タイで会計・税務業務に携わっていると、毎月必ずといってよいほど発生するのが源泉徴収税(Withholding Tax:WHT)の処理です。サービス料、専門家報酬、賃料、広告費など、支払内容によって源泉徴収税率が異なるうえ、申告・納税、源泉徴収証明書の管理まで必要になるため、取引件数が多い企業ほど経理担当者の負担は大きくなります。
こうした源泉徴収業務を電子化する仕組みがe-Withholding Taxです。さらに2026年6月16日、タイ政府は電子税務制度を促進する税制優遇措置について、2026年1月1日から2027年12月31日まで延長する方針を承認しました。
本記事の結論
・e-Withholding Taxとは、銀行等を介して支払いと源泉徴収税の納付情報を電子的に連携するタイの源泉徴収システムです。
・2026年6月16日にタイ政府が承認した方針では、一定の支払いについて、通常2%・3%・5%の源泉徴収税率を1%とする優遇措置が2027年12月31日まで延長されます。
・また、対象となるe-Tax Invoice & e-Receiptおよびe-Withholding Tax関連費用については、一定の条件のもと200%の税務上の控除が継続される予定です。
e-Withholding Taxとは?
e-Withholding Taxとは、タイ歳入局が推進する電子源泉徴収税制度です。
通常の源泉徴収では、支払者が取引先への支払時に税金を差し引き、その税額を歳入局へ納付するとともに、源泉徴収証明書を発行・管理します。
一方、e-Withholding Taxでは、金融機関を介して支払情報と源泉徴収税情報を電子的に処理します。
2026年の改正ポイント―優遇措置が2027年末まで延長
2026年6月16日、タイ内閣は電子税務制度を促進する税制優遇措置の延長を原則承認しました。
従来の優遇措置は2025年12月31日で期限を迎えていましたが、今回の方針では2026年1月1日から2027年12月31日まで遡及して延長されます。
主なポイント
- ① 一定の源泉徴収税率を1%へ軽減e-Withholding Taxを通じて対象となる支払いを行った場合、通常2%・3%・5%となる源泉徴収税率について、一定の対象取引では1%へ軽減する措置が継続される予定です。
- ② 電子税務システム関連費用について200%控除法人納税者がe-Tax Invoice & e-Receiptやe-Withholding Taxの導入・利用に関連して支出する一定の費用について、200%の税務上の控除を認める措置も継続される予定です。
通常の源泉徴収税率はどのくらい?
| 支払内容 | 一般的な源泉徴収税率 |
| 一定のサービス料 | 3% |
| 専門家報酬 | 3% |
| 賃料 | 5% |
| 広告料 | 2% |
| 運送費(一定の場合) | 1% |
なぜ源泉税率が低くなることがメリットなのか
例えば年間1,000万バーツの対象サービス収入があり、3%が源泉徴収される場合、年間300,000バーツが取引先から差し引かれます。1%であれば100,000バーツです。差額は200,000バーツとなります。
e-Withholding Tax導入で経理業務はどう変わる?
メリットは税率だけではありません。紙の証明書や手作業を削減できる可能性があります。
e-Withholding Taxを導入すればWHT管理は不要になる?
いいえ。電子化したからといって、経理担当者が税務判断をしなくてよくなるわけではありません。
e-Withholding Taxは税務判断そのものを自動化する制度ではなく、正しい税務判断を前提として申告・納付・証憑管理を効率化する仕組みです。
よくあるご質問(FAQ)
Q1.e-Withholding Taxを使えばすべての源泉税率が1%になりますか?
A.いいえ。1%の軽減措置は、通常2%、3%または5%となる一定の対象支払いについて適用されるものです。
Q2.1%の優遇税率はいつまで適用されますか?
A.2026年1月1日から2027年12月31日まで延長されます。
Q3.e-Withholding Tax導入費用にも税制優遇がありますか?
A.一定の条件を満たす法人納税者について、200%控除できる措置が継続される予定です。
実務上のチェックポイント3選
- 自社のWHT取引件数と税率を確認する
- 「税率メリット」だけでなく経理工数も比較する
- 2026年の優遇措置は正式な適用要件を確認する
まとめ
e-Withholding Taxは、タイ企業の源泉徴収業務を電子化する仕組みです。2026年6月16日に承認された税制優遇措置では、一定の対象支払いについて通常2%・3%・5%となる源泉徴収税率を1%とする措置が2027年12月31日まで延長されます。さらに、200%の税務上の控除を認める措置も継続される予定です。
東京コンサルティングファームのサポート
東京コンサルティングファームでは、タイにおける源泉徴収税、VAT、法人税などの税務申告から、月次会計、給与計算、税務アドバイザリーまで、日系企業の現地法人運営を幅広くサポートしています。
片
片山
東京コンサルティングファーム タイ拠点 / M&A事業部 兼 タイ拠点
免責事項
本記事は、2026年8月19日時点で確認できるタイの法令、政府発表および税務情報等に基づき、一般的な情報提供を目的として作成したものです。