皆さん、こんにちは。東京コンサルティングファーム タイ拠点の石田です!
タイ現地法人が順調に事業を拡大し黒字化を達成すると、次なる経営課題となるのが「タイから日本の親会社への利益還流(資金送金)」です。配当送金は単に銀行から振り込むだけで完了するわけではありません。
本記事では、タイ現地法人から日本親会社へ配当送金を行う際に必要な法定手続きと、源泉税を中心とした税務上のポイントを整理します。
配当送金を実行するための3つの法的要件
タイの民商法典(Civil and Commercial Code)では、配当を行うために満たすべき法的要件が定められています。以下の3つを順に確認しましょう。
① 法定準備金(Legal Reserve)の積立義務
タイ民商法典第1202条により、会社は配当を行うたびに、純利益の最低5%を法定準備金として積み立てなければなりません。この積立義務は、法定準備金が資本金の10%に達するまで継続します。
法定準備金の積立が完了していない状態で配当を行う場合は、まず準備金を積み立てたうえで、残余利益から配当額を決定する必要があります。
② 決議機関の違い(通常配当 vs 中間配当)
配当の種類によって、必要な決議機関が異なります。
| 配当の種類 | 決議機関 | 備考 |
|---|---|---|
| 年次配当(通常配当) | 株主総会(AGM)決議 | 年次財務諸表の承認と併せて決議 |
| 中間配当 | 取締役会決議 | 十分な利益がある場合に限り可能 |
年次配当は、毎年の年次株主総会(AGM)において、年次財務諸表の承認とともに決議されるのが一般的です。一方、中間配当は取締役会の決議で実施できますが、十分な利益があることが前提となります。
③ 官報公示・株主への事前通知
配当決議後は、官報への公示および株主への書面通知を行い、配当金の支払日を通知する必要があります。これらの手続きを経て、初めて実際の配当送金が可能となります。
配当送金にかかる税金(10%源泉税)と租税条約の取り扱い
① 配当に対する源泉税率は一律「10%」
タイの歳入法典(Revenue Code)に基づき、タイ法人が海外の親会社へ配当を送金する場合、配当金額に対して10%の源泉税(Withholding Tax)が課されます。
具体的な計算例は以下のとおりです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 配当金額 | 10,000,000バーツ |
| 源泉税(10%) | 1,000,000バーツ |
| 実際の送金額 | 9,000,000バーツ |
源泉税はタイ現地法人が配当送金時に控除し、タイの税務当局へ納付します。
② 日タイ租税条約と外国税額控除
日本とタイの間には租税条約(日タイ租税条約)が締結されています。日タイ租税条約上、配当に対する源泉税率の上限は原則として10%とされており、タイ国内法の税率と同率です。
日本の親会社側では、タイで納付した源泉税について外国税額控除の適用を受けることが可能です。これにより、同一の配当所得に対する日本とタイでの二重課税が調整されます。
外国税額控除の適用にあたっては、タイ側で発行される源泉税の納税証明書(Withholding Tax Certificate)を取得・保管しておくことが重要です。
BOI奨励企業における配当免税
タイ投資委員会(BOI:Board of Investment)から奨励を受けている企業については、法人税免税期間(CIT Holiday)中に得た利益から支払う配当について、源泉税が免除される場合があります。
ただし、注意すべき点として、BOI奨励事業(BOI事業)とそれ以外の事業(Non-BOI事業)を併営している場合、BOI事業から生じた利益に基づく配当のみが免税対象となります。Non-BOI事業から生じた利益に基づく配当には、通常どおり10%の源泉税が課されます。
そのため、BOI奨励企業が配当を行う際には、BOI事業とNon-BOI事業の利益を明確に区分し、それぞれの配当原資を特定しておくことが実務上重要です。
よくある質問(FAQ)
Q1.累積赤字がある状態で配当は出せますか?
いいえ、タイの民商法典上、累積赤字(繰越欠損金)がある場合には配当を行うことはできません。配当は利益剰余金がプラスの状態でのみ実施可能です。まず累積赤字を解消したうえで、法定準備金の積立を行い、残余利益から配当額を決定する必要があります。
Q2.源泉税はいつまでに納付する必要がありますか?
配当に対する源泉税は、配当支払月の翌月7日までに所轄税務署へ納付する必要があります(e-Filingの場合は翌月15日まで)。申告書はP.N.D.54を使用します。期限内に正しく納付・申告を行わない場合、加算税や延滞税が課される可能性がありますので、スケジュール管理が重要です。
まとめ
タイ現地法人から日本親会社への配当送金は、単なる資金移動ではなく、法的手続き・税務処理の両面から慎重な対応が求められます。本記事のポイントを整理すると、以下のとおりです。
- 法定準備金の積立義務(純利益の5%、資本金の10%まで)を充足する
- 年次配当はAGM決議、中間配当は取締役会決議が必要
- 官報公示・株主への事前通知を行う
- 配当送金時に10%の源泉税を控除・納付する
- 日タイ租税条約に基づく外国税額控除を活用し、二重課税を調整する
- BOI奨励企業はCIT Holiday期間中の配当免税の適用可否を確認する
配当送金の実務では、法務・税務・会計の各部門が連携し、適切なタイミングで手続きを進めることが重要です。
東京コンサルティングファームのサポート
東京コンサルティングファームでは、タイにおける会計税務、法人設立、配当送金を含む国際税務、BOI奨励申請など、日系企業の現地法人運営を幅広くサポートしています。
「配当送金の手続きが初めてで進め方が分からない」「源泉税の計算や租税条約の適用について確認したい」「BOI奨励企業としての配当免税の適用要件を整理したい」といったご相談に対応しております。
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