皆さん、こんにちは!東京コンサルティングファーム タイ拠点の髙嶋です。いつもブログをご覧いただきありがとうございます。
タイに進出している日系企業にとって、個人所得税(PIT)と法人所得税(CIT)の最新運用を正確に把握しておくことは非常に重要です。特に2024年1月1日以降、海外源泉所得に対する課税運用が変更されたことで、駐在員の税務管理や法人税の申告実務にも影響が出ています。
今回は、2026年時点の最新情報をもとに、タイの個人所得税・法人所得税の基本から、日系企業が特に注意すべき実務ポイントまでを整理します。
タイの個人所得税・法人所得税の基本
タイの個人所得税は累進税率が採用されており、最高税率は35%です。暦年(1月1日~12月31日)において180日以上タイに滞在した場合、税務上の居住者として取り扱われます。
法人所得税は原則20%です。
個人所得税の累進税率は以下のとおりです。
| 年間課税所得 | 税率 |
|---|---|
| 150,000バーツ以下 | 免税 |
| 150,001〜300,000バーツ | 5% |
| 300,001〜500,000バーツ | 10% |
| 500,001〜750,000バーツ | 15% |
| 750,001〜1,000,000バーツ | 20% |
| 1,000,001〜2,000,000バーツ | 25% |
| 2,000,001〜5,000,000バーツ | 30% |
| 5,000,000バーツ超 | 35% |
2026年時点で特に注意したい個人所得税の運用
海外源泉所得をタイへ送金する場合
従来、タイの個人所得税では、海外源泉所得は「所得が発生した年と同じ暦年にタイへ送金した場合」のみ課税対象とされていました。しかし、2024年1月1日以降に生じた海外源泉所得については、タイへ送金した時点で課税対象となるよう運用が変更されています。
一方、2024年1月1日より前に生じた所得については、従来どおりタイの個人所得税に含めなくてよいとされています。
日系企業の駐在員の場合、日本側で支給される給与や賞与の一部がタイへ送金されるケースがあります。この送金が2024年以降に生じた所得に該当するかどうかを確認し、該当する場合にはタイでの申告対象に含める必要があります。
また、日本とタイの間には租税条約があり、一定の要件を満たす場合には外国税額控除の適用を検討できる可能性があります。ただし、控除を受けるためには外国での納税証明書等の準備が必要です。
2026年時点の法人所得税の運用
タイの法人所得税率は原則20%です。事業年度は通常12か月で、年次申告(P.N.D.50)を決算日から150日以内に提出します。
また、事業年度の中間時点(通常は事業年度開始から6か月)で中間申告(P.N.D.51)を行う必要があります。P.N.D.51では、年間の予想利益に基づいて法人税を見積もり、その半分を前払いする形で納付します。
注意すべきは、P.N.D.51で見積もった税額と実際のP.N.D.50の税額との差が25%以上ある場合、過少申告として追加の負担が発生する可能性がある点です。中間時点での業績見通しを慎重に検討し、必要に応じて見積りを調整することが重要です。
また、会計上の利益と税務上の課税所得は必ずしも一致しません。交際費の損金算入限度、減価償却の方法、引当金の取扱いなど、会計利益から税務課税所得への調整が必要となる項目があります。
文書化・証憑管理で注意すべき点
タイでは、財務諸表や会計帳簿は原則5年間の保存が求められます。また、VAT(付加価値税)関連の書類については5〜7年間の保存が必要とされています。
日系企業が整理しておきたい資料として、以下が挙げられます。
- 月次・年次の財務諸表
- 法人税申告書(P.N.D.50・P.N.D.51)の控え
- 源泉徴収証明書
- VAT申告書・Tax Invoice
- 駐在員の個人所得税申告関連書類
- 外国税額控除に関する納税証明書
- 関連当事者間取引に係る移転価格文書
税務調査が入った際に、これらの書類を速やかに提示できるよう、日頃から整理・保管しておくことが重要です。
税務管理を適切に行うメリット
- 追徴課税リスクの把握:税務上の問題点を早期に発見し、追徴課税やペナルティのリスクを低減できます。
- 駐在員の海外所得整理:駐在員ごとの所得源泉や送金状況を整理することで、個人所得税の申告漏れを防げます。
- 外国税額控除の検討:日本とタイでの二重課税を軽減できる可能性があり、グループ全体の税負担を最適化できます。
- 本社への税務報告の標準化:タイ拠点の税務情報を定期的に本社へ報告する体制を整えることで、グループ全体のガバナンス強化につながります。
デメリット・実務上の負担
