皆さん、こんにちは。東京コンサルティングファーム タイ拠点の髙嶋です。今回は、2026年9月時点のタイ政策金利の動向と、日系企業への影響・実務対応ポイントについて整理します。

2026年9月現在、タイ中央銀行(BOT:Bank of Thailand)の金融政策委員会(MPC)は政策金利を1.00%に据え置いています。以下は直近のMPC判断の推移です。

MPC会合政策金利判断
2025年12月1.25%0.25%引き下げ
2026年2月1.00%0.25%引き下げ
2026年4月1.00%据え置き
2026年6月1.00%据え置き
2026年8月1.00%据え置き

MPC声明では、以下の要旨が示されています。

  • タイ経済は緩やかな回復基調にあるが、外需の不透明感が残る
  • インフレ率はBOTの目標レンジ(1~3%)内で安定推移
  • 追加利下げは金融安定性リスク(家計債務比率の高止まり等)とのバランスを考慮
  • 現行1.00%の水準は景気を十分に下支えしていると判断

BOTは「必要に応じて追加の金融緩和を行う用意がある」としつつも、当面は据え置きを継続する姿勢を示しています。

政策金利の低下は、商業銀行の貸出基準金利(MLR・MOR・MRR)の引き下げにつながります。タイバーツ建ての借入を行っている日系企業にとって、借入コストの低減が見込まれます。ただし、政策金利の変動がそのまま貸出金利に反映されるとは限らず、銀行ごとの信用評価や融資条件によって差が生じます。

低金利環境は、設備投資や運転資金の調達コストを引き下げる効果があります。新規投資や工場拡張を検討している日系企業にとっては、資金調達のタイミングとして有利な環境と言えます。一方、既存の固定金利借入については、金利低下の恩恵を直接受けられない点に留意が必要です。

タイの金利低下は、日米との金利差拡大を通じてバーツ安圧力となる可能性があります。バーツ安は輸出企業にとってはプラス要因ですが、原材料や設備を輸入している企業にとってはコスト増加要因となります。為替ヘッジの要否を含め、定期的なモニタリングが重要です。

日本親会社からタイ子会社への親子ローン(インターカンパニーローン)を行っている場合、タイの市場金利低下に伴い、移転価格税制上の独立企業間金利の見直しが必要になる場合があります。親子ローンの金利設定が市場金利と乖離していると、税務当局から移転価格上の指摘を受けるリスクがあります。

政策金利や借入金利の変動に関して、タイの税法上一律の文書化義務が定められているわけではありません。しかし、以下の関連資料を保管しておくことが推奨されます。

  • 銀行借入契約書(金利条件・変動条項を含む)
  • 親子ローン契約書および金利算定根拠
  • 移転価格文書(ローカルファイル)における金融取引の記載
  • BOT政策金利の推移記録
  • 商業銀行の貸出基準金利(MLR等)の推移記録
  • 為替ヘッジ契約の写し
  • 取締役会・経営会議における資金調達方針の議事録
  • 借入残高・金利一覧の定期更新記録

政策金利はBOTが設定する短期金利であり、企業が実際に適用される借入金利とは異なります。商業銀行は政策金利を参考にしつつも、信用リスク、融資期間、担保条件等を加味して貸出金利を決定します。政策金利が下がっても、自社の借入金利が同幅で下がるとは限りません。

既存の借入契約が変動金利か固定金利かを確認し、金利低下の恩恵を受けられるかどうかを把握しておくことが重要です。変動金利の場合、基準金利の見直しタイミングや適用条件を契約書で再確認してください。

親子ローンの金利は、移転価格税制上、独立企業間価格であることが求められます。タイの市場金利が低下している局面では、過去に設定した金利が市場水準と乖離していないかを定期的に検証し、必要に応じて金利条件の見直しを行ってください。

金利差の変動は為替レートに影響を与えます。バーツ建ての売上・費用の比率、決済通貨、ヘッジ方針等を整理し、為替変動による業績への影響を定量的に把握しておくことが望ましいです。

低金利環境では借入コストが低いため、過大な借入を行いやすくなります。タイの税法上、過少資本税制(Thin Capitalization Rule)は現時点では導入されていませんが、関連者間取引における借入については移転価格税制の観点から適切な水準を維持する必要があります。

項目メリットデメリット
借入コスト変動金利借入のコスト低減固定金利借入は恩恵なし
設備投資新規投資の調達コスト低下投資判断の甘さにつながるリスク
為替バーツ安で輸出競争力向上輸入コスト増加
親子ローン低金利での資金調達が可能移転価格上の金利見直し必要
預金・運用―余剰資金の運用利回り低下
  • 自社の借入契約が変動金利か固定金利かを確認する
  • 変動金利の場合、基準金利の見直しタイミングを把握する
  • 親子ローンの金利設定がタイの市場金利水準と整合しているか検証する
  • 移転価格文書(ローカルファイル)に金融取引の記載があるか確認する
  • 為替ヘッジの要否・方針を経営会議で検討する
  • 新規借入・借り換えの検討タイミングを整理する
  • BOT・MPC会合スケジュールを社内カレンダーに登録する
  • 借入残高・金利条件の一覧表を四半期ごとに更新する
  • 銀行担当者との定期面談で金利動向・融資条件をヒアリングする

FAQ

Q1.2026年9月時点のタイの政策金利は何%ですか?

2026年9月時点で、BOTの政策金利は1.00%です。2026年2月に0.25%引き下げられて以降、据え置きが続いています。

Q2.次回のMPC会合はいつですか?

次回のMPC会合は2026年10月に予定されています。BOTのウェブサイトで最新のスケジュールをご確認ください。

Q3.政策金利と実際の借入金利はどう違いますか?

政策金利はBOTが設定する短期の基準金利であり、商業銀行の貸出金利(MLR・MOR・MRR等)とは異なります。銀行は政策金利を参考にしつつ、信用リスクや融資条件を加味して貸出金利を決定するため、政策金利の変動幅がそのまま適用されるわけではありません。

Q4.金利変動に関して文書化義務はありますか?

タイの税法上、政策金利や借入金利の変動に関する一律の文書化義務はありません。ただし、親子ローンの金利設定根拠や借入契約の条件等は、移転価格文書の一部として整理・保管しておくことが推奨されます。

Q5.親子ローンの金利はどのように設定すべきですか?

親子ローンの金利は、移転価格税制上、独立企業間価格(Arm's Length Price)であることが求められます。タイの市場金利、通貨、融資期間、信用力等を考慮し、第三者間で成立し得る金利水準を設定してください。金利の算定根拠は文書化しておくことが重要です。

まとめ

2026年9月時点で、タイの政策金利は1.00%に据え置かれています。低金利環境は日系企業にとって借入コストの低減や設備投資の追い風となる一方、親子ローンの移転価格管理、為替リスクへの対応、借入過大リスクなど、注意すべき実務ポイントも多くあります。

政策金利の動向は、BOT・MPCの判断により今後変動する可能性があります。定期的に金利動向をモニタリングし、自社の借入条件・資金調達方針・為替ヘッジ方針を見直していくことが、安定した事業運営につながります。

【免責事項】

本記事は、2026年9月26日時点で確認できるタイの法令、BOT公表情報および金融・税務情報等に基づき、一般的な情報提供を目的として作成したものであり、税務・法的助言を構成するものではありません。政策金利、借入金利、為替、移転価格等に関する具体的な判断を行う際には、最新の情報を確認したうえで、専門家へご相談ください。

株式会社東京コンサルティングファーム タイ拠点
髙嶋