皆さん、こんにちは!東京コンサルティングファーム タイ拠点の坂田です。2026年7月、タイ政府はVAT(付加価値税)の税率を2027年9月30日まで7%で維持する方針を承認しました。
タイのVATは、商品やサービスの取引に対して課される間接税で、年間売上高が180万バーツを超える事業者は原則としてVAT登録が必要となり、登録後は毎月の申告を行います。
タイで生活していると、レストランや買い物のレシートなどで「VAT 7%」という表記を目にする機会があります。一方、タイのVATについて調べると、「本来の税率は10%」という説明も出てきます。「現在の税率は7%なのに、なぜ本則税率は10%なのか?」と疑問に感じる方もいるのではないでしょうか。
本記事では、タイのVATの基本的な仕組み、日本の消費税との違い、現在7%となっている背景、さらに将来10%へ戻った場合に企業が確認すべきポイントについて解説します。
タイのVAT(付加価値税)とは?定義と概要
タイのVAT(付加価値税)とは、タイ国内での物品の販売、サービスの提供、および輸入取引に対して課される間接税です。法律上の本則税率は10%ですが、2027年9月30日までは軽減措置により実質7%(国税6.3%+地方税0.7%)が適用されています。
タイでは1992年にVAT制度が導入され、現在も企業活動や日常生活に広く関係する税金となっています。
仕組みそのものは、日本の消費税とよく似ています。商品やサービスを購入する最終消費者がVATを負担し、VAT登録事業者が取引先や消費者からVATを受け取り、税額を計算したうえで歳入局へ申告・納付します。
たとえば、税抜価格1,000バーツの商品をVAT7%で販売する場合、
- 商品価格:1,000バーツ
- VAT:70バーツ
- 合計:1,070バーツ
となります。
企業にとってVATは、単に商品価格へ7%を上乗せするだけの制度ではありません。売上時に受け取ったVATと、仕入れや経費の支払い時に負担したVATをそれぞれ管理し、毎月申告する必要があります。
タイのVATと日本の消費税は何が違う?
タイのVATと日本の消費税は、どちらも最終消費者が負担する間接税という点ではよく似ています。一方、企業の実務では違いがあります。
特にタイ法人を運営する日本企業が注意したいのが、VAT申告が原則として毎月発生することです。タイでは、VAT登録事業者は毎月の売上VATと仕入VATを集計し、VAT申告を行います。そのため、日々の会計処理において、
- 売上時のVAT
- 仕入・経費に含まれるVAT
- Tax Invoice(税務インボイス)
- 0%課税取引
- VAT非課税取引
を正しく区分して管理する必要があります。
日本の消費税の知識があれば概念は把握しやすいですが、タイ現地では実務対応の誤りから歳入局の税務調査で指摘を受けるケースが後を絶ちません。「日本と同じ処理でよい」と判断せず、現地ルールを遵守することが不可欠です。タイ法人では、タイのVAT制度に沿って会計・証憑管理を行う必要があります。
タイのVATはなぜ7%?本則10%との違い
ここが今回の記事で最も押さえておきたいポイントです。現在タイで一般的に適用されているVAT税率は7%ですが、法律上の本則税率は10%です。
タイではアジア通貨危機後の経済状況を踏まえ、1999年にVAT税率を7%へ引き下げました。当初は時限的な措置でしたが、その後も景気や国民生活への影響などを考慮して、7%の適用期間が繰り返し延長されてきました。
そのため、「タイのVAT=法律上も7%」ではなく、「本則税率は10%だが、軽減措置によって現在は7%が適用されている」と理解すると分かりやすいでしょう。
2026年7月には、政府が7%の税率を2027年9月30日まで維持する方針を承認しました。したがって、現時点では7%での実務対応が継続します。
タイでVAT登録が必要な企業の条件とは?
タイ国内で継続的に商品を販売したりサービスを提供したりする事業者のうち、年間売上高が180万バーツを超える事業者は、原則としてVAT登録の対象となります。
また、商品をタイへ輸入する場合は、VAT登録事業者であるかどうかにかかわらず、原則として輸入時にVATが課されます。
VAT登録事業者になると、VATの納税額がゼロとなる月であっても申告を行います。そのため、タイで会社を設立する際には、「会社を設立したからVAT登録する」のではなく、「自社の事業内容・売上規模・取引内容からVAT登録が必要かを判断する」という考え方が必要です。
タイのVATの納付額はどのように計算する?
VAT登録事業者が納付するVATは、基本的に次の考え方で計算します。
納付VAT = 売上VAT(Output VAT)- 仕入VAT(Input VAT)
たとえば、
- 売上VAT:70,000バーツ
- 仕入VAT:40,000バーツ
であれば、70,000-40,000=30,000バーツが納付額となります。
売上VATとは、商品やサービスを販売した際に顧客から受け取るVATです。一方、仕入VATとは、企業が商品・サービスを購入した際に支払ったVATです。
仕入VATが売上VATを上回った場合には、一定の要件のもとで翌月以降へ繰り越して相殺する方法や、還付を請求する方法があります。なお、VAT還付を申請する場合には、歳入局から取引内容やTax Invoiceなどの証憑について確認を受けることがあります。
VATの「7%」「0%」「非課税」は何が違う?
