皆さん、こんにちは!東京コンサルティングファーム タイ拠点の髙嶋です。
いつもブログをご覧いただきありがとうございます。
今回は、「タイの移転価格税制」について、2026年時点の運用、Disclosure Form(関連者間取引開示書)の提出、移転価格文書の準備、日系企業が注意すべきポイントをメリット・デメリットとあわせてご紹介します。
タイの移転価格税制とは?
移転価格税制とは、親会社・子会社などの関連者間で行われる取引価格が、独立した第三者間で行われる取引価格と比べて不適切に設定されることにより、所得が国外などへ移転されることを防ぐための税制です。
タイでは、関連会社との商品売買、業務委託、ロイヤルティ、貸付・借入、マネジメントフィーなどについて、独立企業間価格(Arm's Length Price)の考え方に基づいた価格設定が重要になります。
タイ歳入局は、Comparable Uncontrolled Price Method、Resale Price Method、Cost Plus Methodのほか、OECDで採用されるProfit Split MethodやTransactional Net Margin Method(TNMM)なども、状況に応じた価格算定方法として示しています。
2026年時点の最新運用で押さえたいポイント
2026年8月時点で確認できるタイ歳入局の公開情報では、移転価格制度の基本的な枠組みは継続しており、一定規模以上の関連者間取引を行う法人にはDisclosure Formの提出が求められています。
年間売上2億バーツ以上が一つの重要な基準
タイ歳入局の案内では、関連会社を有し、当該会計年度の財務諸表上の総収入が2億バーツ以上の法人・パートナーシップは、関連会社および関連者間取引に関するDisclosure Formの提出対象となります。
Disclosure Formは法人所得税申告(P.N.D.50)とあわせて対応するため、決算時に初めて確認するのではなく、年度中から関連者間取引を把握しておくことが重要です。
移転価格の文書化義務とは?
Disclosure Formの提出と、移転価格の算定根拠を説明する文書の準備は分けて考える必要があります。
歳入局は、グループ構造、事業内容、事業計画、関連者間取引の内容、価格設定方針、各社の機能・資産・リスク、採用した移転価格算定方法とその理由などの資料を準備・保管することを案内しています。
また、税務当局から移転価格に関する資料提出を求められた場合、原則として通知を受けてから60日以内(初回の要求時は180日以内)の提出が求められる制度となっています。(一定の場合には期限延長の仕組みもありますが、調査開始後にゼロから資料を作成することは実務上大きな負担になります。)
準備しておきたい主な資料
- グループ会社の資本関係・組織図
- 各社の事業内容と役割
- 関連者間取引の種類・金額
- 契約書、請求書、送金資料
- 価格設定ポリシー
- 各社が担う機能・使用する資産・負担するリスク
- 移転価格算定方法を選択した理由
- 比較対象企業・取引などの分析資料
移転価格対応を行うメリット
1.税務調査時に価格設定の合理性を説明しやすい
関連者間取引について、契約内容や価格算定根拠を事前に整理しておけば、税務調査を受けた際に取引価格の合理性を説明しやすくなります。
2.追徴課税リスクの把握につながる
日本本社へのマネジメントフィー、ロイヤルティ、商品仕入価格などを定期的に確認することで、タイ法人側の利益が不自然に低くなっていないかを早期に把握できます。
3.グループ内取引を可視化できる
文書化の過程で、誰がどの機能を担い、どの会社がリスクを負担しているかを整理するため、税務対応だけでなくグループ全体の取引・利益構造を見直す機会になります。
4.日本本社との認識を統一しやすい
タイ法人だけで移転価格を管理するのではなく、日本本社の移転価格ポリシーや契約内容と照合することで、グループとして一貫した説明を準備しやすくなります。
移転価格対応のデメリット・実務上の負担
1.文書作成に時間とコストがかかる
移転価格文書の作成には、財務データだけでなく、契約書、取引内容、業務分担、価格決定方法など幅広い情報が必要です。比較対象企業の分析などを外部専門家へ依頼する場合には追加コストも発生します。
2.日本本社との情報共有が必要
タイ法人だけでは、グループ全体の価格決定方針や日本本社側の利益構造を把握できない場合があります。経理・税務部門だけでなく、本社担当者との連携が必要になります。
3.契約と実態が一致していないと説明が難しくなる
