皆さん、こんにちは。東京コンサルティングファーム タイ拠点の石田です。今回は、タイにおける固定資産の減価償却ルール、除却(廃棄)・売却時の税務上の注意点について解説します。
減価償却ルール
タイの歳入法典では、固定資産の種類に応じて税務上の最大償却率が定められています。主な資産区分と償却率は以下のとおりです。
| 資産区分 | 最大償却率(年) | 最短耐用年数 |
| 永久建物 | 5% | 20年 |
| 機械・工具 | 20% | 5年 |
| 車両 | 20% | 5年(乗用車は取得価額100万THBまで) |
| コンピュータ(PC) | 33.33% | 3年 |
注意点1:会計上と税務上の調整
会計上の耐用年数と税務上の最大償却率が異なる場合、税務申告時に加算・減算調整が必要です。例えば、会計上は10年で償却している機械を、税務上は5年(20%)で損金算入する場合、差額分の調整が発生します。
注意点2:乗用車の100万THB上限
乗用車(Passenger Car)については、取得価額が100万バーツを超える部分の減価償却費は税務上損金不算入となります。例えば、150万バーツの乗用車を購入した場合、税務上損金として認められる減価償却費の計算基礎は100万バーツまでとなり、超過分50万バーツに対応する償却費は永久差異として損金不算入です。
固定資産の除却・廃棄の税務実務
固定資産を除却(廃棄)する際、帳簿から消すだけでは不十分です。タイ歳入局は、固定資産の廃棄について適切な証拠書類がない場合、「資産の不当流出(横流し)」と見なし、廃棄損の損金算入を否認するリスクがあります。
税務調査に耐えるためには、以下の必須証拠リストを整備しておく必要があります。
- 社内廃棄申請書:廃棄対象資産の明細(資産名、取得日、取得価額、帳簿価額)を記載し、権限者の承認を得た社内文書
- 廃棄前後の写真:廃棄対象資産の現物写真(廃棄前)と、廃棄・解体後の状況を示す写真(廃棄後)
- 外部業者の証明書:廃棄・解体を行った外部業者からの受領証明書または廃棄証明書(業者名、日付、廃棄物の明細を記載)
- 監査人(立会人)の立会い記録:廃棄作業に社内監査人または第三者が立ち会ったことを示す記録・署名
これらの証拠書類を整備せずに廃棄損を計上した場合、税務調査で否認され、追徴課税およびペナルティが発生する可能性があります。
固定資産の売却におけるVAT・WHT
① VAT 7% + Tax Invoice発行義務
VAT登録事業者が固定資産を売却する場合、原則としてVAT 7%が課税されます。売却時にはTax Invoice(税額票)の発行が必要です。
また、売却価格が市場価格と著しく乖離している場合、歳入局から市場価格に基づくVAT課税を指摘されるリスクがあります。特に関連会社間での売却は、独立企業間価格(Arm's Length Price)での取引であることを示せるようにしておくことが重要です。
② WHT(源泉徴収税)
固定資産の売却に伴う源泉徴収税(WHT)の取扱いは以下のとおりです。
- 物品(有形資産)の売却:WHT 0%(源泉徴収なし)
- サービス部分が含まれる場合:WHT 3%(例:据付・撤去作業を含む場合)
- 官公庁への売却:WHT 1%
売却取引にサービス要素が含まれる場合は、物品部分とサービス部分を明確に区分し、それぞれに適切なWHT率を適用する必要があります。
よくある質問
Q1.NBV(帳簿価額)1バーツの完全償却済み資産でも廃棄手続きは必要ですか?
はい、必要です。帳簿価額が1バーツであっても、固定資産台帳から除却する際には、上記の証拠書類(社内廃棄申請書、写真、外部業者証明書、立会い記録)を整備する必要があります。証拠なく除却した場合、税務調査で資産の不当流出を疑われるリスクがあります。
Q2.取得価額100万THB超の乗用車を売却した場合、税務上どう処理しますか?
売却益が発生する場合は全額が課税所得に算入されます。一方、売却損については、税務上損金算入が認められていなかった部分(100万THB超過分に対応する未償却残高)が含まれるため、計算が複雑になります。売却損のうち、税務上損金不算入だった減価償却費に対応する部分は、売却時にも損金算入できない可能性があり、個別の検討が必要です。
まとめ
固定資産の処分(除却・売却)は、タイの税務調査において重点的に確認されるポイントの一つです。今回のポイントを整理すると、
- 減価償却は資産区分ごとに最大償却率が決まっており、乗用車は100万THBが損金算入の上限
- 廃棄時は社内廃棄申請書・写真・外部業者証明書・立会い記録の4点セットが必須
- 売却時はVAT 7%の課税とTax Invoice発行が原則必要
- WHTは物品売却0%、サービス部分3%、官公庁1%と取引内容で異なる
です。
固定資産台帳の定期的な実査と、除却・売却時の証拠書類の確実な保存が、税務リスクを軽減するための最も基本的かつ重要な対応です。
【免責事項】
本記事は、2026年10月1日時点で確認できるタイの法令および税務実務に基づき、一般的な情報提供を目的として作成したものであり、税務・法的助言を構成するものではありません。固定資産の減価償却、除却・廃棄、売却に伴う税務処理は、資産の種類、取得時期、取引条件等によって異なります。具体的な税務判断を行う際には、最新の法令およびタイ歳入局の運用を確認したうえで、専門家へご相談ください。
株式会社東京コンサルティングファーム タイ拠点
石田