タイのVATでは、すべての取引に一律7%が課されるわけではありません。大きく分けると、
- 7%課税取引
- 0%課税取引
- VAT非課税取引
があります。一般的なタイ国内の商品販売やサービス提供には7%が適用されます。一方、一定の輸出取引などには0%税率が適用されます。
ここで注意したいのが、「0%課税」と「VAT非課税」は同じではないという点です。0%課税はVATの課税対象でありながら税率が0%となる取引です。これに対し、VAT非課税は、そもそもVATを課さない取引です。
タイ歳入局では、一定の農産物、新聞・雑誌・教科書、医療サービス、教育サービスなどをVAT免税の対象として示しています。
両者では仕入VATの取扱いも異なるため、単純に「どちらもVATを払わない取引」として同じ処理をしないよう注意が必要です。
なぜTax Invoiceが重要なのか?
タイのVAT実務では、Tax Invoice(税務インボイス)の管理が非常に大切です。企業が仕入れや経費に含まれるVATを仕入VATとして控除するためには、税法上の要件を満たしたTax Invoiceを保管する必要があります。
Tax Invoiceには、会社名、住所、納税者番号、取引内容、VAT額などの必要事項が記載されます。そのため、取引先からTax Invoiceを受け取った際には、単に書類を保管するだけではなく、
- 自社の正式な会社名になっているか
- 登記住所が正しいか
- 納税者番号に誤りがないか
- VAT額が正しく記載されているか
- 必要事項が記載されているか
などを確認します。会社名や住所などに誤りがある場合、そのまま仕入VAT控除の証憑として使用できないことがあります。
タイ法人の経理では、「VATを支払ったか」だけでなく、「適切なTax Invoiceを取得しているか」まで確認することがポイントです。
VATが将来10%に戻ったら企業には何が起きる?
2027年9月30日まで7%が維持されることになりましたが、これは「タイのVATが今後も永久に7%」という意味ではありません。法律上の本則税率は10%であるため、7%の措置が終了すれば、企業側でも税率変更への対応が必要となります。
影響はVATの計算だけにとどまりません。たとえば企業では、ERP・会計システムの税率設定、POSシステム、Tax Invoice、請求書、見積書、価格表示、契約書、取引先との価格条件などを確認することになります。
特に「VAT込み価格」で販売している企業では、税率変更後も税込価格を維持するのか、それとも税率上昇分を販売価格へ反映するのかによって利益率も変わります。たとえば税抜1,000バーツの商品であれば、
- VAT7%:1,070バーツ
- VAT10%:1,100バーツ
となり、消費者の支払額は30バーツ増えます。一方、税込価格1,070バーツを据え置いたままVATだけ10%へ変更すると、企業側の税抜売上額が下がります。
そのため、将来税率変更が決定された場合には、税務部門だけでなく、経理・営業・IT・法務など複数部門での対応が必要になります。
【FAQ】タイのVATに関するよくある質問
Q1. タイのVATは現在何%ですか?
現在のVAT税率は7%です。法律上の本則税率は10%ですが、軽減措置により7%が適用されており、2027年9月30日まで継続される予定です。
Q2. VAT登録後は毎月申告が必要ですか?
はい。VAT登録事業者は、原則として毎月VAT申告を行います。売上VATが発生していない月であっても申告が必要となるため、毎月の取引とTax Invoiceを継続して管理します。
Q3. Tax Invoiceの会社名や住所が間違っていた場合はどうすればよいですか?
Tax Invoiceの記載内容に誤りがある場合は、そのまま処理せず、発行元へ内容を確認し、必要に応じて正しい書類の発行を依頼します。仕入VAT控除では証憑の記載内容も確認されるため、受領時点で会社名、住所、納税者番号、VAT額などを確認しておくとスムーズです。
まとめ
タイのVATは、商品やサービスの消費に対して課される間接税で、日本の消費税と似た仕組みを持っています。一方、タイではVATを毎月申告することや、仕入VAT控除のためにTax Invoiceを適切に管理することなど、日本とは異なる実務があります。
そして、現在適用されている7%は法律上の本則税率ではありません。本則税率は10%であり、7%は長年にわたり延長されてきた措置です。2026年7月には7%の適用を2027年9月30日まで継続する方針が承認されました。
タイで事業を行う企業にとっては、現在の7%だけを見るのではなく、本則税率が10%であることを理解したうえで、今後の政府発表や歳入局の運用を確認しておくことが大切です。
税率変更が正式に決定した場合には、VAT申告だけでなく、価格設定、契約、Tax Invoice、会計・ERP・POSシステムなど、実務全体を見直すことになります。
以上、お読みいただきありがとうございました!
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本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務上の取扱いについては、個別の取引内容や事業状況に応じてご確認ください。
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