皆さん、こんにちは!東京コンサルティングファーム タイ拠点の石田です!
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はじめに:日本の親会社との取引価格は適切ですか?
タイに現地法人を持つ日系企業において、近年歳入局(Revenue Department)からの税務調査で最も厳しいチェックを受けているのが「移転価格税制(Transfer Pricing:TP)」です。
移転価格税制とは、タイ現地法人と日本の親会社などの「関連当事者(Related Parties)」との間で行われる取引(原材料の売買、製品の移出、ロイヤリティ、経営指導料の支払いなど)の価格が、第三者間との通常の取引価格(独立企業間価格:Arm's Length Price)と異なることによって、タイでの課税所得が不当に減少することを防ぐためのルールです。
タイでは移転価格税制に関する開示・文書化制度が整備され、歳入局による関連者間取引の確認も重要性を増しています。本記事では、移転価格税制の基本ルールと、日系企業が押さえておくべきリスク・実務対策を分かりやすく解説します。
タイの移転価格税制の基本ルールと対象企業
Q.タイで移転価格(TP)の申告・書類提出が義務付けられるのはどのような企業ですか?
事業年度の年間総収入金額(売上高)が2億バーツ以上の企業です。対象企業は、法人税確定申告書(P.N.D.50)の提出期限(決算日から150日以内)までに、関連当事者との取引状況を記載した「移転価格開示書面(Transfer Pricing Disclosure Form)」を歳入局へ提出しなければなりません。
移転価格税制において押さえておくべき主要な規定は以下の通りです。
① 関連当事者(Related Party)の定義
直接的・間接的を問わず、50%以上の出資関係(株式保有)がある企業同士、または実質的な支配関係にある企業が対象となります(日本の親会社、グループ子会社、姉妹会社等)。
② 提出が求められる主要書類
- 移転価格開示書面(Disclosure Form):売上2億バーツ以上の企業に提出義務あり。
- ローカルファイル(Local File):歳入局から要請(Tax Audit等)があった際、要請受領後60日以内(正当な理由がある場合、最大120日以内までの延長申請可)に提出が必要な、詳細な分析報告書。
歳入局の税務調査で狙われやすい3つの取引
タイ歳入局が税務調査で重点的にチェックする日系企業の取引パターンは以下の通りです。
① 親会社への「ロイヤリティ」や「技術指導料」の支払い
商標権やノウハウの使用料(ロイヤリティ)、親会社からの出張者に対する経営・技術指導料の支払いは、「対価に見合った実体のあるサービスがタイ側で提供されているか」「過大な送金になっていないか」が厳しく問われます。
② 親会社・グループ会社との「原材料・製品の売買価格」
タイ現地法人の営業利益率が同業他社と比較して著しく低い場合、「親会社からの仕入価格が高すぎる(=タイに利益が残らない設定になっている)」として、移転価格上の是正(課税所得の引き上げ調整)を求められるケースがあります。価格設定の合理性を説明できるようにしておくことが重要です。
③ グループ間ローン(金利設定)
日本の親会社やグループ会社との間で行われる金銭の貸借(ローン)において、利息(金利)が適正な市場レートに基づいているかがチェックされます。「なぜその金利を利用したのか」「貸付期間はどの程度なのか」といった点を考慮して、金利設定の根拠を整理しておくことが望まれます。
万が一、指摘を受けた場合のペナルティリスク
移転価格について歳入局から問題を指摘された場合、タイ法人にとっては追加的な税負担が発生する可能性があります。
- 課税所得の再計算・追徴課税:独立企業間価格との差額に基づき、タイでの利益が上方修正され、追加の法人税が課されます。
- 加算税(Penalty)と延滞税(Surcharge):申告漏れと認定された場合、不完全申告に対する加算税(本税の100%〜200%)および未納税額に対して月1.5%(年18%)の延滞税が課されます。
- Disclosure Formの不提出・遅延罰金:開示書面を期限内に提出しなかった場合、最高20万バーツの罰金が科されます。
よくある質問(FAQ)
Q1.売上が2億バーツ未満の企業であれば、移転価格の対策は一切不要ですか?
いいえ、対策が不要なわけではありません。2億バーツという基準は、主に申告書(Disclosure Form)の年次提出義務を判定する基準です。歳入局がグループ間取引の妥当性を調べる権限(歳入法典第71条bis)自体は売上規模に関わらず全企業に及ぶため、2億バーツ未満であっても税務調査や還付申請時に取引価格の合理性を説明できるよう、事前契約書や価格決定の根拠資料を整理しておくことが極めて重要です。
Q2.ローカルファイル(TPレポート)は毎年作成しなければなりませんか?
はい、毎年の取引状況や財務データを踏まえて、内容を見直し・更新しておくことが重要です。取引構造やベンチマーク(比較対象企業の財務データ)は変動するため、毎年更新しておくことで、歳入局からの突然の提出要請(60日ルール)に迅速に対応できます。
まとめ:取引価格の「根拠」を事前準備しておくことが最大の防御
タイの移転価格税制は、「指摘を受けてから対策を考える」のでは遅く、多額の追徴課税リスクを抱えることになります。
売上2億バーツを超える現地法人はもちろん、親会社との間でロイヤリティやサービス料のやり取りがある企業様は、事前に取引の合理性を証明する文書(ローカルファイル)を整備しておくことが極めて重要です。
東京コンサルティングファームのサポート
次のようなお悩みをお持ちの企業様は、ぜひ東京コンサルティングファーム(タイ拠点)までお気軽にご相談ください。
- 自社のグループ間取引価格が適正(Arm's Length)か診断したい
- 移転価格開示書面(Disclosure Form)の作成を委託したい
- ローカルファイル(TPレポート)の作成・更新を行いたい
以上、お読みいただきありがとうございました。
【免責事項】
本記事は2026年9月2日時点で確認できるタイ歳入局の公開情報等をもとに作成した一般的な情報提供であり、法的・税務上の助言を構成するものではありません。個別取引への適用については、具体的な事実関係および最新の法令・通知等を確認したうえで判断してください。
株式会社東京コンサルティングファーム タイ拠点
石田