皆さん、こんにちは。東京コンサルティングファーム タイ拠点の片山です。タイ会計士連盟(FAP)は2026年8月24日、改正TFRS等の官報公布を公表しました。2027年1月1日以後に開始する事業年度から適用される今回の改正は、金融商品会計・電子決済・ESG連動商品・共通支配下の企業結合と、多くの日系企業に影響が及ぶ内容です。本記事では、改正の全体像と日系企業が2026年中に確認すべきポイントを整理します。

今回の改正は、TFRS 9(金融商品)の分類・測定の見直し、ESG連動金融商品の会計処理明確化、電子決済における認識中止の取扱い、および共通支配下の企業結合に関する新基準の4つが柱です。

いずれも2027年1月1日以後に開始する事業年度から適用されるため、12月決算企業は2027年1月期から、3月決算企業は2028年3月期から対象となります。

日系企業にとって特に重要なのは、親子ローンや関連当事者間の金融商品の分類変更、グループ内再編(共通支配下の企業結合)への影響です。2026年中に現行の会計処理を棚卸しし、改正後の取扱いを確認しておくことが実務上のポイントとなります。

タイ会計士連盟(FAP: Federation of Accounting Professions)は、タイの会計基準(TFRS)を国際財務報告基準(IFRS)に準拠させる形で整備しています。今回の改正は、IASBが2024年に公表したIFRS 9・IFRS 7等の改訂に対応するもので、2026年8月24日付で官報公布されました。

改正の対象となる主な基準は以下のとおりです。

基準改正内容適用開始
TFRS 9金融商品の分類・測定の見直し2027年1月1日以後開始事業年度
TFRS 7金融商品の開示要件の追加同上
TFRS 9関連電子決済の認識中止(決済日前の認識中止)同上
TFRS 9関連ESG連動金融商品(契約上のCFテスト)同上
TFRS 10等共通支配下の企業結合同上

TFRS 9の分類・測定に関する改正は、金融資産の「契約上のキャッシュ・フロー特性テスト(SPPIテスト)」および「ビジネスモデル評価」に影響を与えるものです。

金融資産を償却原価(AC)またはその他の包括利益を通じた公正価値(FVOCI)で測定するためには、契約上のキャッシュ・フローが「元本と利息のみの支払い(SPPI)」であることが求められます。今回の改正では、以下の点が明確化されました。

  • 契約上リンクした商品(Contractually Linked Instruments)の判定基準の見直し
  • ノンリコースローンにおける元本・利息の判定方法の明確化
  • 規制上の要件に基づく金利変動がSPPIを満たすかの判断指針

日系企業のタイ法人では、親会社からの借入(親子ローン)や関連当事者間のローンについて、改正後のSPPIテストを再確認する必要があります。特に、変動金利の条件や期限前償還条項がある場合は注意が必要です。

金融負債について公正価値オプション(FVTPL指定)を適用する際の「会計上のミスマッチ」の判定が見直され、実務上の適用範囲が明確化されました。

近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)目標の達成状況に連動して金利が変動するローン(サステナビリティ・リンク・ローン等)が増加しています。今回の改正では、こうしたESG連動金融商品のSPPIテストへの影響が明確化されました。

例えば、タイのグリーンローンやサステナビリティ・リンク・ローンで、CO2排出量削減目標の達成度に応じて金利が上下する場合、その金利変動部分が「元本と利息のみ」に該当するかが論点になります。

改正後は、ESG連動による金利調整が「基本的な貸借関係に整合する対価」であるかどうかを判定するガイダンスが追加されました。金利調整幅が僅少(de minimis)であれば、SPPIテストを満たすと判断できるケースが明示されています。

タイに拠点を持つ日系企業で、現地銀行からサステナビリティ・リンク・ローンを調達しているケースでは、当該ローンの会計分類を見直す必要があるか確認すべきです。

TFRS 7の改正では、金融商品の分類・測定に関連する追加開示が求められます。主な追加開示項目は以下のとおりです。

  • 契約上のキャッシュ・フロー特性テストに関する判断の開示
  • ESG連動の金融商品に関する情報開示
  • 公正価値オプション適用金融負債の自己信用リスク変動の開示強化
  • 金融資産の分類ごとの帳簿価額と公正価値の情報

タイの上場企業に加え、会計監査を受けている非上場の日系現地法人でも、監査法人から追加開示を求められる可能性があります。

今回の改正では、電子決済(Electronic Payment)において、決済日前に金融資産・金融負債の認識を中止できるケースが明確化されました。

従来、電子送金やQRコード決済等で支払いを行った場合、実際に銀行間決済が完了するまで(通常T+1~T+2)金融資産・負債の認識を継続する必要がありました。

改正後は、以下の条件を満たす場合、支払い指図日に認識中止が可能となります。

  • 決済システムが電子的であり、決済の取消し(revocation)が実質的にできないこと
  • 決済指図が発行された時点で、信用リスクが僅少であること
  • 決済が短期間(通常T+1以内)で完了すること

タイでは電子決済(PromptPay、QRコード決済等)が急速に普及しており、日系企業でも日常的な仕入・経費支払いで電子決済を利用するケースが増えています。改正後は、これらの取引について認識中止のタイミングを見直す必要があります。

今回の改正では、共通支配下の企業結合(Business Combinations under Common Control)に関する新たな会計基準が導入されました。

共通支配下の企業結合とは、同一の最終親会社が支配するグループ内の企業間で行われる組織再編(合併、事業譲渡、株式移転等)を指します。

従来、TFRS 3(企業結合)は共通支配下の取引を適用範囲から除外しており、実務上は帳簿価額法(Book Value Method)が一般的に用いられていましたが、統一的な基準がありませんでした。

