皆さん、こんにちは!東京コンサルティングファーム タイ拠点の髙嶋です。
いつもブログをご覧いただきありがとうございます。
今回は、タイの社会保険制度について、2026年から始まった保険料算定基礎となる賃金上限の引上げ、企業が管理すべき資料、日系企業が注意すべき実務ポイントを、メリット・デメリットとあわせてご紹介します。
2026年、タイの社会保険料が変わりました
2026年1月1日から、社会保険法Section 33の被保険者について、社会保険料の計算に使用する月額賃金の上限が15,000バーツから17,500バーツへ引き上げられました。保険料率5%自体は変更されないため、月額保険料の上限は従来の750バーツから875バーツとなります。
今回の改正は一度だけの変更ではなく、3段階で実施されます。第2段階は2029~2031年、第3段階は2032年以降です。
| 期間 | 算定上限月額 | 従業員負担上限 | 会社負担上限 |
|---|---|---|---|
| 2026~2028年 | 17,500 THB | 875 THB/月 | 875 THB/月 |
| 2029~2031年 | 20,000 THB | 1,000 THB/月 | 1,000 THB/月 |
| 2032年以降 | 23,000 THB | 1,150 THB/月 | 1,150 THB/月 |
社会保険料の基本的な仕組み
Section 33では、原則として従業員と会社がそれぞれ賃金の5%を負担します。2026~2028年は、賃金17,500バーツ以上の従業員について、従業員875バーツ、会社875バーツが月額の上限となります。賃金が17,500バーツ未満の場合は、実際の賃金を基礎として5%を計算します。
会社は従業員負担分を給与から控除し、会社負担分と合わせて、原則として翌月15日までに社会保険事務所へ納付し、所定の申告書を提出する必要があります。
改正のメリット
1.社会保障給付の算定基礎が拡大
保険料の算定基礎となる賃金上限が上がることで、賃金を基礎として計算される一部の給付について、従来より高い水準で算定される可能性があります。
2.制度を実際の賃金水準に合わせる動き
15,000バーツから17,500バーツへ、さらに20,000バーツ、23,000バーツへ段階的に調整されるため、賃金水準の変化に対応した制度設計となっています。
3.福利厚生の説明材料になる
会社負担の社会保険料は医療、失業、老齢、出産などの社会保障につながるため、従業員への福利厚生説明にも活用できます。
改正のデメリット・企業側の負担
1.会社負担の増加
17,500バーツ以上のSection 33従業員では、会社負担の上限が月750バーツから875バーツへ増加しました。年間では1人あたり1,500バーツの増加です。
2.給与計算システムの更新が必要
給与計算システムやExcel等で社会保険料の上限を15,000バーツとしている場合、17,500バーツへ変更する必要があります。
3.将来的にさらに負担が増える
2029年には上限20,000バーツ、2032年には23,000バーツとなる予定です。中長期の人件費予算にも反映する必要があります。
4.給与・社会保険データの不一致に注意
給与台帳、給与明細、社会保険申告、会計仕訳の金額が一致しているかを月次で確認する必要があります。
文書化・証憑管理で注意すべき点
社会保険制度では、従業員情報、賃金、控除額、会社負担額、申告・納付の履歴を整合的に管理することが重要です。タイ社会保障法Section 47では、雇用主による従業員負担分の控除、会社負担分との合算納付、翌月15日までの納付および所定の申告書提出が定められています。
今回確認した公的資料では、社会保険関連資料すべてに共通する一律の保存年限までは確認できませんでした。そのため、給与記録、申告書、納付記録、従業員情報など、資料の種類ごとに適用される法令・規則を確認することが安全です。
日系企業が整理しておきたい主な資料
- 従業員名簿・社会保険登録情報
- 雇用契約書・給与情報
- 給与計算資料・給与明細
- 社会保険料申告書(SSO 1-10等)
- 社会保険料の納付記録・領収書
- 入社・退職・給与変更・従業員情報変更の記録
- 給与台帳と会計仕訳の照合資料
日系企業が特に注意すべきポイント
- 給与計算システムの社会保険料上限を17,500バーツへ更新する
- 月給17,500バーツ以上の従業員について本人・会社それぞれ875バーツを上限として確認する
- 翌月15日の納付期限を管理する
- 給与台帳・給与明細・SSO申告・会計仕訳を毎月照合する
- 入社・退職・給与変更を社会保険登録へ適切に反映する
- 2029年・2032年の上限引上げを人件費予算に織り込む
- 社会保険とWorkmen's Compensation Fund(労災補償基金)を別制度として管理する
メリット・デメリット比較
| 項目 | メリット | デメリット・負担 |
|---|---|---|
| 保険料上限引上げ | 社会保障給付の基礎が拡大する | 会社・従業員の負担増の可能性 |
| 給与管理 | 制度を見直す機会になる | 給与システムの更新が必要 |
| 従業員福利厚生 | 社会保障制度を説明しやすい | 制度変更の社内説明が必要 |
| 中長期予算 | 将来の人件費を計画しやすい | 2029年・2032年の追加負担も見込む必要 |
よくある質問(FAQ)
Q.2026年から社会保険料率が5%から上がったのですか?
いいえ。今回の改正のポイントは、Section 33の保険料計算に使用する賃金上限が15,000バーツから17,500バーツへ引き上げられたことです。保険料率5%は維持されています。
Q.給与が50,000バーツなら社会保険料はいくらですか?
2026~2028年のSection 33では、計算上の賃金上限が17,500バーツのため、従業員875バーツ、会社875バーツが上限となります。
Q.給与が10,000バーツの場合は?
原則として実際の賃金10,000バーツを基礎に5%を計算するため、本人負担は500バーツ、会社負担も500バーツとなります。
Q.今後も上限は上がりますか?
現行の段階的な規定では、2029~2031年は20,000バーツ、2032年以降は23,000バーツとなります。
Q.会社が納付を遅れた場合は?
社会保険法Section 49では、期限までに納付しない場合、未納額等に対して月2%の追加金が規定されています。
まとめ
タイでは2026年1月から、Section 33の社会保険料を計算する賃金上限が15,000バーツから17,500バーツへ引き上げられました。2026~2028年は従業員・会社それぞれの月額負担上限が875バーツとなります。
企業側にとっては人件費増加というデメリットがある一方、従業員の社会保障の算定基礎が拡大することは制度上のメリットです。日系企業は、給与計算システムだけでなく、給与台帳、SSO申告、納付記録、会計処理まで一貫して見直すことが重要です。
また、2029年、2032年にも上限引上げが予定されているため、今回の対応を一時的な給与計算修正で終わらせず、中長期の人件費計画に反映することをおすすめします。
参考資料
- タイ社会保障局(SSO)データカタログ
https://catalog.sso.go.th/ - タイ労働省:Social Security Act B.E. 2533
https://www.mol.go.th/wp-content/uploads/sites/2/2019/07/social_security_act_2533_sso_1.pdf - タイ政府広報:2026年の社会保険料上限引上げ
https://gcc.go.th/ - タイ労働省:Employer / Employee duties
https://www.mol.go.th/
東京コンサルティングファームのサポート
東京コンサルティングファームでは、タイの社会保険手続き、給与計算、労務管理、制度改正に伴う給与・会計処理の見直しなどに関するご相談を承っております。
以上、お読みいただきありがとうございました。
【免責事項】
本記事は2026年9月2日時点で確認できる公開情報をもとにした一般的な解説です。個別案件については、加入区分、給与、勤務地、最新の法令・通知等を確認したうえで判断してください。
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