が洪水によって使用できなくなった場合、単純に廃棄するとBOI上の原材料残高と実際の在庫が一致しなくなる可能性があります。
洪水後には実地棚卸を行い、正常在庫・損傷在庫・廃棄予定在庫・BOI恩典を利用して輸入した在庫を区分して把握することが重要です。
代替機械を導入して生産能力が増えても問題ない?
今回の支援措置では、代替・追加する機械の実際の能力に応じて、生産能力を増加させることも認められています。
ただし、BOI奨励企業ではPromotion Certificate上の生産能力、製品、製造工程などが承認内容と結び付いています。そのため、機械を交換した結果として生産能力や製造工程に変更が生じる場合には、必要に応じてBOIへのプロジェクト変更申請などを確認する必要があります。
BOI洪水支援の申請期限はいつまで?
今回のようにAnnouncement No.15/2567の公表後に発生した洪水については、原則として洪水終了日から6カ月以内に申請する必要があります。
ここで注意したいのが、「洪水終了日」の考え方です。洪水終了日は、災害区域または洪水被害に関する緊急災害支援区域の公的な宣言上の終了日を基準とします。
つまり、「工場の水が引いた日」「会社が操業を再開した日」「機械の修理が完了した日」から6カ月という意味ではありません。
洪水被害を受けたら、まず何を確認する?
BOI企業が洪水被害を受けた場合、まず「被害の記録」「BOI恩典との紐付け」「申請期限」の3点を確認することが実務上重要です。
BOI担当者だけで完結させるのではなく、経理・税務担当、工場担当、保険担当、輸出入担当などと情報を共有して進めることが実務上は重要です。
よくある質問(FAQ)
Q1.洪水でBOI機械が壊れた場合、新しい機械の輸入関税は免除されますか?
免除されます(一定の条件あり)。災害指定区域内の被災機械の代替品であれば輸入関税が免除されます。新品のみならず製造後10年以内の中古機械も対象ですが、保険会社の損害査定書や被災写真による証明が必要です。
Q2.洪水で壊れたBOI機械は、そのまま廃棄しても問題ありませんか?
BOI恩典を利用して輸入した機械の場合、会社の判断だけで処分するのではなく、BOI上の除却手続きを確認する必要があります。洪水支援措置では、一定の条件のもとで、損傷した機械を輸入関税負担なくBOI上の機械口座から除却することが認められています。廃棄・撤去前に損害状況を示す資料を残しておくことも重要です。
Q3.6カ月の申請期限は、洪水が発生した日から数えるのでしょうか?
今回のようにAnnouncement No.15/2567の公表後に発生した洪水については、洪水発生日ではなく、原則として「洪水終了日」から6カ月以内です。この洪水終了日は会社が任意に決めるものではなく、災害区域または緊急災害支援区域に関する公的な宣言上の終了日を基準とします。
実務上のチェックポイント3選
① 被災した機械・原材料を処分する前に証拠を残す
工場復旧を急ぐ場合でも、被災設備をすぐに撤去・廃棄するのではなく、写真、機械番号、Asset Number、損害査定資料などを確保しておくことが大切です。BOI申請では洪水による損害を証明する必要があるため、被災直後の記録が後の手続きを左右します。
② 会計上の除却とBOI上の除却を分けて確認する
BOI恩典で輸入した機械を会計上固定資産から除却しても、それだけでBOI上の処理が完了するわけではありません。機械口座や原材料残高を確認し、BOI上必要となる手続きを並行して進めることが必要です。
③「6カ月」の起算日を早い段階で確認する
申請期限は、単純に被害が発生した日や工場の操業再開日から数えるわけではありません。対象地域に関する公的な災害区域等の宣言を確認し、洪水終了日を特定したうえで申請期限を管理することが重要です。
まとめ
BOIは2026年9月29日、各地の洪水被害を受け、BOI奨励企業が既存の洪水支援措置を利用できることを改めて案内しました。今回新しい制度が創設されたわけではなく、2024年11月1日付のBOI Announcement No.15/2567に基づく措置です。
対象となるBOI企業は、一定の条件のもとで、代替機械の輸入関税免除、被災した機械・原材料のBOI上の除却、追加・代替機械に応じた生産能力の増加などの措置を利用できます。
洪水発生時には、被害状況の記録、保険会社との調整、固定資産・在庫の会計処理、BOI機械・原材料口座の確認を並行して進めることが、早期復旧とBOIコンプライアンスの両面で重要になります。
東京コンサルティングファームのサポート
東京コンサルティングファームでは、タイに進出している日系企業向けに、BOI、会社法務、会計・税務、労務、Visa・Work Permitなど、現地法人運営に関するサポートを行っています。
洪水等の災害による機械・原材料への被害や、BOI上の処理についてご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的・税務上の助言を構成するものではありません。BOIの投資奨励制度、税制、関税制度および行政運用は変更される場合があります。また、洪水支援措置の適用可否は、事業所所在地、被害状況、BOI Promotion Certificateの内容、機械・原材料の状況等によって異なります。具体的な案件については、最新のBOI告示および当局の運用をご確認のうえ、専門家へご相談ください。
株式会社東京コンサルティングファーム タイ拠点
坂田