- 証憑管理の負担増:保存すべき書類が多岐にわたり、社内の管理工数が増加します。
- 日本・タイ双方の税務確認:駐在員の所得に関して、日本側とタイ側の両方で税務上の取扱いを確認する必要があります。
- 会計利益だけでは法人税計算が不可:会計上の利益をそのまま使うことはできず、税務調整項目を把握して課税所得を算出する必要があります。
- 年度末だけの確認では修正が困難:P.N.D.51の中間申告との整合性も求められるため、年度末にまとめて対応しようとすると修正が間に合わない場合があります。
日系企業が特に注意すべきポイント
日系企業がタイの個人所得税・法人所得税に関して特に注意すべきポイントを以下に整理します。
- 駐在員の滞在日数を暦年ベースで管理し、居住者判定を正確に行う
- 2024年1月1日以降に生じた海外源泉所得のタイへの送金を把握する
- 外国税額控除の適用可能性を検討し、必要書類を準備する
- P.N.D.51(中間申告)とP.N.D.50(年次申告)の差異を25%以内に収める
- 会計利益と税務課税所得の差異調整項目を事前に整理する
- 証憑・申告書類の保存年数を確認し、社内で管理ルールを定める
- タイ拠点の税務情報を定期的に本社へ報告する体制を整備する
メリット・デメリット比較
| 項目 | メリット | デメリット・負担 |
|---|---|---|
| 個人所得税管理 | 駐在員の課税関係を整理しやすい | 滞在日数・海外所得・送金記録の管理が必要 |
| 外国税額控除 | 二重課税の軽減につながる可能性 | 外国の納税証明などの準備が必要 |
| 法人税管理 | 税務リスクを早期発見しやすい | 会計と税務の差異調整が必要 |
| 証憑管理 | 税務調査時に説明しやすい | 保存・整理に社内工数がかかる |
よくある質問(FAQ)
Q. タイに180日以上滞在すると必ず海外所得に課税されますか?
180日以上の滞在により税務上の居住者となりますが、海外所得への課税は所得の発生時期、所得源泉、タイへの送金の有無などを確認して判断します。すべての海外所得が自動的に課税対象となるわけではありません。
Q. 2023年以前に得た海外所得を2026年にタイへ送金した場合は?
2024年1月1日より前に生じた所得については、タイの個人所得税(PIT)に含めなくてよいとされています。送金のタイミングではなく、所得の発生時期が基準となります。
Q. タイの法人所得税率は何%ですか?
原則20%です。ただし、企業の規模や業種によりBOI(投資委員会)の優遇措置が適用される場合など、異なる税率が適用されることがあります。
Q. 税務書類は何年間保存すればよいですか?
書類の種類により異なりますが、財務諸表・会計帳簿は原則5年以上、VAT関連書類は5〜7年の保存が求められます。
まとめ
タイの個人所得税は最高35%の累進税率、法人所得税は原則20%が維持されています。
日系企業が特に注意すべきポイントとして、2024年1月1日以降の海外源泉所得に対する課税運用の変更、P.N.D.50・P.N.D.51の申告実務における見積り精度、証憑管理の徹底が挙げられます。
税務管理を適切に行うことで、追徴課税リスクの低減、外国税額控除の活用、本社への報告体制の標準化といったメリットが得られます。一方で、証憑管理の負担増や日本・タイ双方の税務確認といった実務上の負担も伴います。
タイ拠点の税務管理は、年度末にまとめて対応するのではなく、日常的に情報を整理し、中間申告の段階から計画的に進めることが重要です。
東京コンサルティングファームのサポート
東京コンサルティングファームでは、タイにおける会計税務、個人所得税、法人所得税、移転価格、外国税額控除を含む税務全般について、日系企業の現地法人運営をサポートしています。
「駐在員の海外所得の取扱いを整理したい」「P.N.D.50・P.N.D.51の申告実務を見直したい」「証憑管理体制を構築したい」といったご相談に対応しております。
タイ現地法人の税務管理についてお困りの点がございましたら、お気軽に東京コンサルティングファームまでお問い合わせください。
【免責事項】
本記事は、2026年時点で確認できるタイの法令、行政規則および公表情報等に基づき、一般的な情報提供を目的として作成したものであり、法的・税務上の助言を構成するものではありません。個人所得税・法人所得税の適用、外国税額控除の可否、証憑の保存要件等については、企業・個人ごとの状況によって異なる場合があります。具体的な申告・納税等を行う際には、最新の法令およびタイ歳入局の運用を確認したうえで、専門家へご相談ください。
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