契約書上では日本本社がサービスを提供していることになっていても、実際のサービス内容や成果物を説明できなければ、費用の妥当性について税務上の確認を受ける可能性があります。
4.一度作成すれば終わりではない
取引内容、価格設定、事業環境、各社の役割などに重要な変化が生じた場合には、従来の分析が適切かを見直す必要があります。
日系企業が特に注意すべき取引
タイの日系企業では、日本本社や海外グループ会社との取引が多いため、次のような取引について特に確認が必要です。
- 日本本社からの商品・原材料の仕入れ
- タイ法人から日本本社への製品販売
- マネジメントフィー・技術支援料
- ロイヤルティ・ライセンス料
- グループ内貸付・借入と利息
- 出向者・駐在員に関する費用負担
- IT・システム利用料などの共通費配賦
移転価格対応のメリット・デメリット比較
| 項目 | メリット | デメリット・負担 |
|---|---|---|
| 税務調査 | 価格設定の合理性を説明しやすい | 資料作成・更新が必要 |
| リスク管理 | 追徴課税リスクの早期把握につながる | 取引データの継続的な確認が必要 |
| グループ管理 | 取引・利益構造を可視化できる | 日本本社との情報共有が必要 |
| 文書化 | 税務当局への説明資料を事前に準備できる | 専門家費用や社内工数が発生する場合がある |
よくある質問(FAQ)
Q.売上2億バーツ未満なら移転価格対応は不要ですか?
Disclosure Formの提出基準とは別に、関連者間取引の価格そのものが適切であることは重要です。売上規模だけで『移転価格税制を考えなくてよい』と判断せず、関連者間取引の内容を確認することをおすすめします。
Q.Disclosure Formを提出すれば移転価格文書は不要ですか?
いいえ。Disclosure Formは関連会社や取引金額などを報告する書類であり、取引価格の算定根拠を詳細に説明する文書とは役割が異なります。
Q.移転価格文書はいつ準備すればよいですか?
税務当局から提出要請を受けてから準備を始めると時間が限られます。関連者間取引が多い企業は、年度中から取引内容や価格設定根拠を整理しておくことが実務上有効です。
Q.日本で移転価格文書を作成していればタイでもそのまま使えますか?
日本本社の文書は重要な参考資料になりますが、タイ法人の機能・リスク、タイでの取引、財務データなどを踏まえた説明が必要になるため、そのまま使用できるとは限りません。
まとめ
タイの移転価格税制では、関連者間取引を独立企業間価格の考え方に基づいて説明できる体制を整えることが重要です。特に、財務諸表上の総収入が2億バーツ以上で一定の関連会社を有する企業は、Disclosure Formへの対応を確認する必要があります。
移転価格対応には文書作成や社内情報収集などの負担が伴いますが、事前に取引価格を検証・言語化しておくことで、実際の税務調査時に当局からの急な指摘へ迅速に対処できるようになります。
日系企業では、日本本社との商品取引、マネジメントフィー、ロイヤルティ、グループ内融資などが論点になりやすいため、契約書・実際の取引・会計処理・価格設定根拠が一致しているかを定期的に確認することが重要です。
参考資料
- タイ歳入局:Transfer Pricing Disclosure Form(関連者間取引開示書)
https://www.rd.go.th/62039.html - タイ歳入局:法人所得税申告書・Disclosure Form(2025年度フォーム掲載ページ)
https://www.rd.go.th/67858.html - タイ歳入局:Transfer Pricing Documentation
https://www.rd.go.th/english/9460.html - タイ歳入局:Guidelines on the Determination of Market Price
https://www.rd.go.th/english/6008.html
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以上、お読みいただきありがとうございました。
【免責事項】
本記事は2026年8月19日時点で確認できるタイ歳入局の公開情報をもとに作成した一般的な情報です。個別取引への税務上の適用については、具体的な事実関係を確認したうえで判断する必要があります。
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髙嶋