改正後は、以下の2つの方法が明示されました。

  • 取得法(Acquisition Method):TFRS 3に準じた公正価値ベースの処理。非支配持分が存在する場合や、上場会社が関係する場合に適用。
  • 帳簿価額法(Book Value Method):移転資産・負債を帳簿価額で引き継ぐ方法。のれんは認識しない。

日系企業のタイ拠点では、グループ内再編(例:タイ子会社間の合併、タイ持株会社への統合等)を行う際に、この新基準の適用が必要となります。特に、非支配持分株主がいるケースでは取得法の適用可否を慎重に検討する必要があります。

原則として、TFRSを適用して財務諸表を作成しているすべてのタイ法人が対象です。ただし、タイではTFRS for NPAEs(非公開企業向け簡易基準)を適用している中小企業も多く、TFRS for NPAEsを適用している企業への直接的な影響は限定的です。

ただし、以下のいずれかに該当する場合は、フルTFRSの適用対象となるため、今回の改正の影響を受けます。

  • タイ証券取引所に上場している企業
  • 証券取引委員会(SEC)の監督下にある企業
  • フルTFRSを任意適用している非上場企業
  • 親会社の連結パッケージ上、IFRS準拠の財務データを求められている日系現地法人

多くの日系タイ法人は、日本本社の連結パッケージ作成のためにIFRS/TFRSベースの財務データを提出しており、その場合は本改正の影響を確認する必要があります。

改正基準の適用開始は2027年1月1日以後に開始する事業年度からであるため、12月決算企業の2026年度決算には直接適用されません。

ただし、以下の点に留意が必要です。

  • 早期適用:一部の改正について早期適用が認められている場合、2026年度から適用する選択肢があります
  • IAS 8の後発事象開示:2026年度の財務諸表において、翌年度以降に適用される新基準の影響額を注記開示する必要がある場合があります
  • 連結パッケージへの影響:日本本社がIFRS任意適用企業の場合、2027年3月期の連結財務諸表からIFRS改訂の影響を反映する必要があり、タイ法人にもデータ提供を求められる可能性があります

Q1.当社はTFRS for NPAEsを適用していますが、今回の改正は関係ありますか?

TFRS for NPAEsを適用している場合、今回の改正は直接適用されません。ただし、日本本社の連結パッケージでIFRS/TFRSベースのデータを求められている場合は、連結調整の観点から影響を確認する必要があります。また、将来的にフルTFRSへ移行する可能性がある場合は、改正内容を把握しておくことをお勧めします。

Q2.親子ローン(日本本社からの借入)の会計処理に影響はありますか?

影響が生じる可能性があります。特に、変動金利条件、期限前償還条項、ESG連動条件等がある親子ローンについては、改正後のSPPIテスト(契約上のキャッシュ・フロー特性テスト)を再度確認する必要があります。分類が変更される場合、測定方法(償却原価からFVTPL等)の変更が必要になることがあります。

Q3.改正への対応はいつまでに完了すればよいですか?

12月決算企業の場合、2027年1月1日開始事業年度から適用されるため、2026年中に現行の会計処理の棚卸しと影響分析を完了させることが望ましいです。特に、金融商品の分類変更やグループ内再編を予定している場合は、早期に会計・監査法人と協議を開始してください。

タイ法人が保有する金融資産・負債のリストを作成し、改正後のSPPIテスト・ビジネスモデル評価に照らして分類変更の要否を確認します。特に、親子ローン、関連当事者間ローン、変動金利借入について優先的に確認しましょう。

日常的に利用している電子決済(銀行振込、PromptPay等)について、認識中止のタイミングが改正後の要件を満たすか確認します。経理部門の仕訳処理フローの見直しが必要になる可能性があります。

タイ拠点のグループ内再編(合併、事業譲渡等)を計画している場合、共通支配下の企業結合に関する新基準の適用方法を事前に確認し、取得法と帳簿価額法のいずれが適用されるかを整理しておきましょう。

まとめ

2026年8月24日に官報公布された改正TFRSは、2027年1月1日以後開始事業年度から適用されます。今回の改正で日系企業が押さえるべきポイントは以下のとおりです。

  • TFRS 9の分類・測定の見直し(SPPIテストの明確化、ESG連動金融商品の取扱い)
  • 電子決済の認識中止タイミングの明確化
  • TFRS 7の追加開示要件
  • 共通支配下の企業結合に関する新基準(取得法 or 帳簿価額法)

12月決算企業は2026年中に影響分析を完了させ、必要に応じて会計方針の変更や経理処理フローの見直しを行うことが重要です。

東京コンサルティングファームのサポート

東京コンサルティングファームでは、タイにおける会計税務・監査対応・M&Aアドバイザリーを含め、日系企業の現地法人運営をサポートしています。

TFRS改正への対応についても、「自社の金融商品の分類に影響があるか確認したい」「グループ内再編の会計処理を相談したい」「連結パッケージへの影響を整理したい」といったご相談に対応しております。

タイ現地法人の会計基準対応についてお困りの点がございましたら、お気軽に東京コンサルティングファームまでお問い合わせください。

【免責事項】

本記事は、2026年9月時点で確認できるタイの法令、タイ会計士連盟(FAP)公表情報およびIFRS関連情報等に基づき、一般的な情報提供を目的として作成したものであり、会計・税務・法的助言を構成するものではありません。TFRS改正の適用判定、金融商品の分類・測定、企業結合の会計処理等は、企業の個別事情によって異なります。具体的な会計処理・判断を行う際には、最新の基準およびFAPの運用を確認したうえで、専門家へご相談ください。

株式会社東京コンサルティングファーム タイ拠点
片山